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「サイボーグ009」最新作はネット配信 その理由は?

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日経トレンディネット

プロダクション・アイジーが石森プロと共同で製作したアニメシリーズ『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』(COJ)が、2017年2月10日から動画配信サービス「Netflix」で全世界向けに独占配信されている。石ノ森章太郎原作の名作「サイボーグ009」シリーズの最新作で、全12話からなるアニメシリーズ。数々のアニメ作品を世に送り出し、日本のアニメをけん引する企業の一つとして海外でも広く知られるプロダクション・アイジーだが、企画段階から全世界への発信を前提にした作品を手掛けるのは初めてだ。

さらに、Netflixと共同で製作する新作アニメシリーズ『パーフェクト・ボーンズ』の企画も進めている。映画『キル・ビル』(2003年公開、クエンティン・タランティーノ監督)のアニメパートの監督を担当した中澤一登氏が監督を務め、2017年中にNetflix独占で190カ国に同時公開される予定だ。

これらのプロジェクトが実現した背景には、日本発のアニメが世界のユーザーに向けたキラーコンテンツになるとみて注力するNetflixの戦略がある。一方で、プロダクション・アイジーにとっては、国内外に作品を発信していく新たなチャンスだ。Netflixをはじめ、アマゾンプライム・ビデオ、Huluなど、近年はオリジナル作品や独占公開のコンテンツに注力する動画配信サービスが増えてきた。これまで劇場公開やテレビ放映を経て、その後、Blu-rayなどのパッケージを販売するというビジネスモデルが主流だったが、新たに動画配信サービスという"出し先"が加わる。

しかも、Netflixには、米国の利用者の85%以上が視聴のきっかけにするという強力なレコメンド機能がある。これまで質が高いとされながらも、海外では一部のファンにしか知られていなかった日本のアニメがNetflixでの配信によってより広い層にリーチできる可能性は高い。ターゲットとなる市場が国内だけから海外にも広がれば、新たな出資者の確保や予算の回収にもプラスに働くはずだ。

そこで、プロダクション・アイジーの取締役企画室担当の森下勝司氏に、Netflixでの独占配信に至った経緯や全世界配信を前提としたときのビジネスモデルや制作方針の違い、今回新たに採用したフル3DCGによる映像について聞いた。なお、森下氏はプロダクション・アイジーのグループ会社で、今回、COJのアニメーション制作を担当したシグナル・エムディの社長も務めている。

動画配信サービスは作品作りの自由度が高い

――「サイボーグ009」シリーズの最新作『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』(COJ)がNetflix限定で全世界に配信されることになりました。その経緯を教えてください。

森下「サイボーグ009の新作の話は、元々、石森プロとの間で立ち上がりました。プロダクション・アイジーでは2012年に劇場作『009 RE:CYBORG』(神山健治監督、以下、RE:CYBORG)を制作していますが、石森さんのほうから、今度はテレビシリーズとしてやりたいという話がありました。RE:CYBORGは映画としても好評ですし、その後、遊技機としても人気を得ています。そこで、再び神山さんに監督として立ってもらい、新たなテレビシリーズを制作できないかという話になったのです。

一方で、Netflixとは、同社の日本法人の立ち上げ準備段階から「いずれ何かできれば」と話をしていました。この2つが、当社の石川(光久社長)の中でつながって、Netflixにサイボーグ009新作の企画を提案してみたのです。Netflixからは「サイボーグ009をはじめ、石ノ森章太郎作品はブランド力がある」ということで賛同が得られたので、Netflixでの配信を前提に企画がスタートしました」

――サイボーグ009は海外にもファンがいますが、基本的には日本国内に向けて作られてきました。世界配信を前提にしたことで、企画の方向性や内容は変わりましたか。

森下 「そうですね。世界、特に米国の視聴者にも分かりやすい内容というのは、企画当初から強く意識していました。そのため、RE:CYBORGと比較して、ストーリーはシンプルに、敵との関係も分かりやすくしています。

アクションも数割増しです。日本向けならもう少し人間関係などに重きを置くと思うのですが、そこに時間を割いてしまうと海外の人たちは見るのをやめてしまうかもしれない。飽きさせないことは常に意識していました。話数の最後に必ず"引き"の要素を作ったのもその一環です。

一方で、必要な説明は入れています。1話目の冒頭にゼロゼロナンバーサイボーグたちのこれまでを説明する部分がありますが、これも世界配信を前提にしたものです。原作の石ノ森章太郎さんとその代表作であるサイボーグ009は、海外でも知名度があると聞いています。とはいえ、まったく知らない人ももちろんたくさんいるので、初見でも楽しめるようにしないといけないということは、総監督を務めた神山さんが常に言っていましたね」

――かつてアニメというと、テレビ放映か劇場公開、その後にディスクを販売するというのが一般的でしたが、最近は、期間限定で実施する劇場でのイベント上映や、今回のような動画配信サービスでの配信も出てきました。ビジネスモデルは変わりましたか?

森下 「自由度が増していると思います。例えば劇場作品の場合、作品の尺は90分以上、上映館数は100館以上というような考え方がかつてはありました。イベント上映という方法ができて、尺は60分、上映館は20館、価格設定も一般1800円ではなく1500円でいいなど、フォーマットが多様化しています。

ネット配信の場合も、テレビのように20分何十秒みたいな決まった尺がありません。話数によって長さが違ってもかまわない。テレビか劇場かの2択だったころに比べると、いろんなコンテンツが作りやすくなっていると思いますね」

――しかも今回は全世界向け配信。コンテンツが届くユーザーの数は桁違いです。

森下 「こういう話ができるのは、Netflixとかアマゾンとか、ワールドワイドで配信できる企業が相次いで登場してきているからだと思います。以前なら、特定の国や地域で売り切って終わりというのが普通でした。

プロダクション・アイジーは、海外での展開にも積極的なほうだとは思いますが、それでも海外の企業と企画段階から組んで世界配給を前提にして一から映画を作ることはできていません。例えば、『キル・ビル』ではプロダクション・アイジーがアニメパートを担当し、もちろんクレジットもされています。それはとてもうれしいことです。ただ、基本的に権利は100%向こうにあって、「お金は用意する、だからわれわれの企画を作ってくれ」ということなんです」

――Netflixやアマゾンなどの映像配信サービスが登場したことで、海外展開の足がかりにしやすいという側面はありますか?

森下 「そうですね。世界に向けて発信していくうえで、バジェットなどが非常に高い映画よりもハードルが低いんじゃないかと感じます」

――今回、制作費の出資比率はどうなっているのですか?

森下 「プロダクション・アイジーと石森プロが50%ずつです。最初からこの2社以外増やさない方針でした。今後、さまざまな展開をするうえで、出資企業が少ない方が意志決定も早いですし、余計なところに気を使う必要もありません。今回は原作の権利も石森プロが持っていますしね。

実際、COJはNetflixに先駆け、2016年11~12月に劇場でのイベント上映を実施しています。Netflixでは全12回になるところ、3章に分け、各章2週間ずつの公開です。これも企画当初はなかった話です。Netflixとの契約条件が決まった後で、イベント上映ならこの条件に抵触せずにできるんじゃないかという話になり、そこで初めて東宝に提案して実現したんです。いずれテレビで放映することがあるかもしれませんが、そうした方針も基本は2社で決められます」

3DCG制作会社台頭で募る危機感

――作品の話に戻りますが、今作では映像面でも新たな挑戦をされています。前作RE:CYBORGはセルアニメ風の映像で、リミテッドアニメーション(1秒当たり8~12コマ)の手法を取り入れていますが、今作3DCGそのまま、フルコマ(1秒当たり24コマ)で作られています。見慣れないと感じる観客もいるのではと思いますが、あえて切り替えたのはどうしてですか?

森下 「RE:CYBORGを公開した2012年時点に比べてCGで作られた作品が増え、ヒット作も出ています。そんな中でお客さんもそろそろCGになじんできているのではというのがありました。あとは、全世界配信というのも大きいです。日本人にとってはセルアニメ風のほうが見慣れていても、世界的に見ればCGが主流ですから。

あとは、制作会社が変わったこともあります。RE:CYBORGはサンジゲンでしたが、今作はOLM Digitalになりました。OLM Digitalは実写の合成も含めていわゆるフルCGがベースの会社。今作も絵柄はセルに寄せていますし、アニメ的な表現を意識してはいますが、2社の個性の違いがありますね。

ちなみに、OLM Digitalと組んだことは、スケジュール管理面でもメリットがありました。というのも、Netflixはスケジュール厳守なんですよ。日本だと各話段階的に納品しますし、期日もだいたいというか、粘っていいものにするなら少しくらい遅れてもみたいな(笑)。でも、Netflixとの契約では全話一括納品、遅れたら契約不履行ということになる。そういう面で、OLM DigitalはNetflix向けの制作の経験もあったので、スケジュール管理とか体制作りも含めて対応に安心感がありました」

――とはいえ、フルCGの絵柄には、「見慣れない」と感じる観客もいるのではいう不安はありませんでしたか?

森下 「CGの一番のメリットは顔崩れが起こらないことだと思います。そして、今のお客さんにはそういうところにこだわる人が増えている。昔は、多少顔がどうであれ、動きやレイアウトがかっこよければいいという人も多かったのですが、今は見かけや密度感が重要になっているのです。

特に、前作RE:CYBORGや今作COJは、アクションなども豊富。加速装置や今作に出てくる逆回転のシーンなどを描くには、CGしか選択肢がないんじゃないかと思います」

――現時点でフルCGにすることのコストメリットはありますか?

森下 「制作費だけを見るとないですね。CGは話数を多く作るほどコストパフォーマンスが上がります。今回みたいに1クールだけだと割高。もちろん、表現など、同じことが2D作画でできるかは別としてですが。

ただ、ずっと2D作画の世界でやってきた私としては、すごく危機感を持っています。ポリゴン・ピクチュアズとかサンジゲンのようなCG中心の会社が今、2D側に攻めてきているというか。CG会社にはデジタル作画のクリエイターや技術スタッフを積極的に社員として採用するところも増えてきて、従来の2Dのノウハウや要素が蓄積されつつあります。

日本のアニメ作品も、以前は2D作画が中心でCGは部分的に使われていましたが、今はキャラクターもCGで作り、寄りの部分だけを作画にするなどどというような形も出てきているんです。主従が逆転してきた。また、以前は部分的な仕事を受けることが多かったCG会社が元請けになったり、オリジナル作品を作ったりするケースも増えています。お客さんも面白ければ2D作画でもCGでもいいという感覚になってきている。以前のような、2Dと3Dの境界線がなくなってきています」

――プロダクション・アイジーは2D作画で世界に名高いアニメ制作会社ですが、今回、子会社のシグナル・エムディ、OLM Digitalを起用してフル3DCGの作品を作りました。今後はどうなっていくのでしょう?

森下 「今後は作品によって2Dと3Dを選択することになるのではないでしょうか。2Dと3DCGは文化も文法も違いますから、企画やメーンで関わるクリエイターによって向き不向きがあります。ただ、監督も両方理解する人が増えてきているので、選択はしやすい気がします」

(日経トレンディネット 平野亜矢)

[日経トレンディネット 2017年2月10日付の記事を再構成]

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