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生田斗真の「女優魂」に学ぶ 女性らしさの本質とは

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NIKKEI STYLE

3月8日は国連が定めた『国際女性デー』です。日本ではまだなじみの薄い記念日ですが、今年は東京の渋谷ヒカリエにて、国際女性デーを祝う『HAPPY WOMAN FESTA 2017』が開催されるなど、徐々に広がりを見せ始めています。

そんな中、女性とダイバーシティー(多様性)について考えさせられる映画『彼らが本気で編むときは、』(現在公開中)を見てきました。

この映画は、『かもめ食堂』『めがね』などで女性からの支持が厚い荻上直子監督の5年ぶりの最新作です。生田斗真さん演じるトランスジェンダーの女性・リンコが主人公の物語。リンコと、彼女の心の美しさにひかれ全てを受け入れた恋人・マキオ、そして愛を知らない孤独な少女・トモの3人が一緒に暮らすことになり、それぞれの幸せを見つけるまでの60日間を描いています。

第67回ベルリン国際映画祭でパノラマ部門とジェネレーション部門に出品され、LGBT(性的少数者)映画を対象としたテディ賞の審査員特別賞を受賞しました。

生田さんといえば、若手俳優でも屈指の実力派です。2013年の『脳男』で人間としての感情を持たない殺人マシン役、2014年の『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』ではコミカルな刑事役など、多彩な役柄を演じられるのが魅力の役者さんです。

この作品でも途中から生田さんが本物の女優さんに見え始め、彼が演じていることを忘れてしまうくらいに魅せられてしまいました。

今回の役作りについて、生田さんは情報番組『王様のブランチ』のインタビューの中で「実際にトランスジェンダーの女性と会い、会話し、様々な話を聞いて役作りに励んだ」と語っています。

脚本をはじめ、一から今作を作り上げた荻上直子監督は、映画専門ウェブメディア『FILMERS』のインタビューの中で「もともと(生田さんは)本当に男気があってとても男っぽい方なので、歩き方が完全に男子なんですよね。そこはかなり練習してもらいました。彼も気を使ってくれて、休み時間にでもスカートを履いてくれていました。所作指導の先生が来て(指導してくださると)、バッグの持ち方も違うわけです。肩にかけるときの手の置き方とかも(笑)。すごく努力してくれましたね、彼は」と生田さんの役作りの姿勢について評価しています。

そんな生田さんですが、所属のジャニーズ事務所では異色(異端?)の存在です。通常、ジャニーズでは何人かでアイドルグループを結成し、CDデビューを果たします。個人で俳優として活動している人も多いですが、あくまでグループの活動と並行して行うのが王道です。

ところが生田さんにはそのキャリアがありません。事務所内では少し不遇な存在だったといってもいいでしょう。実際、あるインタビューでは芸能活動を続けるか迷ったことを明らかにしています。外部出演した舞台などで、ようやく俳優としての自分を見つけ、経験を積むことで演技力を磨いてきました。映画などにおける求道的ともいえる役作りはこうしたキャリアも影響していると思います。

アイドルグループだけがジャニーズではない。彼の活躍は後に続く人にとって希望です。自分の個性を磨いて、ポジションをつくれば、道は開ける……。誰にでもできることではありませんが、仕事などでつい自分の居場所に悩みがちな私たちにとっても、参考になるキャリアといっていいのかもしれません。まず、今の自分にできることを極めてみるのです。

生田さんの美の秘密は

そして私たち女性がもう一つ参考にすべきは生田さん演じるリンコの美しさです。膝丈のスカートをはいているシーンが多かったのですが、その脚の美しいこと……本当に見ほれてしまいました。

様々な情報番組で生田さんは、メークさんの指示でエステに通ったというエピソードを明かしています。今回、その指示を出したご本人に、直接その秘密をうかがうことができました。

ヘアメーク・アーティストの橋本申二さん(atelier ism)は「エステは、生田さんの顔の眉間の深いシワを薄くし、柔らかい肌にすること、また、身体的にはデコルテを美しく見せることと脚を細く見せることが目的でした。 エステでキープできるのは約5日間なので、撮影中は、ほぼそのペースで通っていただきました。生田さんの肌のハリとファンデーションのノリは明らかに違ってきましたね」と語ります。

通常は撮影が進むと 顔が疲れてくるそうですが、今回は逆にきれいになってきて、手応えを感じたとか。 また、爪にネイルを塗り続けると、生田さんの台本をめくる手が自然と女性らしくなってきたそうです。

「生田さんには、役のときだけ女性になるのでなく、リラックスする時間も女性と同じように、女性の意識を忘れずに過ごしてもらいたいとお願いしました。生田さんと荻上監督と一緒に作り上げていく作業は、どれが正しいのかではなく、どれだけ美しく自然であるか?を一番に据えて取り組んできました」(橋本さん)

メークアップ化粧品もかなり厳選し、カメラと照明でテストを繰り返し、自然に見えるものを選択したそうです。

橋本さんは「男性の肌を柔らかくすることなどについて、エステの専門雑誌の編集長さんやビューティーサイエンティストさんたちにもリサーチし、ヘアメークだけではどうすることもできない部分については、多くの人たちの力を借りながら作り上げていったのです。その多くの方々の思いやスキルや努力の結果を、何より生田さん自身が体現してくれました」と教えてくれました。

いかがでしょうか。生田さんと同じ努力をするのは難しいかもしれません。でも、芯の強さと柔和な女性らしさを併せ持つリンコさんの姿に見習うべき点がいくつもあったように感じました。ぜひ、映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

鈴木ともみ(すずき・ともみ)
 経済キャスター、ファイナンシャル・プランナー。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。TV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。主な著書に『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。

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