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聖徳太子は実在したか 奈良・斑鳩を訪ね、ナゾに迫る

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「聖徳太子」が消える――。文部科学省は歴史の教科書で聖徳太子が後世に付けられた呼称だとして「厩戸(うまやど)王」に改めることを決めた。古代史上の偉人として誰もが知っていながら、その実像はさまざまなナゾに包まれてきた聖徳太子。激動の7世紀前半に推古女帝の皇太子・摂政として十七条憲法や遣隋使、仏教興隆などを手がけたのは本当は誰だったのか。その真の姿を探しに太子一族興亡の地、奈良・斑鳩(いかるが)を訪ねた。

法隆寺は呪いの寺?

聖徳太子が創建し世界最古の木造建築物でもある法隆寺。一歩境内に入れば視界に入るものの多くが国宝だ。なかでも「大宝蔵院」には百済観音像や夢違観音像、玉虫厨子(ずし)など超A級の国宝群がそろい踏みしている。しかし法隆寺をもっと知るためには、この碩学(せきがく)の言葉に耳を傾けねばならない。「隠された十字架」(1972年初版、新潮社)の著者、哲学者の梅原猛・国際日本文化研究センター顧問である。梅原氏は法隆寺を「怨霊となった聖徳太子を鎮魂するための寺」と説く。法隆寺は呪いの寺だというのだ。

聖徳太子は605年、都のあった飛鳥から斑鳩に移り住み斑鳩宮と斑鳩寺(後の法隆寺)を建設した。しかし早くも643年、長男の山背大兄王子が蘇我氏との政争に破れ一族は全滅してしまう。偉大、荘厳なイメージとは裏腹に悲劇の一族であり、斑鳩は血塗られた地でもあるわけだ。その後の流行病のまんえんなどは聖徳太子のたたりと考えられ、時の権力者である藤原氏が鎮魂のための場所としたのが現在の法隆寺という。

中門、金堂、回廊――。梅原氏によれば約18万7000平方メートルと広大な法隆寺のそこかしこに太子一族の「死」のイメージが隠されている。有名な五重塔にしても「法隆寺資財帳」の公式記録の高さと実際の高さとでは大きく食い違うなどの怪しいナゾがある。決定的なのは夢殿の「救世観音菩薩(ぼさつ)」だ。聖徳太子の等身仏として長い間秘仏とされ続け、明治期に初めて出されたときは白布でグルグル巻きだったという。梅原氏は救世観音の光背が後頭部にくぎで打ち付けられていることや仏像の中が空洞になっていることに注目。聖徳太子の怨霊を封じ込めるためのものと結論した。「仏像の頭にくぎなど通常では考えられない」(梅原氏)。

梅原氏「古代の人々が憑依してくる」質

 敬われるべき法隆寺に対し梅原氏はどうしてこんな大胆な発想が可能だったのか。若い頃から何度となく法隆寺を訪れたがその度にナゾが深まっていたという。しかしある史料で山背大兄王子を襲撃した将軍がのちに法隆寺に寄進していたことを確認。梅原氏は「補助線を一本引くと幾何学の問題がすっと解決するように疑問が氷解した」と当時を振り返る。怨霊の存在とその鎮魂こそが日本思想の根本の一つと位置付ける。91歳の現在も意欲的に執筆活動を続けており「自分にはのり移られる性質がある。古代の人々が憑依(ひょうい)してくる」と笑いながらうそぶく。

梅原説にはもちろん否定的な見解も少なくない。相手が怨霊では遺跡発掘などでの証明しようもないからだ。しかし「隠された十字架」は哲学の専門家の難解な大作でありながら破格の大ベストセラーとなった。単行本は59刷、文庫版は56刷を数える。倉本一宏・国際日本文化研究センター教授は学生時代に初めて読み「その発想が色々なヒントを与えてくれた」としている。

法隆寺の「お会式」は聖徳太子の命日(旧暦2月22日)にちなんで3月22~24日に行われる。年2回の夢殿「救世観音」の開帳は次は4月11日から5月18日だ。

その夢殿に隣接しているのが「中宮寺」。聖徳太子の生母、穴穂部間人皇后の発願で建立されたという。日本で最も優美な仏像の一つである菩薩半跏(はんか)像が安置されている。中宮寺から斑鳩の田園風景を眺めながら、北へ約1キロメートル向かうと法輪寺にたどり着く。聖徳太子が病気にかかったときに山背大兄王子らが回復を祈って建築したなどという。さらに東へ約500メートル進むと法起寺の三重塔が見えてくる。現存するなかで最古の三重塔だ。聖徳太子が法華経を講義した岡本宮を寺に改めたのが起源としている。

法隆寺の西には金銅製の華麗な馬具が出土した「藤ノ木古墳」がある。埋葬者は聖徳太子が蘇我馬子大臣らとともに仏教受容を巡って対立、打倒した物部守屋側の2王子が有力だ。斑鳩の里は今も太子一族の気配で満ち満ちている。

その聖徳太子が実は架空の人物であったと「非実在論」を展開したのが1996年、大山誠一・中部大学教授(現・名誉教授)の論文「『聖徳太子』研究の再検討」だった。聖徳太子に関する確実な資料は皆無とした上で、「日本書紀」の編さん時に藤原不比等や長屋王、道慈の権力者らが理想的な天皇像を作り上げたというのが大山説だ。十七条憲法は中国古典の寄せ集めであり、聖徳太子が書いたという仏教の「三経義疏」は中国で内容が酷似した経典ものが出土していた。太子夫人が聖徳太子の死をしのんで作らせたという「天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)」の銘文には後世の中国の暦が使われている――。すべて贋作(がんさく)という見立てだ。大山教授の説く聖徳太子像は「都(飛鳥)から離れた場所である斑鳩に宮と寺を建てた、あまり有力ではない皇族」になる。

大山説 聖徳太子は架空の人物、否定論も

大山氏は「聖徳太子論に関しては学界にも定着し、今度の文科省の判断もそういう状況判断と察している」と自信を見せる。倉本教授も「聖徳太子の業績が後世に相当潤色されたものだと認識は研究者の間でもほとんど異論がない」とする。しかし全く捏造(ねつぞう)された架空の人物との考えには否定的だ。駒沢大学の石井公成・仏教学部教授も昨年「聖徳太子 実像と伝説の間」(春秋社)で大山説に全面的に反論した。コンピューターを使った仏典のデータベース分析で「三経義疏」は聖徳太子自身が書いた可能性もあるという。十七条憲法も漢文の誤用・奇用が多く仏教中心であるため、天皇を神とする律令体制確立以後ではなく基本は推古期のものだとした。また法隆寺の瓦は飛鳥寺、豊浦寺など巨大寺院の瓦と同じ型だという。「瓦ぶきの巨大寺院の建立は今で言えば最新の超大型原子力発電所を建設するようなもので、国家事業かそれに準じるレベルの勢力でないと建設は無理」(石井教授)。

倉本教授は一歩距離を置き、「蘇我氏 古代豪族の興亡」(中公新書)の中で7世紀の東アジア情勢から聖徳太子を解明しようとした。当時は中国の統一国家・隋が出現、朝鮮半島は高句麗・新羅・百済の3国が争っており、日本は準戦時体制を整えながら国際社会にデビューしようとしていた。遣隋使だけでなく冠位十二階や斑鳩移住なども全て対外政策が基本であり、新たな国際秩序に早く対応する狙いだったという。その中で活躍した皇族政治家が聖徳太子だった。「推古女帝が早くに亡くなれば確実に即位していただろう。ただ蘇我馬子大臣とは2世代分の年齢差があり政治力は到底及ばなかっただろう」とみる。

石井教授によれば太子のイメージは時代を反映して変わるという。戦国時代は「物部戦争」を勝利に導いた戦神、神道中心の江戸期の国学者には逆に悪人扱いされた。戦前は忠臣愛国の象徴で、戦後は一転して「和をもって貴しとなす」平和の代表となった。「隠された十字架」の時代は公害や「成長の限界」など高度経済成長のゆがみが取り上げられ、「非実在論」は「日本の失われた20年」の最中だ。中国や朝鮮半島での不透明感が増す今日、太子はどう語られていくのか。

(松本治人)

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