「苦しいときは話すことが大切」のウソ ウィンチ氏「NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法」著者インタビュー(2)

日経Gooday

「『苦しいときは話すことが大切』と多くの人は思うはずです。心理療法でもこれまで、『話す』ことがなによりの治療になると考えてきました。実際にカウンセリングでもよく、『頭から離れない出来事をもう一度話してみてください』と言われることが多いはずです。もちろん、話すことが実際に治療になる場合もあるのですが、やり方を間違えると、かさぶたを剥がすような結果になることがあります。忘れたいのにまた辛いことを思い出さねばならず、これが思考のループをむしろ強めてしまうのです。

最近の研究でも、抑うつの傾向がある学生を2グループに分け、一方には認知療法のワークブック(自分の気持ちや考えを明確に認識する)、もう一方には勉強の課題をやってもらった実験があります[注1]

その結果はどうなったと思いますか?

その直後と4カ月後に気分の状態を測定したところ、思考のループを起こしやすい人は、認知療法のワークブックをやったときのほうが抑うつが悪化することが分かったのです。この実験から分かるのは、たとえネガティブな考えを修正するためであっても、嫌な気分や考えを思い出させることは危険をはらんでいるということです」

[注1]Behaviour Research and Therapy. 2010;48(2):152-157

――なるほど、一筋縄ではいかないのが「思考のループ=反芻」なのですね。ガイさんは、このような感情に悩んでいる人にどのようなアドバイスをしていらっしゃるのですか?

「物理的な距離を置くと、感情的にも距離を置けます」

「いろいろな手当ての方法がありますが、なかでも思考のループの影響力を弱める方法として『視点を変える』というやり方をお勧めしています。

嫌なことを考えるとき、通常は『自分視点』でものを見ています。自分の目で見たままの光景を見て、自分が感じたことをありありと追体験する。すると、実際にそれが起こったときのように感情が高ぶってしまいます。

そんなときにやってみてほしいのが『他者視点』というやり方です

◇   ◇   ◇   ◇

〈他者視点〉のエクササイズ

1. 静かな環境で、楽な姿勢で座るか、横になる

2. 目を閉じて、嫌な出来事の最初のシーンを思い浮かべる

3. 視点を後ろに引いていき、視界の中に自分の姿が入ってくるところまでズームアウトする

4. さらにズームアウトして、遠くのほうから自分を眺めている感じにする

5. そこで視点を固定し、距離を保ったままで起こった出来事をリプレイする。通りすがりの他人になったつもりでそれを眺める

6. 嫌な出来事を思い出したときは、つねにこの他者視点に切り替えるようにする

◇   ◇   ◇   ◇

この『他者視点』は、嫌な出来事を、その相手と自分を含めて距離を置いて『絵』のようにして眺めるのがポイントです。どうしてでしょうか」

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