トラベル

クローズアップ

震災復興6年目 三陸縦断 鉄道とバス乗り継ぎの旅 フリーライター 二村高史

2017/3/6

■JR山田線の復旧工事を横目に見ながら路線バスに代替乗車

 釜石の港は市街地の南東側にある。町を東西に走る通りの南側にあった歓楽街は、津波でその多くが流されてしまい、今でも更地があちこちに残されている。ホテルでフロントの男性に当時の状況を聞くと、正面玄関の外に出て教えてくれた。

すでに6年間も列車が来ないJR山田線の津軽石駅(宮古市)。それでも、付近では復旧に向けて工事が進んでいた

 「あそこに黒い線が見えますか。あそこまで水が来たんですよ」

 彼が指さす地上2、3メートルあたりの外壁を見ると、確かに黒い線状の跡がくっきりと残っていた。

 さて、釜石から宮古に向かうJR山田線は運休中であるが、代行バスが設定されていない。そこで、並行する路線バスを利用するのだが、途中で1回の乗り換えが必要で、所要時間は2時間ほど。釜石駅前を9時31分に発車する岩手県交通バス「道の駅やまだ」行きに、釜石市の中心部で乗車した。

 15分ほど走ると、津波で壊滅的な被害を受けた釜石市北東部の鵜住居(うのすまい)や大槌町を通過する。現在ではかなり工事が進んでいるが、前回来たときは道路の両側が見渡す限り更地のままで、まるで荒野の一本道を走るようだったことを思い出す。

 終点の「道の駅やまだ」で、岩手県交通から岩手県北バスの宮古駅前行きに乗り換え。途中では、やはり津波の爪痕も痛々しい山田町の中心部を通過する。漁港付近には巨大な防潮壁が建てられており、海が見えずにやや息苦しい。高い壁で津波から守るのがよいのか、海が見えるのがよいのかという議論があるが、確かに難しい問題だと実感する。

 ところで、釜石~宮古のJR山田線は、復旧したのちに三陸鉄道に移管することが決定している。山田駅付近のように、まだ線路や駅の跡形もない場所もあるが、バスの車窓からも少しずつ工事が進められている姿がうかがえた。18年度の完成を目指すとのことで、その暁には、現在JR山田線をはさんで南北に分断されている三陸鉄道の路線が一体化することになるので楽しみだ。

■あの「あまちゃん」に登場した北リアス線に乗って久慈へ

 三陸鉄道北リアス線宮古駅の駅舎内は、まるでおもちゃ箱のように、土産物やら記念乗車券やらパンやらが置かれており、少しでも赤字を減らそうという意気込みが伝わってくる。窓口に女性が座っているのだが、切符は基本的に自動販売機で買うことになっているので、もっぱら窓口は物品の販売に使われているのが面白い。

三陸鉄道北リアス線の車内。右手に海が見える

 宮古駅からは、三陸鉄道北リアス線の13時15分発久慈行きに乗車。この路線が、NHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」ですっかり有名になったことをご存じの方も多いだろう。

 宮古と久慈の中間にある鳥越駅は、津波で駅も橋も流されるという大きな被害を受けたために、前回はこの駅をはさんでバス代行だったのだが、14年4月にめでたく運行を再開している。

 終点の久慈駅には、強風のために30分ほど遅れて15時20分ごろに到着。跨線橋(こせんきょう)を渡ると、「WELCOME 不思議の国の北リアス」というキャッチコピーが迎えてくれた。

■朝5時台2本、6時台1本という早起きダイヤにびっくり

 久慈もまた、津波で大きな被害を受けていた。物産館やイベントホールを兼ねている「道の駅くじ やませ土風館」を訪ねてみると、2階のロビーには当時の生々しい様子を示す写真が多数飾られている。改めて、すさまじく広い地域に被害がもたらされたのだと実感した。

 もっとも、16年8月末に起きた台風10号による水害も大変だったようで、市の中心部が甚大な被害を受けていたことを今さらながら教えられた。

 最終日は、JR八戸線で久慈から八戸まで乗るだけなのだが、9本ある直通列車のうち、2本は5時台、1本が6時台に発車するという驚くべき早起きダイヤ。9時47分発の列車に乗るほかなく、それを逃すと次は昼すぎである。

朝の八戸駅に勢ぞろいした三陸鉄道北リアス線の36形(右端)とJRのキハ40系

 海に面した区間で徐行運転があったために15分遅れて、ほぼ正午に八戸駅に到着。10もの路線を乗り継ぎ、途中16の駅と停留場で乗り換えや下車をした三陸縦断の旅もこれにて終了した。

 今回の4日間の旅で改めて感じたのは、東日本大震災による大津波が、いかに大規模な災害だったかということ。列車やバスを乗り換えても乗り換えても、車窓から海が見える場所では、ことごとく大きな爪痕が残されているのである。このスケール感は、実際に現地で見るまではピンとこなかった。

 もっとも、以前は車窓から見た被害の大きさにただ愕然(がくぜん)とするばかりだったが、今回の旅では復興に立ち向かう人間のたくましさを感じて、むしろこちらが元気づけられた――と、もっぱら車窓から見ただけだが、そんな偉そうな感想を抱いたのであった。

二村高史(ふたむら・たかし)
 フリーライター、日伊協会常務理事。1956年東京生まれ。東京大学文学部卒。小学生時代から都電、国鉄、私鉄の乗り歩きに目覚める。大学卒業後はシベリア鉄道経由でヨーロッパに行きイタリア語習得に励む。著書に「鉄道黄金時代 1970's ディスカバージャパンメモリーズ」(日経BP社)など。

トラベル新着記事

ALL CHANNEL