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スーダンの「恋人たちの聖地」 奇岩・タカ山 旅する写真家のひとり言(2) 渋谷敦志

2017/3/2

 「ニーハオ」とあちこちで声をかけられるのはハルツームでも同じだが、カメラを首に下げて歩いていると、「なぜ私の写真を撮らないんだ?」とやや不満そうな顔をする人がいるのは意外だった。一般的にスーダンは写真撮影には厳しいのだが、カッサラはどこか異国的な雰囲気があってほっとする。

夕闇に包まれる「タカ山」

 タカ山のにぎわいは想像以上だった。友人同士や家族連れが多かったが、その中で新婚のカップルは見ていてそうとわかるものだ。手をつなぎ、肩を抱き合いながら自撮りするカップルもあった。「ハルツームでも見ない。時代が変わったのか」と友人が驚くほどのウキウキした空気がタカ山のふもとを覆っていた。カッサラの町を見渡せるところで腰を下ろし、コーラを飲みながら、砂漠のかなたに沈む夕日を眺めた。明後日から再び、あの夕日の向こうに行くのだなと、と気持ちを引き締めた。

 翌日の夕日は、カッサラからの復路、車窓から眺めた。どこまでも続くアフリカの大地を車で移動しながら、窓の外の流れ行く風景を見る時間が好きだ。その時、いつも決まって同じ自問をしている。「あれ、そもそもこの旅は何が始まりで、なぜ今も続けてるんだっけ?」

■「エチオピアで一番大変なところに行かせて」

 初めてアフリカに来たのは、大学を卒業してフリーで写真家を始めた1999年だ。念願だった国境なき医師団(MSF)の仕事でエチオピアに行く機会に恵まれたのだが、これがとにかく大変だった。

 エチオピアでMSFはいくつものプロジェクトを実施していたが、そのどれを見たいのかとフランス人の現地代表に聞かれたので、「一番大変なところに行かせて」とリクエストしたら、エチオピアは山がいいという。「タフな旅になるが、とても美しいところだ。同行はできないが、最後の晩さんをおごらせてもらう。少しは悪いと思っているんだよ」と、なにやら意味深長なことを言う。レストランでミートスパゲティをほおばっていたときは、まだ何のことかわかっていなかった。

 岩盤をくりぬいてつくった教会群が世界遺産にもなっているラリベラから、車で標高2500メートルくらいの地点まで移動した。「アビシニアへようこそ」。現地の案内人と合流した。そこからは徒歩で、5日間あまりの行程だという。

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