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林遣都 市原悦子との映画共演で学んだ、役作りの極意

日経エンタテインメント!

2017/3/3

 芥川賞を受賞した又吉直樹原作のNetflixオリジナルドラマ『火花』、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』など話題作への出演が相次ぎ、注目度を高める若手実力派の林遣都。最新作となる主演映画『しゃぼん玉』では、大ベテラン女優の市原悦子と共演。演技への新たな刺激を得た。

『しゃぼん玉』で共演した林遣都と市原悦子 (c)2016「しゃぼん玉」製作委員会

 現在26歳になる林は、15歳のときにスカウトされて芸能界入り。デビュー映画『バッテリー』に始まって、『DIVE!!』『ラブファイト』など青春スポーツものなどで好青年を演じたかと思えば、『パレード』では髪を金髪に染めて男娼役に挑み、人気コミックをドラマ&映画化した『荒川アンダーザブリッジ』の御曹司役など多彩な役を演じてきた。

 「10代、20代のうちなんて、自分の代わりなんていくらでもいる。だから、存在価値を示したくて、『どんな役でもやってるやるぜ!』ぐらい意気込んでいたときもありました。でも今は、人の心に届くようなお芝居をしたいなと」

 特に、俳優としてのキャリアも10年を過ぎて、こんなことを思うようになったという。

 「『べっぴんさん』のおかげで、故郷の関西にいる時間が長かったので、久々に地元の友達と会う機会もあったんです。友達と自分のことを比べると、本当に自分って何も社会のことが分かってないなと思いました。だからといって、自分がやってきたことには誇りはあります。自分が演じたこと、表現したことで、誰かが笑ったり泣いたり。そんな仕事って他にはないし、友達からも『あれ見た』『これ見た』と言ってもらえることもうれしくて、いつまでも続けられそうな気がします」

■「しっかり考えてやらないとダメですよ」

『しゃぼん玉』では、親の愛を知らずに育ち、通り魔や強盗傷害を繰り返す主人公の青年を演じた

 最新作は、主演映画『しゃぼん玉』。直木賞受賞作の『凍える牙』や『水曜日の凱歌』などの人気作家、乃南アサの同名小説を映画化した。監督はドラマ『相棒』シリーズなどの東伸児が手がけた。

 林が演じたのは、親の愛を知らずに育ち、女性や老人を狙った通り魔事件や強盗傷害を重ねた末に逃亡した伊豆見翔人。宮崎県の山深い村で出会った老婆・スマ(市原悦子)や、10年ぶりに村に戻ってきた美知(藤井美菜)との出会いを機に、自分が犯してきた罪の大きさを自覚した翔人は、あることを決意する。

 映画の舞台は宮崎県北西部に位置し、日本三大秘境のひとつといわれるほど豊かな自然に囲まれた村、椎葉村(しいばそん)。この椎葉村も含め、宮崎県北部エリアには多くの神話が残され、また椎葉村は<平家落人伝説>が長く語り継がれている土地としても知られている。

 林は昨年の3月半ば、2週間ほど、この椎葉村に滞在し、撮影に取り組んだ。日本を代表する女優・市原悦子を相手に、人生の大きな決断を下す青年役。大ベテラン女優との共演で何を得たのか。

 「撮影に入る前、市原さんから、『難しい役ですね』と一言だけ言われたんです。僕はそれを『しっかり考えてやらないとダメですよ』というメッセージと受け取りました。だから、自分のイメージだけで役作りしてはいけない。舞台である椎葉村に行って、そこで感じたことを大事にして演じたいと思いました」

 そして、市原も役のスマそのもののように、林に接したという。

 「市原さんはとにかく僕を翔人と見てくださっていました。撮影の合間、監督を交えて話しているときでも、僕のことを『この子は…、この子は…』って、ずっと呼んでくださるんです。その声がすごく心に響いてきましたし、何か手を握ってもらうだけでも震えるものがあって。本当に僕が真っすぐに役に入っていける環境をつくってくださったんです」

■深みのある演技について、毎日考えた

 市原といえば、俳優座出身の女優で、1957年に活動をスタート。映画『黒い雨』(89年)で日本アカデミー賞助演女優賞を受賞したほか、ドラマ『家政婦は見た!』シリーズや『まんが日本昔ばなし』などの声優としての活躍など多岐にわたる。

 「その場に市原さんがいるだけで存在感がある。たとえば最初の方のシーンで、スマおばあちゃんが農作業をしているんですが、本当にそこに住んでいる人に見える。近所のおばあさんたちと食卓を囲むシーンもとても自然。

 また、笑ったり悲しんだりという一つひとつのしぐさがすごくて。圧倒されっ放しでした。自分が年をとったときに、目の前の市原さんのような深みのある演技ができるんだろうか。どんな生き方をして、人としてどう深めていけばいいのか。毎日考えさせられました。本当に、今、自分のこの年齢で市原さんとご一緒できて、自分にとっては武器になるというか、誇れる時間になったと思いました。

 この映画は、自然があって、人が温かくて、愛情にあふれていて…、でも、この映画の魅力って、言葉にしてしまいたくない何かがある。言葉にしてしまうと消えてしまいそうなもの。ぜひ映画館でその先にある、それぞれが感じるものをつかんでもらえたらと思います」

(ライター 前田かおり)

林遣都(はやし・けんと) 1990年生まれ、滋賀県出身。中学3年生の修学旅行中にスカウトされ、2005年に芸能界入り。07年に映画『バッテリー』主演で俳優デビュー、同作での演技が評価され、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞はじめ、その年の多くの新人賞を受賞。その後、映画、ドラマに活躍。近年はNHK大河ファンタジー『精霊の守り人』、Netflixドラマ『火花』など、数々の話題作に出演。

3月4日(土)シネスイッチ銀座ほかで公開
『しゃぼん玉』
親の愛を知らずに育ち、通り魔や強盗傷害を繰り返す青年、伊豆見翔人(林遣都)。誤って人を刺した彼は逃亡中、宮崎県椎葉村に流れ着く。たまたま山道で事故に遭っていた老婆・スマ(市原悦子)を助けたことをきっかけに、彼女の家に居座ることに。最初は逃げるつもりが、スマと温かい村人たちと触れ合ううちに、人生の大きな決断をすることになる。

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