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交響曲「新世界より」 2人ピアノで弾く

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クラシック音楽の中でも人気が高いドボルザークの「交響曲第9番《新世界より》」。オーケストラで演奏されるこの有名曲をピアノで弾くとどうなるか。ピアノデュオ「中井恒仁&武田美和子」の両氏がピアノ連弾による交響曲の楽しみ方を伝える。

クラシック音楽を聴く人で「新世界より」を知らない人はいない。正式名称は「交響曲第9番ホ短調作品95《新世界より》」。作曲したのはチェコ国民楽派を代表するアントニン・ドボルザーク(1841~1904年)。一般に最も人気の高い交響曲といえる。第2楽章の「家路」のメロディーをはじめ、全4楽章の随所に現れるキャッチーで美しい旋律は誰もが一度は耳にしたことがあるはずだ。

ドボルザーク自身の編曲によるピアノ連弾版

「新世界より」の万人受けする人気に対抗しうる交響曲をほかに挙げるとしたら、ベートーベンの「第9番《合唱付き》」、シューベルトの「第7(8)番《未完成》」、チャイコフスキーの「第6番《悲愴》」くらいだろう。これほど有名なオーケストラの作品をピアノで弾く2人がいる。ドボルザーク自身の編曲によるピアノ連弾版「新世界より」の演奏に挑んでいる中井恒仁さんと武田美和子さんだ。

ピアノ連弾とは、1台のピアノを2人で並んで演奏すること。2人がそれぞれのピアノを弾く2台ピアノ演奏とはまた異なる。連弾ではピアノに向かって右側で弾くのがプリモ(第1奏者)で、高音域を担当する。左側はセコンド(第2奏者)と呼ばれ、低音域を弾くとともに、持続音を出すための足のペダル操作を担当するのが通例だ。中井さんと武田さんは、ソロでも活動しているが、ピアノデュオになると「中井恒仁&武田美和子」と名乗って公演やCD録音をしている。

2人は夫婦。中井さんは桐朋学園大学准教授、武田さんは上野学園大学講師としてピアノ教師も務める。2人とも東京芸術大学とドイツのミュンヘン音楽大学大学院を修了後、オーストリアのザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学で研さんを積んだ。「デュオを始めたのは夫婦になる前」と中井さんは言う。1999年にデュオを結成。国内外で公演を重ねるとともに、「ブラームス:ハンガリー舞曲集&ワルツ集」「ラフマニノフ 組曲」といったピアノ連弾や2台ピアノのための作品のCDも出してきた。2016年8月に出たピアノ連弾による最新CDが「ドヴォルザーク:新世界より&スラヴ舞曲集」(企画制作:タカギクラヴィア、発売元:T&Kエンタテインメント、販売元:コロムビア・マーケティング)だ。

模範となる古典形式の交響曲を米国で作曲

ドボルザークはニューヨークのナショナル音楽院に院長として招かれ、1892~95年の約2年半を米国で過ごした。「新世界より」はその間の93年に作曲された。新世界アメリカの民族音楽の要素と、故郷ボヘミア(現チェコ)の音楽を融合させ、交響曲に仕上げた。そこにはボヘミアへの望郷の念が込められている。「スラブ舞曲集」を作曲したドボルザークは、民族音楽への関心が強く、米国では黒人霊歌や先住民族の音楽に出合った。ただ、「新世界より」はアメリカ音楽の雰囲気が漂うものの、西洋音楽の伝統的なソナタ形式や3部形式で構成された4楽章による、典型的な交響曲だ。その古典形式の中にドボルザーク独自のボヘミア風の美しい旋律を惜しみなく注ぎ込んだ。

「『新世界より』は世界中で人気のある曲。ピアノ連弾版は珍しいので、米国で演奏してもお客さんがすごく興奮して聴いてくれる」と武田さんは話す。「米国の民謡からインスピレーションをもらい、19世紀末の米国でも受け入れられるメロディーをふんだんに使っている」と説明した上で、「当時の米国人に交響曲の作り方を示しているような面もある」とも指摘する。ドボルザークは当時の欧州民族主義を映した国民楽派の作曲家であるとともに、ブルックナーやマーラーとほぼ同時代の後期ロマン派にも属する。このため「新世界より」にも極めてロマンチックで叙情的な艶が感じられ、それが魅力でもあるのだが、一方で交響曲の定石といえる古典形式を守っている。西洋音楽を本格的に取り入れ始めた米国で、ドボルザークは模範となる完璧な古典形式の交響曲を発表しようと考えたのではないか。

あえて人気の交響曲に挑むリスクと醍醐味

「分かりやすいし、心引かれる旋律がたくさんある。民族音楽ふうの和声の要素が特に心を揺すぶる」と中井さんは「新世界より」の魅力を語る。「静けさ、美しさ、雄大さがある。情熱的なクライマックスの築き方はまさに天才のなせる技」と言う。明快な論理構成と湧き上がる感情を併せ持つロマン派交響曲の完成形といえる。巨匠の指揮者とオーケストラによる歴史的名演も数知れず。だから「ピアノ連弾で『新世界より』を演奏するのはリスクもある。皆さんがよく知っている曲だからミスも目立ちやすい」と中井さんは言う。

それでもあえてピアノ連弾で人気の交響曲に挑むのはなぜか。「2人でオーケストラを操縦しているような醍醐味がある」と武田さんは理由を語る。「ピアノ連弾版では作曲家自身がいちばんクリアに表したい輪郭や、大事なメロディーをうまく組み合わせている」とピアノ曲としての価値も指摘する。オーケストラとは異なり「ピアノなら近いところから聴いてもらえる。身近で何かを感じ取るという意味では、(オーケストラによる交響曲にはない)新しいカラーを出せる」と話す。

演奏の難易度は高い。「オーケストラの様々な楽器による豊かな表情を、ピアノを使って2人だけで表現するのは難しい。作品に込められた作曲家の内面やメッセージをピアノを通して引き出す必要がある」と中井さんは語る。またピアノはバイオリンやチェロのようなオーケストラの弦楽器とは異なり、音の減衰が速い。「弦楽合奏のような持続音を出すために、どうしてもトレモロ(同一音の急速な反復)が多くなる」と武田さんは話し、指の運動が多いトレモロ奏法がピアニストに耐久力を強いる点も指摘する。

映像では2月10日、中井さんが教える東京都調布市の桐朋学園大学で、2人が「新世界より」を練習する様子を捉えている。映像の冒頭では第2楽章の中間部、澄み切った短調のメロディーを弾いている。有名な「家路」の旋律の陰に隠れがちだが、中間部で不意に流れ始めるノスタルジックな哀歌はピアノの音色でも気品があって美しい。「ラルゴ」という遅いテンポ設定の第2楽章だが、随所にトレモロや様々な装飾音を付けていて、聴きやすい響きの割には手数が多そうだ。「人生の影や悲しみを秘めながら一歩ずつ進んでいくような音楽。セコンドの左手が足音を一粒ずつ鳴らす」と武田さんは第2楽章中間部を説明する。

重なり合う響きの構造美が明らかになる

第4楽章冒頭の有名すぎる勇壮な部分も、2人のピアノにかかると、重なり合う響きの構造美が明らかに見えてくる。「絵画に例えれば、下絵やスケッチの跡がきちんと見える感じ」と武田さんは言う。それでも多彩なオーケストラの音色をピアノだけで表現するため、「弾き方によってはそれぞれの楽器に割り振られていたはずの響きが聞こえにくくなる」と中井さんは言う。「オーケストラの楽譜は何段もパートが重なっているが、ピアノは4段のみ。省いている音もある。どの楽器のパートがピアノではどうつないでいるのかを十分に理解して弾いていくのがポイントになる」と中井さんは連弾の極意を話す。撮影日にも2人はそれぞれの低音域と高音域を鳴らすタイミングや音の受け渡しを何度も繰り返し練習していた。

2017年に入ってからも2人はすでに1月21日、耕心館(東京都瑞穂町)で「新世界より」を全曲公演した。50席程度の小さな会場で間近に聴くと、ピアノだけの音色でもオーケストラとは異なる迫力や繊細な響きが感じられ、来場者の満足度も高そうだった。今後も国内外で「新世界より」を演奏する予定だが、これで良しとはしない。「次はチャイコフスキー自身の編曲による『交響曲第6番《悲愴》』のピアノ連弾版にも挑戦し、CD録音と公演を実現させたい」「今年末にはベートーベンの『第九』も、合唱や独唱の部分を含めピアノ連弾で披露したい」と中井さんと武田さんはデュオの抱負を語り合う。ピアノ連弾から交響曲の新たな感動が生まれる。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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