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治部れんげ 男女平等は女性が生き抜く必須条件

日経DUAL

2017/3/31

日経DUAL

就職、転職、独立、そして、結婚、出産、育児……女性の人生はいくつものライフイベントによって彩られ、同時に多くの迷いも生まれるもの。社会の第一線で活躍する女性から、人生の転機とその決断のポイント、充実したライフ&ワークのために大切にしている価値観をお聞きします。今回お話を伺うのは、男女共同参画やワーク・ライフ・バランスの分野で精力的に取材・執筆活動を行うジャーナリストの治部れんげさん。インタビュアーは日経DUALの羽生祥子編集長です。

■フリーランスという働き方を選択したいという気持ちが年々強くなった

――治部さんが出版社を退職して独立されたのが40歳の時なんですね。

はい。それまでは、経済系の週刊誌や月刊誌の編集記者として会社員生活を送っていました。

――その間に二人のお子さんもご出産されて。

33歳の時に第一子を、37歳で第二子を出産しました。上の子が小学生、下の子も年中になり、最近は子育てもだいぶ楽になってきました。

――会社を辞めて独立しようと思った理由は何だったのでしょうか。

一つは、ワークスタイルの問題ですね。記者という仕事にはとてもやりがいを感じていましたが、もう少し、時間と場所に縛られない働き方をしたいと思いました。もともと縛られるのが嫌な性格なので、10年以上よく会社員を続けてこられたなと思うほどです。

独立を選んだ細かな理由はいくつかありますが、経済的安定と引き換えになっても、自由に行動できるフリーランスという働き方を選択したいという気持ちが年々強くなっていったんです。そして、男女共同参画やワーク・ライフ・バランスといった突き詰めたいテーマがあったこともやはり大きかったですね。

(写真:山出高士)

■社会人留学で米国人のワーク・ライフ・バランスを取材

――そのテーマとの出会いのきっかけは。

社会人留学がきっかけでした。32歳の時、会社の留学休暇制度を利用して、1年間アメリカのミシガン大学に留学したんです。フルブライト奨学金で300万円ほど資金をいただきましたが、1年間無給だった分も含めると機会費用を含め、1000万円ほどの持ち出しになった計算です。それでも、それだけを払うだけの価値のある学びを得られたと思っています。

――留学した先でどんな研究をされたんですか。

アメリカ人のワーク・ライフ・バランスです。まさに今にもつながるテーマなのですが、子どもが二人以上いる管理職クラスの女性と配偶者を対象にインタビューを重ね、文献考査もやりながら、彼女たちがどのようにキャリアと家庭をマネジメントしているのかを取材していきました。

■「もっと働いてね。でも、子どももたくさん産んでね」は無理がある

――2006年頃のことですよね。今ほど「ワーク・ライフ・バランス」という言葉も浸透していなかった頃ですね。どうして、アメリカ人のワーク・ライフ・バランスに焦点を当てたのでしょうか?

人口減に直面し始めた日本社会が、女性の活躍と少子化対策を両立させながら経済成長を持続させていくために取るべき方策は何か、ようやく本格的な議論が始まった時期でした。女性に対して「もっと働いてね。でも、子どももたくさん産んでね」というのは難しいのではないか、と疑問に感じていました。では、どうしたらいいのか。

女性が産み育てながら働き続けられる国として、よくお手本にされるのが、高い税金を払って社会保障を充実させる北欧型のモデルです。一方、アメリカは政府の育児支援が手薄い“小さな政府”でありながら、成果主義に基づき柔軟な働き方をして、ワーク・ライフ・バランスを充実する取り組みがなされています。日本のように安価で質の高い認可保育園のような設備はなく、政府が有給の育休を産後の女性に提供することもありません。結果、男性も女性と同等に育児や家事に参加して、家庭を運営せざるをえない。

つまり、社会制度があてにならないので、家庭のパートナーシップでやりくりしているのがアメリカ型です。ここに日本が参考にすべきヒントがあるのではないかと思ったのが、留学の動機でした。

(写真:山出高士)

――なるほど。実際に取材をしてみての印象はいかがでしたか?

男性側に取材していて印象的だったのは、家事や育児に関して一度も「help」という言葉を使わなかったことです。家事や育児は「help=手伝う」ものではなく、「share=共有・分担する」ものという概念が、当たり前になっているんです。

一方で、女性側も責任と覚悟を持って働いているという印象でした。「自己実現をしたいから」といった甘い動機で仕事をしている感覚はなく、共働きで家計に貢献していく責任を自覚しているんです。ある人は、「結婚とは、責任の交換である」と言っていました。「男女平等」という概念が女性へのやさしさだけではなく、社会を生き抜くための必須条件としても存在するのだということを強く感じました。(後編に続く)

治部れんげ
昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社入社。経済誌の記者・編集者を務める。14年からフリーに。国内外の共働き子育て事情について調査、執筆、講演などを行う。著書『稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)、『ふたりの子育てルール』(PHP研究所)。東京都男女平等参画審議会委員などを務める。

(ライター 宮本恵理子)

[日経DUAL 2017年2月2日付記事を再構成]

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