分配金が下がった投資信託、売却してもいい?

日経マネー

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株式投資ほどのリスクは取れないが、分散投資でリスクを下げつつ少しでも資産を殖やしたい。こんなニーズに応えた商品として、投資信託が人気を博している。ただ、一口に投信といっても中身は多種多様。自分に合った商品を見つけるには、どうすればいいのか。投信初心者の疑問をプロが分かりやすく解説する。

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Pさん(以下、P):海外REIT(不動産投資信託)の毎月分配型投信を持っているのですが、先頃、分配金が引き下げられました。売却しようと考えているのですが。

吉井さん(以下、吉):なぜ、売却しようと考えたのですか。

P:分配金が下がるということは、海外REIT市場の今後に魅力がないのかなと思いまして。

吉:分配金が下がった理由は、Pさんの投信がここ2年間ほど実力以上の分配を続け、基準価額が下がったからです。分配金は今後の見通しよりも、過去の運用実績や価格水準との関連が強いのです。

P:どういうことですか。

吉:海外REIT投信がこれまで高い分配金を払い出してきたのは、2012年から14年にかけて大きく値上がりし、その後を追い掛けた投資家の資金の流入もあって、分配原資が積み上がったからです。その原資があったから、この2年間はリターンが低調な中でも高分配を続けられたわけですが、ここにきて人気の海外REIT投信の基準価額は2000~3000円台まで下がりました。こうなると、いくら原資があっても高分配を続けることにちゅうちょします。

P:でも分配金が下がると、みんながその投信を売りませんか?

吉:確かにそういう行動を取る投資家は多いです。もしかしたら、Pさんは分配金が減った投信を売って、分配金がより高い投信に乗り換えようと考えているのですか。

P:はい。実は、そうなんです。

吉:それはあまり賢い判断とはいえません。全てではありませんが、分配金を追い掛けるような行動は高値づかみの安値売りになる恐れがあります。特に値動きが大きいREITや株、新興国債券の投信はその傾向が強いです。Pさんがその投信を買ったのはいつですか。

P:15年の11月頃です。以前持っていたブラジル債券投信の分配金が下がってしまって……。

吉:より高分配の海外REIT投信に乗り換えたわけですね。その後、ブラジル債券投信は3割以上値上がりしたのをご存じですか。

P:え、そうなんですか。海外REITは全然上がらなかったのに。

吉:分配金ばかり見ていると、過去の実績の後追いになります。分配金が下がったところで売ってしまうと、結果的に相場の底付近で売ることになり、そして乗り換えた先は相場が既に天井近かったということがよくあります。

P:どうすればいいでしょうか。

吉:まずは分配金が下がったからと慌てず、投資先の市場動向を冷静に見て判断しましょう。直近の海外REIT自体の分配金利回りは年4%程度で、他資産と比べても利回りが極端に低いということはありません。また、REITの価格と組み入れ不動産の価値を比較しても、過去の平均より割安な水準まで価格は下がっています。米国の金利上昇などが短期的には逆風になる可能性がありますが、長期的には魅力的な投資機会と考えてもいいのではないでしょうか。

P:目先の分配金にとらわれず、少し長い目で見ようということですかね。

吉井崇裕
イデア・ファンド・コンサルティング社長。ファンド・アナリストとして、国内約4000本の投資信託を常時分析する。

[日経マネー2017年4月号の記事を再構成]

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