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桐谷健太 「浦ちゃん」で好感度1位、飛躍に思うこと

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NIKKEI STYLE

桃太郎、浦島太郎、金太郎の3人は友達だった…。奇想天外な設定やバラエティー豊かなシリーズ展開がウケているKDDI「au」のCM「三太郎」シリーズ。2015年1月の放送開始以来、「銘柄別CM好感度ランキング」(CM総合研究所調べ)では、auが26カ月連続で1位を記録しているほか、「CMタレント好感度ランキング」でも松田翔太(桃太郎)や濱田岳(金太郎)ら、出演者が軒並み上位を占めている。なかでも人気が高く、男性部門で1位に輝いているのが、「浦ちゃん」こと浦島太郎を演じる桐谷健太だ。

「今でも、初めて撮影した時のことをすごく覚えてますね。童話の浦島太郎って、意外とイメージがないじゃないですか。亀を助けて竜宮城に行った青年、ぐらいな感じでしょ? 桃太郎や金太郎みたいにビジュアルイメージも強くないし。だから『こいつが、めっちゃ純粋なアホやったらオモロイなあ』って思ったんですよ(笑)。それで現場で演じて提案したら、『いいですね!』となった。だから何か、つかみ取った感がありましたね。

出来上がったCMを初めて見た時は、もう、爆笑しました。『これ、オモロイわ~』って思うてたら、放送後、ものすごい反響で。回を重ねるごとに『アホな浦ちゃん』が浸透していくなかで、いきなり雰囲気を変えたのが、『海の声』だったんですよ。そのギャップが、インパクトがあったのかなあと」

15年7月に放送された「海の声」編は、浦島太郎が乙姫を思いながら浜辺で三線を弾き語る、直球の歌モノCM。CMの狙いは、声を高音質で届けることのできる高音質通話対応「auガラホ」の訴求。だが、桐谷健太の歌声が視聴者の胸を打ち、オリジナル曲『海の声』は配信チャートで軒並み1位を獲得する。勢いは16年も止まらず、ついに年末には『NHK紅白歌合戦』へも出場を果たした。

「こんなことになるなんて、全く想像してなかったです。もともと歌が好きで、三線も趣味で弾いてたんです。それが仕事につながったっていうことが本当にうれしいし、ありがたい。だって、良い曲を歌わせてもらって、CMでみんなに聴いてもらえるだけでめっちゃうれしいことやったのに、がむしゃらにやっていたら、音楽番組に何度も呼んでいただいて、最後には『え、紅白?』ってことになったわけですから(笑)。それが狙ったんじゃなく、好きでやっていたことが<縁>でつながっていったのが、自分らしいなとも感じました。

目の前にあることを、1つひとつ楽しみながら、全力でやっていく。そのほうが、想像している未来より面白いところに行けると、三太郎のCMは改めて教えてくれました」

17年は桐谷にとってデビュー15周年。『ROOKIES』や『クローズZERO』など、数々の映画やドラマで活躍してきたが、CMでのブレイクは、本業でのさらなる躍進にもつながった。16年はNHKドラマ『水族館ガール』に主演(松岡茉優とW主演)し、月9ドラマ『カインとアベル』では山田涼介とツートップの兄弟役を演じるなどステージを一段上げた印象だ。

役柄も広がっている。2月に公開された映画『彼らが本気で編むときは、』では、生田斗真が演じるトランスジェンダーの女性の恋人役を務め、浦ちゃんとは180度違う、繊細なたたずまいで見る者を魅了する。

「自分としては、毎回、新しい役柄に挑戦してきたつもりなんですよ。でもパブリックイメージとしては、明るく元気で、熱血漢で、といった感じがあると思うので、『彼らが本気で編むときは、』は自分の新しい一面に気づいてもらえる作品になったんじゃないかという予感がしています。

30代に入ってから、いただく役が広がってきたなという感覚はありますね。『こいつにこんな役をやらせたらどうなんのやろ?』と思ってもらえるようになってきたのかな。意外なところでは、『海の声』で歌番組に出ている時の立ち姿を見て、『クールな役のイメージが湧いた』と、おっしゃる方もいましたね。何が次につながるか分かりませんね」

ジャパニーズドリーム感を感じる

テレビの力が弱くなり、CMも影響力の低下がささやかれる昨今。出演者の側である桐谷は、取り巻く状況についてどのように感じているのだろうか。

「CMの影響力は、ハンパないですけどね(笑)。子どもたちなんか『浦ちゃん、浦ちゃん!』ってみんな駆け寄ってきますし、ひどいときは『ウラ!』ですわ。『呼び捨てすなー!』言うたりしてね(笑)。

もちろん昔と比べたら、テレビよりもケータイを見るような時代になったのかもしれない。でもCMは、ドラマが好きな人もバラエティーが好きな人も、どっちも見てもらえる可能性がある。しかも企業がお金をかけて、本気出して作ってる、ある種の芸術作品。『海の声』編では、『流れた瞬間に涙が止まらなくなった』と言ってくれる方もいました。それぐらい力があるんだって改めて実感しましたし、子どもたちに周りを囲まれると、もう、ものすごいジャパニーズドリーム感を感じますよ(笑)。

CMには、めっちゃいろんな経験をさせてもらってます。これからもいろんなCMで、いろんな自分を見いだしていけたらうれしいですね」

2016年度CMタレント好感度ランキング

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2017年3月号の記事を再構成]

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