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ダウンを超えた? 進化する「化繊綿ウエア」

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日経トレンディネット

立春を過ぎても、まだまだ肌感覚としては寒さのまっただなか。街中ではダウンジャケットに身を包んだ人がまだ多い。

ダウンは軽くて温かく、脱げば小さく収納できて荷物になりにくいので重宝するアイテムだが、弱点もある。それは、汗や雨にぬれるとロフト(かさ)が保てなくなり、保温性が低下してしまう点だ。とはいえ、街中で着る分には雨雪にぬれ続けることはそうないだろうし、保温性が下がったところで命の危機に直結することは考えにくい。

しかし舞台が山となれば、話は別。万が一ダウンをぬらしてしまって保温性が得られなくなれば、街中のようにすぐに暖かい建物に避難できるわけではないし、ぬれたダウンは簡単には乾かない。過酷な環境の中で体温が下がれば命に関わってくる。この季節は特にだ。

そこで活躍するのが、化繊綿(かせんわた/化学繊維綿)の存在。"中綿ジャケット"という言葉を聞いたことがある人は多いと思うが、これはポリエステルなどの化繊綿が詰まったジャケットのこと。化繊はぬれに強く、比較的安価というメリットがあるが、ダウンと比べるとかさばり、保温性が劣るといったデメリットもある。

しかしここ最近、「パタゴニア」や「ザ・ノース・フェイス」などのアウトドアブランドが自社で優れた化繊綿を開発し、製品化する傾向が強まってきている。ぬれに強く、乾きも早く、なおかつかさばりにくい。これまで培ってきた経験と高い技術をもっているアウトドアブランドだからこそ実現できる、"ハイテク"化繊綿が次々に登場しているのだ。

そこで今回は今、注目されている「化繊綿ウエアの進化」にフォーカスし、各アウトドアブランドが自社開発している化繊綿の特徴や製品について、開発秘話を含めて紹介する。

東レとの協同開発で次世代のアウトドアシーンを担う存在に

パタゴニア×東レ・ミルズ「フルレンジ・インサレーション」

1973年に米国で創設されたパタゴニアは、アウトドアスポーツに適した機能的な製品を世に送り出すだけでなく、環境的および社会的責任をも担える企業を目指し、多岐にわたる活動をしている。そんな米国生まれのパタゴニアが、日本の繊維メーカー大手である東レと開発した素材が「FullRange(フルレンジ)」だ。パタゴニアで「ナノエア」と名のつく製品すべてに、このフルレンジが使用されている。

パタゴニア日本支社マーケティング部PRの松原聖恵氏によれば、「フルレンジは、数種類の異なるポリエステル繊維から作られたマルチ・デニールの化繊インサレーション(※断熱性のある化学繊維)です。弊社では自社工場を持って生産していないため、今回、東レ社にリクエストをし、共同で開発に取り組みました。フルレンジの特徴は軽量で、通気性と伸縮性に優れている点。加えて疎水性も備えているので、ぬれても保温性とかさを維持し、すばやく乾くところです。それに、繊維移動を起こしにくい安定性と高い伸縮性といった独自要素を持ち合わせているのも特徴」だという。2014年の秋冬から、このフルレンジを使用したナノエアを展開を始め、2016年の秋冬には『ナノエア・ライト』を、2017年の春夏(今期)からは『ナノエア・ライト・ハイブリッド』をリリースしている。

フルレンジの開発に至ったきっかけは、"日々の山行"にあったという。

「パタゴニアのアルパイン・チームは、ライン管理者からデザイナーまで皆クライマーです。そんな私たちが山へ行くなかで気が付いたこと。それは"ウエアを着替えるために、多くの時間と労力を費やしている"ということでした。そこで通気性に優れていて、かつ 寒冷な山で動いたり止まったりを繰り返すような激しい有酸素運動に対応できる化繊のインサレーションを作ることにしたんです」(松原氏)

そこで何種類ものナノエア製品を作り、時間をかけてクライマーとフィールドテストをし、素材それぞれの層に目を向けて解決策を追求。「完成したナノエアのジャケットはメカニカル・ストレッチ織りによって4方向に伸縮し、40CFM(※CFMは流量をあわらす単位)という通気性を発揮する」(松原氏)。これは現在の市場ではほかにないほど高い通気性なのだという。

パタゴニアはこれまでにもプリマロフト社と開発した、環境に配慮したプリマロフト・ゴールドインサレーション・エコ(パタゴニアのナノパフ製品に使用)や、リサイクル・ポリエステル90%からできたサーモグリーン(おもにスポーツウエアやスノーウエアに使用)など、化繊インサレーションを使用した製品リリースしている。

こうした化繊中綿の開発に力を入れている理由を松原氏は、「たしかに重量に対する保温性が高いのはダウンです。しかし、化繊インサレーションはぬれても温かく耐久性に優れていて長期間使えるほか、外的要因にも強く、ウエアが裂けたとしても中身が飛び出して性能を失うリスクが少ないんです。アウトドアフィールドで使用するには非常に適している素材であり、まだまだ開発の可能性があると考えているので、今後も新しい独自の化繊インサレーション開発を追求し、展開していきたいと思っています」と話す。

パタゴニアの化繊インサレーションの進化が、私たちユーザーのアウトドアシーンに与える快適性は大きなものになりそうだ。

ワタ状ではなく"シート状"がカギ

ファイントラック「ファインポリゴン」

2004年に神戸で誕生した「ファイントラック」。彼らは世の中で常識とされていることを「本当にそれは常識なのか?」と問うことから商品開発をはじめ、これまで多くの"新常識"を提唱してきた。なかでも、「ファインポリゴン」素材の登場は画期的だった。なぜなら、化繊はワタ状で封入することが主流であったのに対し、シート状にすることを考案したからだ。

ファインポリゴンは「軽くて温かく、水にぬれてもかさを維持できる」「保水しないので乾きが早い」「シート形状で偏りや抜け出しの心配がないため、コールドスポット(冷たいと感じる冷覚点)の発生を抑えた縫製が可能になり、均一な保温力を得られる」という特徴があり、ダウンや化繊綿のデメリットを見事にカバーしている。

開発背景について、同社の広報担当 畑中恵里氏は「保温素材として最も一般的なダウンは軽くて温かいですが、ぬれに弱いことを考えると、過酷なフィールドにおいて最適の素材とはいえません。さらに、従来の化繊中綿のようにダウンを模倣したワタ状の保温素材では重くかさばるだけではなく、素材の中に水を抱えてしまうので、ぬれるとさらに重くなりなかなか乾きません。自分たちが本当にアウトドアフィールドで使いたいと思うモノを作るためには、これまでの常識にとらわれない発想で、ぬれに強くかつ軽くてコンパクトな保温素材の開発が必要だったんです」と話す。

課題に直面するなかで、「ワタではなくシートならどうか?」というアイデアからファインポリゴンの開発がスタート。「薄い紙を重ねてくしゃくしゃにしてみると、いい具合にロフト(かさ)が形成されます。これを復元力が高く吸水しない生地で作れば、保温素材として使えるのではないか?と考えました」(畑本氏)

しかし、アイデアが浮かんだはいいものの実現までの道のりはほど遠かったという。「いざ開発に取り掛かってみると、適した素材が見つからなかったり、ようやく理想的な素材を作り上げられたと思ったら、今度は裁断と縫製が非常に難しかったりと、課題が続出しました。"ファイントラック指定工場"としてタッグを組んだ実績ある工場のスタッフと何度も議論、試作、調整を重ね、着想から3年掛かりでようやく商品化できたんです」と畑本氏。モノづくりにかけるアツイ情熱が世界初の素材を生み出すことになった。

自分たちが「本当に欲しい」と思うモノを考案してから素材開発し、その素材を裁断するためだけの専用機械までも専門メーカーと共同で開発する。ファイントラックのモノづくりにおける妥協しない姿勢は本当にカッコイイと思うし、そういった人たちが手掛けたオンリーワンの製品を身にまとって山に行けるありがたみは、日々痛感している。

衛生的で非アレルゲン性素材なのも強み

モンチュラ「ファイバー」&「クワイエットレボリューション+セルリアントヒート」

イタリアを拠点に立体裁断を追求した高機能ウエアを展開しているモンチュラでは、2016年の秋冬製品から自社開発の化繊中綿を採用。それまではプリマロフト社の中綿をメーンに使用していたが、ついに自社開発に踏み切った。

その背景をモンチュラの輸入代理店であるエアモンテ社の豊田崇氏は、「2005年以降の鳥インフルエンザなどで羽毛の価格が高騰したこと、ダウンの需要が爆発的に増えたことで食用からのダウン供給が追い付いていないこと」だと話す。そしてダウンに代わる素材として化繊綿に着目し、自社開発によって誕生したのが「FIBRE(ファイバー)」と「QUIET REVOLUTION + Celliant Heat(クワイエットレボリューション+セルリアントヒート)」だ。

ファイバーは通気性があり、優れた保温性を持っているのが特徴。加えて「マイクロファイバーは特殊なシリコンで処理されているので衛生的であり、かつ非アレルゲン性素材なのも特徴です。グースダウンのようにソフトで心地良い感触があるのに、メンテナンスはダウンと違って洗濯機で簡単に洗えます」と豊田氏。

「クワイエットレボリューション+セルリアントヒートは、ポリエステルとポリプロピレンからなる中綿。"セルリアント"は特殊繊維を練り込んだポリエステルの呼び名で、熱に反応する鉱物を利用し、体熱を赤外線エネルギーにして取り込んだあと、再び体温調節に利用する機能を持っています。そのセルリアントに熱伝導率が最も低いポリプロピレンをブレンドして、ごく小さなエアポケットのネットワーク状の形状にすることで、保温・はっ水・速乾・防風・通気性に優れ、超軽量かつ極めてコンパクトに圧縮できるんです」(豊田氏)

モンチュラのウエアは、個人的にも着用したときのフィット感、着心地が抜群に良いと感じる。これは部分的に素材やパターンを細かく変えているからで、そういった手の込んだ作業が可能な要因として、委託生産ではなく自社工場を持って生産過程を厳しく管理していることが挙げられる。

「中綿を使用した製品に関しては、肩や脇、身ごろなど部位によって、封入する量や素材を少しずつ変えています。自社の意思のもとで中綿を開発しコントロールすることは、モンチュラのウエアである以上、必要不可欠な要素です」と豊田氏。部分的に素材を変えればその分手間は増え、縫製も複雑になる。モンチュラはその手間を惜しまず、クオリティーの高い製品づくりに力を注いでいる。

ぬれてもかさ高を失わない構造が温かさの秘密

ザ・ノース・フェイス「サーモボール」

ザ・ノース・フェイスでは、2011年より「Thermoball(サーモボール)」という名前のポリエステル100%の化繊綿を開発し、製品化をスタート。ダウンの弱点であった水ぬれによるかさ高の減少(=保温力の低下)をカバーし、ダウンのようなソフトな感触を実現した画期的な素材だ。

「アウトドアフィールドでは水ぬれは避けられません。雨や雪など外からの浸入と、汗による内部のぬれ。このぬれによる冷えは時に命に関わるリスクとなります」と話すのは、ザ・ノース・フェイス プレスルームの永山貴博氏。ダウンは軽量で保温力に長けるが水ぬれにはとても弱く、全天候に対応できるわけではない。そこでダウンに代わって活躍するのが化繊綿なのだが、「水ぬれに強い化繊綿というとシート状の板綿しかなく、ダウンのようなかさ高を出すことができなかった」(永山氏)という。

そこで「ダウンのように膨らんで、化繊綿と同じ水ぬれに強い特性を持ったインサレーション」が必要だと考えた同社が開発したのが「サーモボール」だ。

水を含むとかさ高が約3分の1になってしまうダウンに対し、サーモボールははっ水性に優れ、ほとんどかさ高が変化しないので空気層がつぶれることなく、保温性をキープできる。まさに望み通りの化繊綿だ。

サーモボールの発表から早6年がたち、サーモボールとはまた違う性能をもつオリジナルの化繊綿がこの春に新登場すると永山氏。筆者はひと足先に展示会でその"正体"を目の当たりにしてきたが、実に興味深く目からウロコ。正式な発表が待ち遠しい!

(ライター 山畑理絵)

[日経トレンディネット 2017年2月16日付の記事を再構成]

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