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「苦しいときは話すことが大切」のウソ ウィンチ氏

「NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法」著者インタビュー(2)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス
様々な分野の第一線で活躍する登壇者が、そのアイデアを世界に広める「TEDトーク(TED Talks)」において、「感情にも応急手当が必要」と題したプレゼンテーションが430万回以上再生されているのが、心理学者、ガイ・ウィンチさん。来日したガイさんに、私たちが忘れがちな"心の傷"の手当ての大切さ、悩み多き現代人が自らを癒やすヒントについて聞いた(第1回は「なぜ心の傷に応急手当てが必要か ガイ・ウィンチ氏」)。

嫌な出来事を延々とリピートすると心の傷が悪化する

ガイ・ウィンチさんは、現在、ニューヨークのマンハッタンで開業し、20年以上にわたって心理療法を実践する心理学者だ。

彼は著書「NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法(原題:EMOTIONAL FIRST AID)」の中で、「私たちは、体の不調はうまく手当てができるのに、どうして心の不調になるとお手上げになってしまうのか」と問いかける。そしてその答えは「私たちは心の手当てを学んでこなかったからだ」と言う。

著書では、合計7つの「心の傷」を取り上げ、それぞれの傷の症状、特徴、そしてすぐに実践できる気持ちの切り替え方などの「手当ての方法」を解説している。

〈ガイさんが著書で取り上げている7つの心の傷〉

1「自分を受け入れてもらえなかったとき」――失恋、いじめ、拒絶体験

2「誰ともつながっていないと感じるとき」――孤独

3「大切なものを失ったとき」――喪失、トラウマ

4「自分が許せなくなったとき」――罪悪感

5「悩みが頭から離れないとき」――とらわれ、抑うつ的反芻(はんすう)

6「何もうまくいかないとき」――失敗、挫折

7「自分が嫌いになったとき」――自信のなさ、自己肯定感の低下

――ここからは、心の傷の症状と手当ての方法について、さらに具体的に伺いたいと思います。風邪をこじらせるように、心の傷のダメージをこじらせる原因として、「悩みが頭から離れないとき」で解説されていた「思考のループ」は、とてもありがちなケースだと感じました。嫌な出来事や悩み事があると、意識していないのに何度も繰り返し思い出してしまうことがあります。もう思い出さないようにしよう、と思えば思うほど、こだわる自分が嫌になったりします。

「その通りです。もっとも厄介で、そして多くの人が陥りがちなのが、この思考のループです。心理学用語では『反芻』(英語でruminate)といいます。

反芻とは、直訳すれば、何度もかみ続けること。上司に怒鳴られた、誰かに嫌みを言われた、そういった場面を、何かをかみ続けるように、頭の中で繰り返してしまうのです。ときには、数週間にもわたって思い返すことがあります。思い返すことで新たな考えが得られればよいのですが、たいていは嫌な気持ちを追体験し、ますます頭から離れなくなります」

――反芻は、心の傷の治りを悪くしそうですね。

「嫌な出来事を思い出すたび、かさぶたを無理やり剥がしているようなものですから、当然、傷はどんどん悪化します。困ったことに、楽しかった場面が頭の中で勝手にリピートされることはまれ。上司に叱られた経験が頭から離れないことはあっても、褒められた経験が頭から離れないことはまずないでしょう(笑)。

ともかく、簡単にクセになり、しかもその代償が大きいのが反芻です。反芻は、最近の研究によって『心身にさまざまな害をもたらす』ことが明らかになっています。

うつ病、アルコール依存症、摂食障害の危険が増し、精神的、肉体的なストレス反応が増加することによって心血管疾患リスクが高まることも分かっているのです」

「話すこと」は必ずしも安全な"手当て"ではない

――嫌な出来事を何度もリフレインする「反芻」は、突然死にもつながるのですね。そこまで厄介な心の傷だと分かっているのに、どうして私たちは何も対処できていないのでしょうか。心理学では、なにか解明されているのでしょうか。

「実は、解決の方法はなかなか解明されてこなかったのです。なぜなら、根本的なアプローチが間違っていたからです」

――えっ、どういうことですか?

「『苦しいときは話すことが大切』と多くの人は思うはずです。心理療法でもこれまで、『話す』ことがなによりの治療になると考えてきました。実際にカウンセリングでもよく、『頭から離れない出来事をもう一度話してみてください』と言われることが多いはずです。もちろん、話すことが実際に治療になる場合もあるのですが、やり方を間違えると、かさぶたを剥がすような結果になることがあります。忘れたいのにまた辛いことを思い出さねばならず、これが思考のループをむしろ強めてしまうのです。

最近の研究でも、抑うつの傾向がある学生を2グループに分け、一方には認知療法のワークブック(自分の気持ちや考えを明確に認識する)、もう一方には勉強の課題をやってもらった実験があります[注1]

その結果はどうなったと思いますか?

その直後と4カ月後に気分の状態を測定したところ、思考のループを起こしやすい人は、認知療法のワークブックをやったときのほうが抑うつが悪化することが分かったのです。この実験から分かるのは、たとえネガティブな考えを修正するためであっても、嫌な気分や考えを思い出させることは危険をはらんでいるということです」

[注1]Behaviour Research and Therapy. 2010;48(2):152-157

――なるほど、一筋縄ではいかないのが「思考のループ=反芻」なのですね。ガイさんは、このような感情に悩んでいる人にどのようなアドバイスをしていらっしゃるのですか?

「いろいろな手当ての方法がありますが、なかでも思考のループの影響力を弱める方法として『視点を変える』というやり方をお勧めしています。

嫌なことを考えるとき、通常は『自分視点』でものを見ています。自分の目で見たままの光景を見て、自分が感じたことをありありと追体験する。すると、実際にそれが起こったときのように感情が高ぶってしまいます。

そんなときにやってみてほしいのが『他者視点』というやり方です

◇   ◇   ◇   ◇

〈他者視点〉のエクササイズ

1. 静かな環境で、楽な姿勢で座るか、横になる

2. 目を閉じて、嫌な出来事の最初のシーンを思い浮かべる

3. 視点を後ろに引いていき、視界の中に自分の姿が入ってくるところまでズームアウトする

4. さらにズームアウトして、遠くのほうから自分を眺めている感じにする

5. そこで視点を固定し、距離を保ったままで起こった出来事をリプレイする。通りすがりの他人になったつもりでそれを眺める

6. 嫌な出来事を思い出したときは、つねにこの他者視点に切り替えるようにする

◇   ◇   ◇   ◇

この『他者視点』は、嫌な出来事を、その相手と自分を含めて距離を置いて『絵』のようにして眺めるのがポイントです。どうしてでしょうか」

「物理的な距離を置くと、感情的にも距離を置くことができるのです。カメラのズームアウト機能を使うようなイメージで、出来事からどんどん、距離を離してみてください。

嫌なことを思い返すとき、同時に、肩がかちかちに固まったり、おなかが痛くなったりすることがあるかもしれません。そんなときにもこの他者視点を用いると、ちょうど首から下の部分がすーっと落ち着く感じがします。

私たちは、例えば目の前に怒鳴っている上司がいるとすると、それを映画の全画面で見ているような感覚に陥ってしまいます。しかし、ズームアウトして、距離を置くと、同時に心も落ち着くのです。

他者視点を使うと、嫌なことを思い出すときの血圧の上昇が抑えられることが分かっています。また、その実験から1週間経過した時点でも、思考のループ傾向が明らかに減り、思い出したときの心理的苦痛もかなり軽くなる、つまり『つらい記憶を薄める』働きが得られることが分かっています[注2]

[注2]Pers Soc Psychol Bull. 2008;34:924-938.

――ちょっと練習が必要そうですね。行うときの、コツはありますか?

「集中することが必要です。一人きりになれる場所、静かな環境で、できれば部屋も暗くして行うと、集中しやすくなります。何回か行うと、心が落ち着いてきます。例えば5分間行って、5分前と比べて気持ちがどうなったかな?と感じてみるのもよいでしょう。

重要なのは、急がないこと。スナップショットではなく、映画館で映画を眺めているような感覚で、ゆっくりとイメージしましょう。カウンセリングの場でこのエクササイズを説明すると、その場で2秒ほど行って『はい、やりました』という人がいますが、それではやったことにはなりません(笑)。

職場ではなかなか難しいと思いますが、例えばトイレの空間ならば静かに集中できるかもしれませんね」

――「ただ話すことだけで思考のループが解決するわけではない」ということが心理学で分かってきたこと、それを解決する一つの方法が「他者視点」で物事をとらえなおしてみる、ということがよく分かりました。

「自動再生するように、出来事を反芻し続けるのは良くないですが、自分の心を見つめ直す『内省』は有益です。有害な繰り返しをやめ、有益な内省に変えることで、ネガティブな思考のループから抜け出しやすくなるのです。この手当ての方法をぜひ覚えてください」

次回は、7つの感情のなかでもよく起こりがちな「失敗・挫折」したときの手当ての仕方について聞いていく。

ガイ・ウィンチ(Guy Winch, Ph.D.)さん
 心理学者。ニューヨーク大学で臨床心理学の博士号を取得後、セラピストとしてニューヨーク大学メディカルセンターに勤務。その後、マンハッタンで開業し、20年以上にわたって心理療法を実践している。講演家としても定評があり、TEDトーク「感情にも応急手当が必要な理由」は430万回以上(2017年2月時点)視聴され、「2015年で最も人気のトーク」にランクインした。「ハフィントン・ポスト」や心理学誌「サイコロジー・トゥデイ」にブログを寄稿。他の著書に「The Squeaky Wheel」(未邦訳)がある。

(ライター 柳本操)

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