発想ツール集めた『アイデア大全』 アキバで注目有隣堂ヨドバシAKIBA店

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している店を離れて秋葉原を訪れた。駅前に構える家電量販店を核にした大型商業施設7階にある有隣堂ヨドバシAKIBA店だ。サブカルチャーの発信地として名高いが、昔ながらの電気街の面持ちも健在、大型のオフィスビルも増え、IT(情報技術)系をはじめ様々な企業が立地する。ベストセラーを聞くと、スキル系の本が上位に並び、アキバらしさを体現していた。

新しい考えを生み出す道具箱

上位に並ぶスキル系の本の中で、書店員が注目するのが読書猿『アイデア大全』(フォレスト出版)。「〈新しい考え〉を生み出す方法を集めた道具箱」を標榜する。変わった著者名だが、奥付にある著者紹介によれば「正体不明、博覧強記の読書家」。メルマガやブログで古典から新刊まで様々な本を紹介し、本好きの間ではよく知られた存在だ。その豊富な読書量をもとに古今東西の広範な分野から新しい考えを生み出す方法を採集、42のツールにまとめ上げてみせた。発明王エジソンのノートから数学者ポアンカレの手法、トヨタ自動車のカイゼンを生み出した大野耐一のメソッドからシュールレアリストの奇想創出法や夢見まで、様々なノウハウが集められている。

全体は「0から1へ」と「1から複数へ」の2部構成。1部では「自分に尋ねる」「偶然を読む」「問題を察知する」「問題を分析する」「仮定を疑う」の5章で、19のツールを扱い、2部では「視点を変える」「組み合わせる」「矛盾から考える」「アナロジーで考える」「パラフレーズする」「待ち受ける」の6つの章で23のツールを紹介する。その紹介の仕方は、まずどんなやり方かを示す「レシピ」があり、そのツールが使われて生まれたアイデアの実例が「サンプル」で示され、「レビュー」で解説するという構成。まさに機能的な実用書のつくりでわかりやすく、考えあぐねたときに試してみたくなる。

実用書+人文書の魅力

それでいて、単にノウハウを並べて示すことにとどまらず「その底にある心理プロセスや、方法が生まれてきた歴史あるいは思想的背景にまで踏み込んでいる」のが大きな特徴だ。著者が「実用書であると同時に人文書である」と宣言するのもうなずける。

もうひとつの特徴が42のツール相互の類似性や関係性にも言及していること。創造力をめぐっての見取り図としてもおもしろい。巻末にある紀元前から現在までをたどった「アイデア史年表」もその理解を助ける。1月下旬に刊行され、初めから反応がよかった。現在はスキル系の書棚前の平台中心に並べているが、「もう少し大きく展開して売っていこうと考えているところ」とビジネス書などを担当する宮武美由紀さんは話す。

株関連とスキル系が上位に

それでは先週のベスト5を見ていこう。

(1)1万円を1年で100万円に! はじめての人の「株式」投資生活JACK著(ぱる出版)
(2)まんがでわかる 伝え方が9割佐々木圭一著(ダイヤモンド社)
(3)アイデア大全読書猿著(フォレスト出版)
(4)いま仕込んでおくべき10倍株、教えます!朝香友博著(インプレス)
(5)MBA100の基本グロービス著(東洋経済新報社)

(有隣堂ヨドバシAKIBA店、2017年2月12日~2月18日)

1位と4位に株式投資の本が入った。株関連の本が上位に来るのは珍しいそうだ。東芝の決算延期問題や著名コピーライター、糸井重里氏が代表取締役を務める「ほぼ日」の新規株式公開(IPO)承認など、市場がらみの話題が多かったためか。2位に『まんがでわかる 伝え方が9割』、3位に冒頭で触れた『アイデア大全』、5位にも経営学修士(MBA)関連本が続き、「ビジネス書ではスキル系の本が売れ筋」(宮武さん)という店の特徴を映す。工学書に分類されるプログラミングの本やAI(人工知能)関連の本などをビジネス書の平台に並べると、思いのほか売れるといった傾向もあるそうだ。

(水柿武志)

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