名脇役6人『バイプレイヤーズ』 本人役で共同生活

平均年齢56.6歳のベテラン俳優6人が本人役で登場する深夜ドラマ『バイプレイヤーズ』。遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研が、大作ドラマのために招集され、その撮影に入るまでの3カ月間、共同生活を送るという設定で物語が始まった。そこで起こる悲喜こもごもを描いたコメディーとなっている。

深夜ドラマ『バイプレイヤーズ』 ベテラン俳優6人が本人役で共同生活を演じる(金曜夜12時12分/テレビ東京系)

組み合わせの発端となったのは、このメンバーによる映画祭「6人の男たちフィルムズ」。2002年に行われた同祭は、6人の各出演作が上映され、10年後の12年にも開かれた。その様子を新聞の記事で知ったドリマックス・プロデューサーの浅野敦也氏が6人の絆に感銘を受け、制作魂をくすぐられた。

「松重さんのマネジャーさんと話す機会があり、皆さんの共演作品を見たいですと伝えたところ、なかなかそういうチャンスがないと言われて。それで企画を練り始めました」(浅野氏)

とはいえ、あらゆる方面から引く手数多の面々だ。ドラマの内容と放送時期が決まったのは1年前。<本人役>にしたのはこんな理由から。「俳優としての力量はもちろん、素のチャーミングさも伝えたいと思った時、<本人役>ならそれが最大限に見せられるのではと。役者のオンとオフを共同生活という形で展開したら、より面白くなるのではと考えました」

これだけの名優が会する撮影現場はこんな様子だという。「1度のリハーサルで、すぐ本番。こんなにスケジュールが巻く現場は初めて(笑)。演技が上手な役者さんが4~5人いると、1人くらいはアドリブが苦手な方がいるんですが、この6人は一切ない。田口さんがアドリブをしたら他の5人が喜々として返しています」

メーンで仕切るのは、31歳の松居大悟監督。昨年末に蒼井優主演の映画『アズミ・ハルコは行方不明』で注目を集めた新鋭を起用した。「6人と渡り合ってきたベテラン監督より、このメンバーとの仕事が未経験な監督のほうが予想外の化学反応が生まれる気がして。松居監督独特の<ユルさ>もこの作品に合っていると思います」

ドラマの中国人スタッフ・ジャスミン役は新人の北香那。「周りが本人役で彼女だけが役を演じる。作品の世界観を壊さぬよう、新人の彼女を選びました」

現実と虚構があいまいな場面も多く、それぞれが交差する面白さがある

演技達者な面々の“本人役”ゆえ、現実と虚構の境目があいまいな場面も多いが、「フィクションとして楽しんでほしい」と浅野氏。「第2話で遠藤さんと松重さんが“キャラかぶり”が原因で共演NGだったり、光石さんと山口紗弥加さん(本人役)が不倫をしてたりしてますが、これはドラマの中の話(笑)。<10年前に6人が共演して撮影が途中のまま終わった映画の出来事>という話も物語の縦軸にあり、役者ならではの悲哀や喜び、感動を今後も描きます」

浅野氏は、地上波深夜枠での放送にこだわった。「コアなファンの支持で熱狂的に広がる力は、ゴールデン・プライムタイムより、深夜のほうが強いから」

ドラマの最後に設けたトークコーナーも楽しい。「お酒片手に皆さんが、素でバイプレイヤーズとしての思いを語ります。6人は、友達というより仲間という言葉が似合う、うらやましい距離感。ドラマで丁々発止する姿を、トークでは素で何でも話し合える関係性を見てほしい」。大人の心に染み入る一作だ。

(「日経エンタテインメント!」3月号の記事を再構成。敬称略、文・田中あおい)

[日経MJ2017年3月3日付]

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