トラベル

クローズアップ

スーダンの「恋人たちの聖地」 奇岩・タカ山 旅する写真家のひとり言(2) 渋谷敦志

2017/3/2

新婚カップルなどでにぎわうカッサラの「タカ山」

 世界各地を飛び歩く写真家の渋谷敦志氏。ハードな取材現場の周辺で、ふと目に留まった風景や人々、心に浮かんだ思いなどを写真とともに伝えていただきます。2回目の旅先は14年前、「世界最悪の人道危機」といわれた紛争の舞台となり、現在も緊張が続くスーダンです。

◇   ◇   ◇

 米国に新しい大統領が誕生したとき、ぼくはアフリカのスーダンにいた。「アメリカ・ファースト」。就任早々、大統領はテロ対策の一環として、すべての難民の受け入れを停止するほか、アフリカと中東の特定7カ国の市民の米国の入国を禁止する大統領令を発表した。その7カ国にはスーダンも含まれていた。

 「ムスリム・バン(イスラム教徒の入国禁止)だ」と抗議の声をあげる人々の姿を英BBCが報じていた。そのライブニュースを、ある意味で米国から最も遠い場所の一つといっていいダルフールの町の宿泊先で、ババリアというノンアルコールビールを飲みながら凝視していた。

ダルフールではドンキー(ロバ)が人々の「足」

 14年前、「世界最悪の人道危機」といわれた紛争の舞台となったダルフール。今でも国連とアフリカ連合(AU)による停戦監視団(UNAMID)が大規模な平和維持活動を展開していることはあまり知られていない。

 この地を駆け足ながら見て回り、生存していくのに日々必死な人たちの現実を目の当たりにすると、「米国という強大な国家にとって、この国が一体どれほどの脅威になるのだろうか」と思わずにはいられなかった。

 こんな時代だからこそ、ダルフールの大地から、こう叫びたい。「ヒューマニティー・ファースト!」

 ぼくはこうしていつも、カメラを介して現実の世界と相対しながら、自分と世界との距離を測っている。そして、心の中の世界を見つめるアングルが知らぬ間にいびつになっていることに気づく。世界はどの角度から見るかで全然違った姿を見せる、と最初に体で知ったのがアフリカだった。今もその延長上の旅を続けている。

■緊迫のダルフールとは違うスーダン

 ダルフールから首都のハルツームに一度戻った。スーダンで居候させてもらっている友人夫婦と、週末を利用して、カッサラまで1泊2日の小旅行をすることにした。撮影で海外に行くと観光なんてあまりしないけれど、ダルフールではなんだかんだ緊張していたので気分転換したかったし、ダルフールとは違うスーダンの一面にも興味があった。

 早朝5時半にハルツームを車で出発、ガダーレフという大穀倉地帯を抜け、ひた走ること9時間、特徴的な形をした山が視界に入ってきた。そこがカッサラだ。

 エリトリアとの国境近くにあるカッサラは、スーダン人には新婚旅行で行く町として有名で、町のシンボルである奇岩「タカ山」のふもとにあるカフェテリアでデートするのが定番なのだという。友人夫婦は結婚してまだそれほどたっていなかったので、タカ山で2人の蜜月写真を撮ってあげるのもいいと思い、ホテルに荷物を下ろし、さっそく「タカ山」に向かった。

トラベル新着記事

ALL CHANNEL