日産社長交代 なぜゴーン氏は会見を開かない?

カリスマ経営者と呼ばれた日産自動車のカルロス・ゴーン氏が社長から退任する。同社は23日、4月1日付でゴーン社長兼最高経営責任者(CEO、62)が社長を退き、代表権のある会長に就任すると発表した。西川広人共同CEOが社長兼CEO(63)に就く。仏ルノーの出資にともない、1999年に経営難の日産の最高執行責任者(COO)になって短期間で同社を再建。三菱自動車にも34%を出資し、グループ傘下におさめた。日産にとって実に17年ぶりの社長交代。だが不可思議なことにゴーン氏は社長交代会見を開く意志がないという、なぜなのか。

朝一番で発表

ゴーン氏の社長退任――。23日朝8時、自動車業界で衝撃のニュースが流れた。通常、日本の上場会社は午前中に取締役会を開き、午後に発表するのが一般的だが、日産は22日午後に取締役会を開催、そこに9人の取締役が集まり、今回の人事を決めたという。

さらに異例なのが日産側の対応。通常の会社なら発表当日に社長交代の記者会見を設定するのだが、日産グローバル企業広報部は「会見の予定はありません」という。ゴーン氏は日本とルノー本社のあるフランスなど海外を行ったり来たりしているが、23日は横浜市の本社にいるという、むろん「体調にも問題ない」(広報部)。ではなぜ社長交代会見に臨まないのか。

日産社内からは「日産はメキシコ生産の比重が高い。対トランプ戦略でメディアに対してナーバスになっている」などの声も聞かれるが、これは本論とは外れている。

早稲田大学ビジネススクールの池上重輔准教授は「ゴーン氏は会見をする必然性がないと判断したからでは」と話す。池上准教授はこれまで8回ほど、ゴーン氏にインタビューし、素顔も知る数少ないグローバル経営の研究者だ。確かに日産幹部も「グループのトップはゴーン氏で変わらないから、会見をやる必要性もない」という。では今回の日産の社長人事はどのような意味があるのか。

グループ3社で日産が最も安定

グループ3社のなかで一番不安定なのが三菱自動車。社長交代はその再生にコミットするためか?

池上准教授は「グループの主要会社に日産とルノーに三菱自動車が加わった。さすがのゴーン氏も3社の経営をみるのは大変だ。3社のなかで最も安定していて任せられやすいのが日産。一番不安定なのが三菱自動車だ。特に三菱の再生にコミットする上でも日産は西川さんに任せたかったのではないか」という。ルノーも仏オランド政権とは微妙な関係で、経営も日産と比べて安定しているとはいえない。

西川共同CEOはもともと購買部門の出身。「日産とルノーで最もシナジー効果が高めたのが購買部門。すでに日産ナンバー2で最も信頼できる人物と判断したのだろう」(池上准教授)。ただ、西川氏はゴーン氏よりも年上だ。グループ全体の後継者として西川氏を考えているかは分からない。

ただ、今回の日産の社長人事について、池上准教授は「ゴーン氏がグループを禅譲してゆくプロセスの1つであることは間違いない」と指摘する。グループの新車販売台数はトヨタ自動車やフォルクスワーゲン(VW)、ゼネラル・モーターズ(GM)の3グループに匹敵し、1000万台規模になってはきた。しかし、収益力などで世界トップの実力をつけているとは言い難い。今回の日産の社長人事は、ゴーン氏が最後の高みを目指す上でのプロセスといえるかもしれない。

(代慶達也)

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