スタンフォード一番人気の授業 会計学が魅力的なワケスタンフォード大学経営大学院 ブランケスプール助教授に聞く(1)

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。

すべての数字は懐疑的に見よ

佐藤:ブランケスプールが教えている選択科目「国際財務報告」というのは、どんなことを学ぶ授業ですか。

ブランケスプール:これは、スタンフォード入学前に会計に携わったことのある人向けの上級会計コースです。会計にまつわる様々なケースについて、より俯瞰(ふかん)的で、より専門的な視点から議論することを目的としています。

投資家にどのような情報を伝える必要があるか。自分や他の意思決定者にとって有益な会計情報にするためには、どこをどう改善したらいいだろうか。こうしたテーマについてディスカッションしていきます。

すべての数字を懐疑的に見ることも学びます。「この数字には不確定要素が多い、この数字はもっと幅で考えないといけない。では予測値はどれくらいの幅で考えるべきだろうか」というように、数字を所与のものとしてとらえないことが大切です。

佐藤:会計学をわかりやすく、身近に感じてもらうために、工夫していることはありますか。

ブランケスプール:たとえ話で説明することはありますね。

佐藤:何か説明してもらってもよろしいでしょうか。

ブランケスプール:「資産証券化」について教えるときは、次のようなたとえ話をしますね。

資産証券化とは、企業が特定の資産を証券化して、それを投資家に販売することによって、資金を調達する方法です。なぜこういう資金調達方法が生まれたのかということを説明するために、この話をしています。

私には息子と娘がいます。3歳の息子は、レーズン入りシリアルの中のレーズンが大好きなのです。普通のレーズンではダメなのです。「シリアルの中に入っているレーズン」が食べたいというのです。だから私はいつもシリアルからレーズンを一つ一つ取り出す係をやるはめになります。

このように、世の中には「全部はいらないけれど、その中に入っている一部が欲しい」と思う人はたくさんいます。息子のように、シリアルはいらないけれど、シリアルの中に入っているレーズンだけ欲しいという人はいるのです。それは投資家についても同じことです。

たとえば、会社の資産をシリアルとレーズンに分けてそれぞれ売り出したらどうでしょうか。セットで売るよりも高値で売れるかもしれません。なぜなら、シリアルだけ欲しい人、レーズンだけ欲しい人が必ずいるからです。娘はシリアルだけ欲しい、息子はレーズンだけ欲しいというのと同じです。両者のニーズにこたえれば、シリアルとレーズンを分けることによって、それぞれ別々の価値を生み出すことができます。

佐藤:なるほど。レーズン入りシリアルのレーズンだけ食べたい人がいる、というのはとてもわかりやすい話ですね。この会社そのものに投資するにはリスクは高いけれど、この会社のこの金融資産になら投資したいという投資家はいる、ということですね。ブランケスプール教授の授業が人気を集めている理由は、難しいことを一般の人にもわかるように解説してくれるところなのですね。

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