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post 2020~次世代の挑戦者たち

「老い」を学べば、企業は成長できる 老年学に技あり シニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏に聞く(5)

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司

2017/3/1

シニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏

世界最速で高齢化が進む日本は2020年東京五輪・パラリンピック後の「post2020」時代に低成長時代を迎える。ただ、「老い」を学び、シニア市場を開拓すれば、企業が成長できる余地はある。老年学の研究者でもあるシニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏にシニア向け商品の開発やサービス改善のノウハウを語ってもらった。(聞き手は公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司)

藤田 シニアマーケットコンサルタントは具体的にシニア市場を分析するために、どんなことをするのですか。

堀内 顧客企業からの依頼を受けて消費者調査をした後、その内容を分析し、商品開発や接客、陳列などに関する提案をするケースが多いですね。調査は消費者の傾向や数値を分析する「定量調査」、その傾向や数値の背景にある実態を個別に深掘りする「定性調査」の2つがあります。私は特に定性調査を大切にしています。定量調査で一定の傾向をつかむことはできますが、定性調査は数字では語れない生の消費者の声が聞けるため、シニアの具体的なニーズ(需要)や商品開発などのシーズ(種)を把握することにつながります。

藤田 消費者の本音を聞き出す定性調査にはコツがありそうですね。

堀内 定性調査は1対1で対面する「デプスインタビュー」と集団による「グループインタビュー」を多く用います。デプスインタビューは消費者から調査対象の商品やサービスに関する生の声を引き出し、その消費者の生活背景なども把握しながら、商品やサービスの課題を解き明かしていきます。ひと言ふた言だけで話が終わりになるのか、さらに深いところまで話を聞き出せるのか。そこが腕の見せどころです。

藤田 グループインタビューには、どんなノウハウがありますか。

堀内 ある商品について「ここを改善してほしい」と一人から発言があると、別の人が「そうそう、分かる。それならば、この点も直してほしいよね」と反応することがあります。一人の発言が他の人の意見を引き出すきっかけになるのです。こうしたグループインタビューの効果を「グループダイナミクス」と呼びます。発言を深堀りする役割のモデレーターはグループダイナミクスを引き出し、さらに深い意見が出るようにインタビューを進行させます。深い意見を聞き出せれば、それがヒット商品の開発に結びつくこともあります。

藤田 じっくりとシニアの声に耳を傾けたうえで、どんなコンサルティングを実践してきましたか。

加齢に伴う下肢の衰えなどの「エイジングイベント」からシニアの需要を掘り起こす

堀内 例えば、イオンにシニア向け商品のコンサルティングをしたことがあります。シニア向け商品の担当者は病気や介護について勉強したうえで商品開発をしていましたが、正常な老化に関する勉強は不十分な様子でした。そこで正常老化への理解を深めてもらうために「エイジングイベント」の概念から説明していったのです。

藤田 どんな概念なのでしょうか。

堀内 これはビデオリサーチとの共同研究に基づいて私たちが名付けた概念です。誰にでも訪れる正常老化によって、老眼、白髪、薄毛、難聴、下肢の衰え、頻尿、体形の変化などの症状が生じます。こういった症状の発生をエイジングイベントと呼びます。老眼になったら老眼鏡を買います。薄毛になったら、かつらや育毛剤を購入します。このようにエイジングイベントが生じることによって、それを補うための需要も増えていきます。

藤田 エイジングイベントの概念を踏まえて、イオンにどんな提案をしたのですか。

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