女性リーダー、20代に磨く 結婚・出産前に意欲高める

意欲的に働き続ける女性を育てるため、初期キャリアへの働きかけを重視する企業が増えてきた。20代のうちから多くの経験を積ませる。出産などのライフイベントの前に仕事のやりがいを実感させることで、キャリア意識や成長意欲を高める。

日立製作所 未来像、上司と共有

「働くうえで重要だと思うことを1人2分で話してください」。講師が指示すると、5つのグループから一斉に声があがる。日立製作所がグループ社員を対象に実施する若手女性向けキャリアセミナーの1コマだ。仕事に一通り慣れ、結婚・出産などのライフイベントを控える入社3年目の時点で、先々のキャリアを主体的に考えさせるとともに、育児との両立への漠然とした不安を払拭する狙いで2014年度から実施する。

若手女性社員を対象に行っている日立グループの研修(2月27日、東京都台東区)

午前中は多様なキャリアの先輩女性たちのパネルディスカッション。午後は、仕事と暮らしの未来像を描くワークを行う。3年後のありたい姿の実現に向けた行動計画をつくり、後日上司と共有する。

日立製作所ヘルスケア三鷹事業所でソフト開発を手掛ける小林瑞季さん(25)はセミナーで初めて将来をイメージする機会を得た。「仕事ではずっと挑戦を続けながら、30歳までに結婚・出産をするのが理想」と未来を描く。実現のために、「仕事をマネジメントする力を早くつけなくては、と思うようになった」。

女性部下を持つ管理職への研修も15年度から行う。「8割以上が男性の組織なので、女性の育成の仕方が分からないという上司は依然多い」とダイバーシティ推進センタの武内和子部長代理。「キャリアはもちろんライフプランについてもコミュニケーションをとりながら育成にあたる重要性を理解してもらう」

第一生命 若手社員自ら、キャリアを考える会

若手社員自らキャリアを考える会を企画したのは第一生命保険。グループ3社の20~30代の女性社員約30人が参加し、やりがいや目指す姿について語り合う交流会を2月に初開催した。「日々、余裕がない中で、キャリアについて考えるいい機会になった」と企画運営にあたった人事部の連川いおりさん(29)は話す。

第一生命保険のグループ3社の若手女性社員交流会。仕事のやりがいなどを付箋に書き出し張り出す(東京都千代田区)

女性社員が高い意欲を持って仕事を続けられるよう、若手のうちから積極的に働きかける企業が増えている。「出産・育児で仕事に制約が生まれる女性は、男性より早期育成の必要性が高い」とリクルートワークス研究所(東京・中央)の石原直子氏。「ライフイベントを迎える前の時間を無駄にせず、多くの経験を積ませて能力を高めること、やりがいを感じさせて仕事を続けたいと思ってもらうことが重要だ」と指摘する。

東京ガス 女性管理職、不安消す

女性社員の育休復帰率100%の東京ガス。一方で女性管理職比率は6.5%にとどまる。「育児期にキャリアを伸ばしづらくなることが課題」と岸沢剛人材開発室長。「ライフイベント前にキャリアを考える機会を提供したい」と、28歳の女性社員を対象にセミナーを始めた。

次のページ
ダイキン工業 出産前に重要事業