歯周病菌を含む唾液が誤嚥(ごえん)などで肺に入ると、特に免疫力が弱った状態の人ではそれが肺炎を引き起こす。

また、歯周病は糖尿病の合併症の一つで、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯周病にかかっている人が多い。

これは糖尿病により免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなることや、末梢血管の血流が悪くなり傷が治りにくくなること、歯周病で炎症を促す成分が作られることなどが関係していると考えられる。さらに、最近では逆に歯周病になると糖尿病の症状が悪化し、糖尿病の人が歯周病の治療をすると血糖値のコントロールが良くなることがあることも分かってきたという。

歯周病菌など口の中に存在する細菌が体内に入るルートは肺だけではない。歯周ポケットでは歯ぐきが炎症を起こしており、出血したところからは細菌や細菌が作り出した毒素などが体内に入り込み、様々なトラブルを引き起こす。全ての歯が歯周病になり、深さ5mmの歯周ポケットができたと仮定すると、炎症を起こした歯ぐきの面積は大人の手のひらとほぼ同じ面積になるともいわれている。

炎症を起こした歯ぐきから体内に入り込んだ毒素などが原因で起こると考えられているのが動脈硬化による心疾患だ。歯周病にかかっている人はそうでない人に比べて1.5~2.8倍も循環器病を発症しやすいというデータもある[注1]

また、歯周病にかかっている妊婦は、早産(妊娠37週未満の出産)や低体重児(2500g未満)の出産のリスクが高くなることが分かっており、歯周病の人はそうでない人に比べて約4.3倍早産しやすく、早産と低体重児の出産リスクは合わせて2.3倍になると報告されている[注2]

加えて、アルツハイマー型認知症のモデル動物(マウス)を使った実験では、歯周病のマウスは歯周病でないマウスに比べて認知機能の低下が認められたという[注3]

怖いのは歯周病だけではない。歯周病とともに歯を失う要因の一つが虫歯だが、歯科疾患実態調査によると40歳以上の人で歯を抜く原因の4割は虫歯だ。残った歯の数が少ない人ほど寿命が短くなり、残っている歯の数が19本以下の人は20本以上の人と比べて要介護状態になるリスクも高いという報告[注4]があるからだ。

このように、将来の健康維持のためにも、若いころからのお口の健康習慣が大切だ。

歯周病や虫歯を防ぐにはどうしたらいい?

家での歯磨きももちろん大切だが、自分のウィークポイントを知ったり磨き残しをフォローするには、プロによるチェックやメンテナンスも欠かせない。(c)oleandra -123rf

歯周病や虫歯を予防するには、プロの手によるチェックとメンテナンスが必要だ。

「家でのブラッシングなど、ホームケアも大切だが、それを実のあるものにするために欠かせないのが定期的なプロの手によるチェックとメンテナンス、およびコンサルテーションです」と熊谷院長は指摘する。

例えば1日に何度も歯を磨く人は少なくないが、それをやっているからといってしっかり磨けているとは限らない。

「歯並びはその人ごとに異なり、歯が重なり合った箇所や、奥歯の奥など、歯ブラシが届きにくいところは磨き残しが多い。また、その人その人の磨きグセもあり、歯並びが悪くなくても歯ブラシが当たらない箇所が出てくることもある。そうした“歯磨きのウイークポイント”を知るためには、まずは歯科医院で歯垢の染め出しなどを行い、磨き残しが多い場所を実際に目で確認するのがいい。その上で、歯科医や歯科衛生士からウイークポイントの上手な磨き方などを指導してもらうといいでしょう」と熊谷院長。

また、プロならではのメンテナンスも必要だという。