『ラ・ラ・ランド』監督が語る 共感を呼ぶ3つの理由

昔のミュージカル映画をオマージュ

ミア役のエマ・ストーン

一方、歌やダンスによる華やかなミュージカルらしい場面は、チャゼル監督が影響を受けた名作ミュージカル映画のオマージュがちりばめられている。「無意識のうちに、いろんな映画のオマージュが含まれていると思うよ。たくさんの映画を研究して、さまざまな映画の思い出の中を泳ぎながら、本作を作っていたようなところがあるからね」と会見でも語った。

昔の映画の雰囲気を出すために、通常より横長画面のワイドスコープ、鮮やかな色合いのテクニカラーを再現。フレンチ・ミュージカルの名作『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』をはじめ、『雨に唄えば』『バンド・ワゴン』『巴里のアメリカ人』といった1950年代のMGMミュージカル、主役2人のダンスシーンではフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの『スイング・タイム<有頂天時代>』、さらにフランシス・フォード・コッポラ監督が全編セットで撮った『ワン・フロム・ザ・ハート』、マーティン・スコセッシ監督がサックス奏者と歌手の恋を描いた『ニューヨーク・ニューヨーク』などを連想させる場面が次々と出てくる。

今年32歳のチャゼル監督は、名門音楽学校に通うジャズのドラマーと彼を指導する鬼教師の関係を描く『セッション』(14年)で脚光を浴びた新鋭。高校時代は自身もジャズドラマーで、昔のミュージカル映画が大好きだったという彼にとって、本作はようやく製作にこぎつけた念願の企画だった。

「昔のミュージカル映画から色彩や音楽の使い方、セットと衣装と物語を完全にひとつのものとして描く手法といった、映画の世界だけができることを学んだ」という思いがあふれ出すような「映画愛」。それが観客の心をつかんだ2つ目の理由だ。

『レ・ミゼラブル』や『オペラ座の怪人』『シカゴ』といった近年話題になったミュージカル映画は、いずれもブロードウェイでヒットした舞台の映画化。それに対して、本作は映画オリジナルである点が高く評価されている。

圧巻のエンディングシーンの意味

公開中、配給:ギャガ/ポニーキャニオン

そして、観客の共感を呼んだ3つ目の理由が「テーマの現代性」だ。ライアン・ゴズリングは、「監督と一番話し合ったのは、この映画をいかに現代的にするか。今の人たちに共感できるものにするかということだった。キャラクターも同じで、あまり演劇的にしないで、見ている人が気持ちを分かち合えるような人物にしたいと思った」と言う。

クラシカルなムードで、ジャズや多彩な音楽が鳴り響くなかロマンチックな恋物語が繰り広げられる。しかし、この映画が投げかけるのは、「夢と現実の折り合いをどうつけて生きていくのか」という、きわめて現代的でシビアな問いだ。

本作に影響を与えたとされる『シェルブールの雨傘』で若き恋人たちを引き裂いたのは、戦争という運命だった。だが『ラ・ラ・ランド』では、恋人たちの運命を決めるのは自分自身だ。今の時代を生きる誰もが抱える「自分探し」の物語なのだ。それに対してチャゼル監督は、「究極のテーマは、夢を追いかけるということだよ。星に向かって手を伸ばし続けるのは、それ自体が美しいことなんだ」と答えている。

そんなチャゼル監督の思いが集約されたともいえるのが、圧巻のエンディングシーン。エマ・ストーンも、最後の10分間が大のお気に入りだ。「とにかく美しくて、心を打たれるの。見る人によって、いろいろな受け取り方ができるシーンだしね」と語っているように、観客のそれぞれが違った感想を抱くだろう。見終わった後は、誰かとこの映画について語り合いたくなるに違いない。そんな拡散力が、『ラ・ラ・ランド』の評判を広げた。

ライアン・ゴズリングは「最初から監督と話し合っていたのは、映画は映画館で大勢の人たちと一緒に見るものだ。そういう映画を作りたい。やはりスマートフォン(スマホ)で見るもんじゃないよね、ということだった。公開されたら、実際に多くの人が映画館に足を運んでくれて、同じ体験をする素晴らしさを分かち合ってくれた。それが何よりもうれしいよ」と語った。

彼の言葉通り、『ラ・ラ・ランド』は多くの人に愛されている。昨年12月から公開された米国での興行収入は1億4100万ドル(2月26日時点)を超え、『シカゴ』の記録(1億7070万ドル)を抜いて、ミュージカル映画史上で最大のヒット作になるのは時間の問題。2月24日から公開された日本でも、どこまでヒットするか、業界の関心の的だ。

(日経エンタテインメント!小川仁志)

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