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震災復興6年目 三陸縦断 鉄道とバス乗り継ぎの旅

フリーライター 二村高史

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NIKKEI STYLE

今年も3月11日がやってくる。東日本大震災の復興のニュースも徐々に減り、私たちの関心も次第に薄れつつあるが、津波で寸断された鉄道路線の復旧をはじめ、確実に復興は進んでいるという。国内外の鉄道やバスなど乗り物の取材経験が豊富なフリーライターの二村高史氏が、三陸を旅して復興の最新状況を見てきた。

◇   ◇   ◇

2011年の東日本大震災以来、三陸に足を向ける機会が増えてきた。仕事で石巻を訪れたのが震災の翌年。その後も、折に触れてあちこちを訪ね、被害の大きさや復興の様子を、多少なりとも自分の目で見てきたつもりだ。そして今年の1月下旬、仙台から青森県の八戸まで、公共交通機関を使って三陸海岸を南から北まで縦断してみようと思い立った。

仙台から八戸まで、新幹線を使えば1時間10分ほど。それに対して、三陸海岸に沿って鉄道と路線バスを乗り継ぎ、3泊4日で縦断しようというのが今回のルートである。利用したのは、仙石東北ライン(JR東北本線、JR仙石線)、JR石巻線、JR気仙沼線、JR気仙沼線BRT(バス高速輸送システム)、JR大船渡線BRT、三陸鉄道南リアス線、岩手県交通バス、岩手県北バス、三陸鉄道北リアス線、JR八戸線と、全部で10路線に達した。

復興の一助となった新路線「仙石東北ライン」

旅のスタートは、通勤客でごったがえす仙台駅の2番線ホーム。8時19分発の仙石東北ライン石巻行きに乗車した。仙石東北ラインは、15年5月に運行を開始した新しい路線である。仙台と石巻を短時間で結ぶため、東北本線の松島駅付近から線路を分岐させ、近くを走る仙石線に乗り入れるようにしたものだ。

かなり前からこの新路線の計画はあったそうだが、石巻とその周辺の復興の一助となるよう、津波で不通だった仙石線の一部区間が復旧するのに合わせて運行を開始した。交流電化の東北本線と直流電化の仙石線を直通するために、新型のハイブリッドディーゼルカーが使用されている。

「あれを使って仙台方面からいらっしゃる方は多いですよ。おかげで、お客さんも増えました」

去年、石巻のとある寿司(すし)店の店主は教えてくれた。仙台で新幹線に乗り換えれば、海の幸を満喫して東京へもゆったりと帰れる。19時58分石巻発に乗れば、東京着は23時4分である。

今回は石巻で駅を出ずに、石巻線に乗り換えて女川へ。石巻線は1、2時間に1本というローカル線で、女川の少し手前では、湾に沿って走る車窓が美しい。もっとも、海に近いということは津波のリスクが高いことを意味するわけで、最後の復旧区間である浦宿~女川の運転が再開されたのは、15年3月になってのことである。

再開直後に訪れたときは、駅の付近はどこも工事中で、次の列車まで時間をつぶすのに苦労したが、その年の12月には、駅前商店街「シーパルピア」が営業を開始。今回は、周辺を散策した後に、コーヒーを飲んで寒さをしのぐことができた。もっとも、海沿いや周辺の地区はまだまだ工事が続いている。

鉄道路線敷を走る「BRT」というバス路線

女川からは、11時10分発の石巻線小牛田行きに乗って前谷地で下車。47分の待ち合わせで気仙沼線に乗り換えて、現在の終点となっている柳津へ向かう。気仙沼線は、海岸沿いを走る線路が津波で壊滅的な被害を受けたために、柳津~気仙沼を運休している。その代わりに運行しているのが、BRTだ。

BRTは、バスを使って定時運行や大量輸送を目的とする交通機関のことで、被災地でいち早く公共交通機関を復旧させるために導入された。線路敷をアスファルトで舗装して専用道にして、その上にバスを走らせるのである。

面白いのは、鉄道の踏切では遮断機が道路側に付いているのだが、BRTでは逆になっている点だ。踏切の前ではBRTがいったん停止して、遮断機が自動的に上がると発車する。もっとも、専用道化の工事はまだまだ進行中なので、一般道を走る区間も多い。柳津から気仙沼行きのBRTに乗り、津波で大きな被害を受けた南三陸町の志津川で途中下車した。ここは、町中が工事中という状態である。

ところで、下車した町ではなにがしかの金を使うというのが、私のささやかな流儀である。志津川では、物産館で地元製の「カキの醤油麹(しょうゆこうじ)煮」と「タコのアヒージョ」の缶詰を購入した。

「バスと鉄道で八戸まで行くんですか!? ご苦労さまです」

応対してくれた女性は笑顔でそう言って、南三陸町の観光写真を印刷したきれいなクリアファイルを付けてくれた。物産館の近くには、昨年暮れに閉鎖された「南三陸さんさん商店街」の仮設店舗が並んでいた。そして3月3日、かさ上げが終わった中心部でオープンだ。

「BRTの停留所もそっちに移転するんですよ。ここはちょっと不便になっちゃうけど」

もっとも、ここには大きな駐車場もある。車で来る人が圧倒的だから、そう大きな問題はないに違いない。少しずつだが、復興は着実に進んでいるという印象を受けた。

この日の宿泊地である気仙沼に着いたのは17時すぎ。すでに冬の日はとっぷりと暮れていた。気仙沼線BRTは専用道からそのまま気仙沼駅に乗り入れている。バスが鉄道の駅に発着するのは、ちょっと不思議な光景だ。とはいえ、気仙沼線BRTと大船渡線BRT、そして一関から来る鉄道の大船渡線が、隣接するホームですぐに乗り換えられるのは便利である。

かさ上げの大規模工事進む陸前高田では昔の思い出が更地に

2日目は、9時50分発の大船渡線BRTに乗って岩手県の陸前高田に向かった。大船渡線も気仙沼線と同じく、海岸を走る部分が津波でやられてしまったためにBRTが運行されている。車窓は、実にのどかで美しいのだが、海が見える場所に出るたびに、津波の爪痕らしき更地やかさ上げ工事の現場が目に入ってくる。

30分ほど走り、行く手に大規模な工事現場が見えてくると、まもなく陸前高田に到着である。鉄道時代の陸前高田駅は、海から500メートルほどの地点にあったが、BRTはそこから約1.5キロメートル北側の丘の上に止まる。

私は、この陸前高田に1993年にたまたま訪れ、味わいのある街並みが気に入って、20枚程度ではあるがモノクロフィルムで写真を撮っている。それも何かの縁かと思い、2013年にここを訪れて、以前と同じアングルでの定点比較写真を撮影。家々がぎっしりと並んでいた場所が、ほとんど更地になってしまっていたのは悲しかった。

それから3年半。今回も定点写真を撮ろうと、工事車両が行き交うほこりっぽい旧市街地を歩き回った。最大12メートルになるという、かさ上げ工事はかなり進んでおり、一部では新しい建物が姿を現していた。

ただ、ひとつ気になることがあった。市の中心部には市民に親しまれていた市神宮(いちじんぐう)の祠(ほこら)があり、その礎石は津波にも残されていたのだが、それはどうなったのか。かさ上げ工事による盛り土で埋められてしまったのか、バス停近くにある観光案内所で尋ねた。

「石は保管してあります。町が復興したら、しかるべき場所に置く予定ではありますが、まだどうなるかは決定していません」

中年の職員の方が、昔の写真集を出して丁寧に教えてくれた。

南リアス線で乗った「奇跡の車両」

陸前高田から再び大船渡線BRTで向かったのは終点の盛(さかり)。大船渡市の中心部に位置する駅だ。大船渡は「さんまラーメン」で町おこしをしているようで、「さんまラーメンMAP」なる案内まで用意されている。前回は、盛駅近くで、さんまのすり身入りの、意外にさっぱりしたラーメンを食べた。

盛駅には大船渡線BRTと三陸鉄道南リアス線が乗り入れており、気仙沼駅と同じく同一のホームで乗り換えられる。

南リアス線の列車を待っていると、到着したのは3年前にできたばかりのレトロ型車両36R-3。その車体には、震災直後にクウェートからの支援によって3両(36-700形)の車両が新造されたことに対する感謝の言葉が、アラビア語・英語・日本語で記されていた。

座席や内装もセンスがよさそうで、「これはラッキー!」と思っていたが、なんとそのまま入庫。代わりに車庫から出てきたのが、イオンの広告ラッピングをほどこした旧型の36-100形だった。

ちょっとがっかりしたが、よく見ると105号車ではないか。実は、この車両こそが、大津波の際にトンネル内で停車して難を逃れた「奇跡の車両」なのだ。震災当時、北リアス線内を走っていたこの車両は、トンネル内で警報を受信して緊急停止した。もし停止していなければ、トンネルの先にあった橋が落ちていたために大惨事となるところだったのである。そのことを思い出し、がっかりした自分を少しだけ反省しつつ、この15時45分発の釜石行きに乗車したのであった。

JR山田線の復旧工事を横目に見ながら路線バスに代替乗車

釜石の港は市街地の南東側にある。町を東西に走る通りの南側にあった歓楽街は、津波でその多くが流されてしまい、今でも更地があちこちに残されている。ホテルでフロントの男性に当時の状況を聞くと、正面玄関の外に出て教えてくれた。

「あそこに黒い線が見えますか。あそこまで水が来たんですよ」

彼が指さす地上2、3メートルあたりの外壁を見ると、確かに黒い線状の跡がくっきりと残っていた。

さて、釜石から宮古に向かうJR山田線は運休中であるが、代行バスが設定されていない。そこで、並行する路線バスを利用するのだが、途中で1回の乗り換えが必要で、所要時間は2時間ほど。釜石駅前を9時31分に発車する岩手県交通バス「道の駅やまだ」行きに、釜石市の中心部で乗車した。

15分ほど走ると、津波で壊滅的な被害を受けた釜石市北東部の鵜住居(うのすまい)や大槌町を通過する。現在ではかなり工事が進んでいるが、前回来たときは道路の両側が見渡す限り更地のままで、まるで荒野の一本道を走るようだったことを思い出す。

終点の「道の駅やまだ」で、岩手県交通から岩手県北バスの宮古駅前行きに乗り換え。途中では、やはり津波の爪痕も痛々しい山田町の中心部を通過する。漁港付近には巨大な防潮壁が建てられており、海が見えずにやや息苦しい。高い壁で津波から守るのがよいのか、海が見えるのがよいのかという議論があるが、確かに難しい問題だと実感する。

ところで、釜石~宮古のJR山田線は、復旧したのちに三陸鉄道に移管することが決定している。山田駅付近のように、まだ線路や駅の跡形もない場所もあるが、バスの車窓からも少しずつ工事が進められている姿がうかがえた。18年度の完成を目指すとのことで、その暁には、現在JR山田線をはさんで南北に分断されている三陸鉄道の路線が一体化することになるので楽しみだ。

あの「あまちゃん」に登場した北リアス線に乗って久慈へ

三陸鉄道北リアス線宮古駅の駅舎内は、まるでおもちゃ箱のように、土産物やら記念乗車券やらパンやらが置かれており、少しでも赤字を減らそうという意気込みが伝わってくる。窓口に女性が座っているのだが、切符は基本的に自動販売機で買うことになっているので、もっぱら窓口は物品の販売に使われているのが面白い。

宮古駅からは、三陸鉄道北リアス線の13時15分発久慈行きに乗車。この路線が、NHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」ですっかり有名になったことをご存じの方も多いだろう。

宮古と久慈の中間にある鳥越駅は、津波で駅も橋も流されるという大きな被害を受けたために、前回はこの駅をはさんでバス代行だったのだが、14年4月にめでたく運行を再開している。

終点の久慈駅には、強風のために30分ほど遅れて15時20分ごろに到着。跨線橋(こせんきょう)を渡ると、「WELCOME 不思議の国の北リアス」というキャッチコピーが迎えてくれた。

朝5時台2本、6時台1本という早起きダイヤにびっくり

久慈もまた、津波で大きな被害を受けていた。物産館やイベントホールを兼ねている「道の駅くじ やませ土風館」を訪ねてみると、2階のロビーには当時の生々しい様子を示す写真が多数飾られている。改めて、すさまじく広い地域に被害がもたらされたのだと実感した。

もっとも、16年8月末に起きた台風10号による水害も大変だったようで、市の中心部が甚大な被害を受けていたことを今さらながら教えられた。

最終日は、JR八戸線で久慈から八戸まで乗るだけなのだが、9本ある直通列車のうち、2本は5時台、1本が6時台に発車するという驚くべき早起きダイヤ。9時47分発の列車に乗るほかなく、それを逃すと次は昼すぎである。

海に面した区間で徐行運転があったために15分遅れて、ほぼ正午に八戸駅に到着。10もの路線を乗り継ぎ、途中16の駅と停留場で乗り換えや下車をした三陸縦断の旅もこれにて終了した。

今回の4日間の旅で改めて感じたのは、東日本大震災による大津波が、いかに大規模な災害だったかということ。列車やバスを乗り換えても乗り換えても、車窓から海が見える場所では、ことごとく大きな爪痕が残されているのである。このスケール感は、実際に現地で見るまではピンとこなかった。

もっとも、以前は車窓から見た被害の大きさにただ愕然(がくぜん)とするばかりだったが、今回の旅では復興に立ち向かう人間のたくましさを感じて、むしろこちらが元気づけられた――と、もっぱら車窓から見ただけだが、そんな偉そうな感想を抱いたのであった。

二村高史(ふたむら・たかし)
 フリーライター、日伊協会常務理事。1956年東京生まれ。東京大学文学部卒。小学生時代から都電、国鉄、私鉄の乗り歩きに目覚める。大学卒業後はシベリア鉄道経由でヨーロッパに行きイタリア語習得に励む。著書に「鉄道黄金時代 1970's ディスカバージャパンメモリーズ」(日経BP社)など。

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