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ケルティック能「鷹姫」 アイルランド音楽と能の融合

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NIKKEI STYLE

日本とアイルランドの文化を融合させる画期的なプロジェクト「ケルティック能 鷹姫」が2月16日、東京・渋谷のオーチャードホールで開かれた。原作はアイルランドの詩人、イェイツ。鷹姫役は人間国宝の観世流シテ方、梅若玄祥。音楽は囃子方(はやしかた)や地謡に加え、アイルランドのコーラスグループ「アヌーナ」が務めた。能の幽玄とアイルランドの精霊の世界が溶け合い、幻想的な舞台を繰り広げた。

ノーベル文学賞を受賞したイェイツ(1865~1939年)はケルト文化の復興に力を入れ、アイルランドの神話や伝説を調べていた。妖精の物語や神秘主義に傾倒する中で、アイルランド・ケルト神話と能との間に共通する幻想性を見いだす。大陸の西と東の果て、途方もない距離を隔てた2国の間に通底する精神があったと知って心を躍らせたイェイツは1915年、詩劇「鷹の井戸」を書き上げた。

「鷹の井戸」がロンドンで初演された1916年に「鷹の女」役を務めたのは、後に東京オリンピックの開、閉会式の総合演出を担うことになる舞踊家で振付師の伊藤道郎だった。やがて「鷹の井戸」は日本に渡り、横道萬里雄によって「鷹姫」に改作され、現代能の演目となったのである。

「鷹姫」の登場人物は3人。その泉から湧き出る水を飲めば永遠の命を得るといわれる枯れた泉を守る「鷹姫」は梅若玄祥(シテ方)、何十年も水が湧くのを待ち続ける「老人」は観世喜正(シテ方)、遠い王国から水を求めてやってきた王子「空賦麟(クーフリン)」は山本則重(狂言方)が務める。

音楽は日本とアイルランドの混成で、日本側は藤田六郎兵衛(笛)、大倉源次郎(小鼓)、亀井広忠(大鼓)、観世元伯(太鼓)の4人の囃子方と山崎正道をはじめ10人の地謡で構成される。地謡の面々は泉の周りに転がる「岩」の役も兼ねていて、マスクをかぶり、地鳴りのような声を発する。

アイルランド側は「中世アイルランドの音楽を現代によみがえらせる」のコンセプトで活動する男女混声のアカペラ合唱グループ、アヌーナだ。今回は男性7人、女性6人で来日した。1990年代半ば、舞台「リバーダンス」で音楽面における斬新さを担ったことでも知られる。

会場が暗転し、ロウソクを手にしたアヌーナの女性歌手たちが客席の通路にスッと現れた。そのまま歌いながらステージに上っていく。ステージには能舞台の大きさのスペースが確保され、左右に橋掛かりが設けられている。能舞台にお決まりの松に代わり、いけばな草月流による枯れ木のオブジェが点々と置かれ、絶海の孤島にある木立に囲まれた泉という場面を巧みに表現している。アヌーナの面々はシテ方や囃子方、地謡をぐるりと取り囲むように立って歌うのだが、場面によって立ち位置を変えながら、天から舞い降りてくるような幻想的なコーラスを響かせていた。

日本とアイルランド。両文化の協調の柱となっていたのは、長い年月の積み重ねを持つ能の流儀だった。独特の間(ま)をもつ囃子方やスケールの大きな地謡、通常の時間軸を悠々と超越するような舞に、アヌーナの面々は手のこんだ多様な歌唱を加えていく。そのプラスアルファが能の魅力を鮮やかに浮き上がらせていた。融合の深さは驚くべきもので、事前にどれほど綿密なやり取りや交わされ、リハーサルが繰り返されたのか、想像を絶するものがある。双方の純度の高い重なりは、人間の業と自然が織り成す神秘的で抽象的な「鷹姫」の物語に、さらなる大きな広がりを与えていた。

イェイツの言葉、アイルランドの古い言葉、日本語を組み合わせ、現代音楽も参照しながら、神秘的なコーラスを作曲したアヌーナのリーダー、マイケル・マクグリンの手腕も見逃せない。彼は大学時代は音楽とともにアイルランド文学を研究し、ケルト神話やイェイツの文学にも詳しい。さらに大学院では中世の英語を研究していたという。今回の企画にうってつけの才能であった。

これまで西洋と東洋の文化をつなぐ試みは山のようにあった。しかし、これほど自然に双方の美点を生かし合った例はさほど多くあるまい。遠い過去と現在、アイルランドと日本。「鷹姫」は時間や距離の壁をやすやすと溶かして見せた。

グローバルな舞台芸術の新たな扉が開かれた。そんな感慨も抱かせるこの演目は、海外でも大きな評判を呼ぶのではないか。国内外における再演を期待したい。

(音楽評論家 佐藤 英輔)

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