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胎児に相続権は? DVの夫に親権? 弁護士さん教えて

日経DUAL

2017/3/23

日経DUAL

子育て世代に起こりやすいトラブルの実例とその対処法を、弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士に伺います。今回は、相続、親族、認知など親子関係・親族関係にまつわる問題です。親の死亡時の相続、離婚後の親権など身近な困り事に、弁護士さんが解決法をアドバイスしてくれました。

(写真:鈴木愛子、吉澤咲子)

■CASE1 夫の死亡後に生まれる子ども(胎児)には、義父の相続権はないのか?

Q. 夫が半年前に亡くなり、義父が追うように先日亡くなりました。義母は既に亡くなっており、夫には兄が一人います。そして私のお腹には夫との子どもがいます。私は一人でこの子を育てて行くのですが、この子(胎児)には義父の相続権はないのでしょうか?

A. 民法においては、被相続人(亡くなった人)の子どもが相続の開始(被相続人が死亡したとき)以前に死亡したときには、その者の直系卑属(子どもなど)がこれを代襲して相続人となるものと定めています。つまり、亡くなった人の子どもが、亡くなった親と同時、あるいは親よりも先に死亡した場合に、その子どもの子ども、すなわち被相続人の孫が、親に代わって祖父母の相続人となると定めているのです。

孫の立場からすれば、父親が生きていればまず父親が祖父の遺産を相続し、それを自分も継承できたという期待がありますから、代襲相続はその期待を保護する制度であると言えます。

人は、出生して初めて権利能力(法律上の権利義務の主体となることができる資格)を有するので、まだ出生していない胎児には、権利能力が認められないことになりそうです。しかし、相続人が死亡した時点で既に妊娠しており、やがて生まれてくることが予想される胎児を、権利能力がないからといって相続から除外してしまうことには違和感があるでしょう。

そこで、民法は相続について、胎児は既に生まれたものとみなすと定めています。そして、この「既に生まれたものとみなす」との規定の意味については、胎児の間は相続の能力はないけれども、胎児が生きて生まれたときには、相続開始時まで遡って相続したものと認める、というものです。つまり、胎児が胎児として相続人となるわけではなく、胎児が生きて生まれた場合に、遡って相続人だったことにすると いうことです。ちなみに、この規定は、胎児が生きて生まれたときにだけ適用があるので、死産のときには初めから胎児がいなかったのと同様に扱われます。

少しややこしくなってきましたね。つまり、被相続人が亡くなったときにまだ胎児であった子も相続人となる場合がある、とご理解いただければいいと思います。

(写真:鈴木愛子、吉澤咲子)

■CASE2 私がもし死んだら、子どもはDV癖のある元夫に引き取られてしまうのか?

Q. 私は、5年前に協議離婚したシングルマザーです。子どもはまだ小学生です。今のところ、私が親権者となり親一人子一人何とか生活をしているのですが、いつ何があるか分かりません。もし私が突然死んだりした場合、子どもは元夫のところに引き取られてしまうのでしょうか?元夫はDV癖があるので、子どもが心配です。何か方法はないのでしょうか?

A. ご両親が協議にて離婚されるときは、その協議にて、一方を親権者と定める必要があります(民法819条1項)。今回は、ご相談者様がお子さんの親権者となったということですね。

まずは、親権者の点から考えてみます。

法律上、ご相談者様が仮に亡くなった場合であっても、自動的に元夫に親権者が移るというシステムにはなっていません。一度決められた親権者を変えるには、元夫は、「親権者変更の審判」というものを家庭裁判所に申し立てる必要があります。

では、家庭裁判所はどのような基準にて親権者変更を考えるのでしょうか。法律上は、「子の利益のため必要があると認めるとき」とされているのみで、特に具体的に定められているわけではありません(民法819条6項)。つまり裁判所の裁量に任されているのです。

親権者が誰になるのかは、子どもの生活に直結する話ですので、とても大切なことです。裁量があるとはいえ、変更を希望する事情、経済力や家庭環境のほか、子どもの年齢や性別、就学の有無などが考慮されています。養育費を決めている場合にはそれをきちんと支払っていたのか、なども考慮されます。

今回は、元夫にDV癖があったということで、親権者を元夫に変更することは子どもに危害が加えられるかもしれない恐れがあります。一見、親権者の変更は認められないようにも見えます。しかし元夫が起こした親権者変更の審判の中で元夫のDV癖が明るみに出るかどうかは不明なところがあります。調査されることもありますが、果たして明るみに出るのか……。

となると、ご自身の身に何かが起きたときに備えて何か対策をすべきです。その対策として、ご相談者様が今から遺言を作成するという方法があります。遺言において、自分の死亡後に子どもの未成年後見人になる人を指定するのです(民法839条1項)。未成年後見人とは、未成年者のために財産を管理したり、契約を結んだりする人のことです。親権者と同様の立場の人と考えてしまってもいいかもしれません。

今のうちからもう遺言を作るのか、と違和感をお持ちになるかもしれません。しかし、お子さんの将来を考えるならば、できることは今から進めておくべきでしょう。

■CASE3 婚姻しないまま出産、父親との親子関係を生じさせるには

Q. 今、選択的シングルマザーという言葉があります。選択的シングルマザーとは、自らの意思にて婚姻しないまま子どもを出産し、一人で子育てをしている女性を意味します。この場合、出産した子どもは非嫡出子(最近は、婚外子という表現が多いかもしれません)となります。では、親子関係はどうなるのでしょうか。

(写真:鈴木愛子、吉澤咲子)

A. 母親の場合、法律上の親子関係は出産したという事実で当然に生じます。しかし父親との親子関係を生じさせるためには、認知をしてもらう必要があります。認知がないままでは血縁上の父親は存在するものの、法律上の父親が存在しないことになります。そうすると、父親に対しては養育費の請求ができないことになってしまいます。もっとも、公的な給付を受けることは可能です。

とはいえ、法律上の父親がいないということは、母親の経済状況に子どもの生活状況が依存せざるを得ないということになります。父親が任意で認知してくれた場合にはいいですが、全く応じてくれない場合にはどうしたらいいでしょうか。

この場合、法律上は子どもの側から父親に対して、親子関係の存在を主張することができます。

その法的な手続きの中で、子どもは父親の子どもであることを証明しなくてはなりません。証明方法としては、(1)子を妊娠することができる時期に父と母との間に性的関係があったこと(2)その時期に母が父以外の男性と性的関係にあった事情が認められないこと(3)子どもと父との間に血液型の矛盾がないことです。

確かに、これらの事実を直接証明することは難しいでしょうから、同居していた、などの事実を積み重ねていくことになるかと思います。

DNA鑑定ができれば有力な証拠になるでしょうが、強制的に父親に受けさせるのは難しいでしょう。ですので、もし可能なのであれば、子どもの父親との関係を円満にしておき、子どものために、ということで認知してもらうようにするのが方法かもしれません。

徳原聖雨
「弁護士法人・響」の福岡オフィス支店長。福岡県弁護士会所属。子どもの権利委員会、法教育委員会、消費者委員会、精神保健委員会所属。交通事故・離婚・相続・借金問題など民事案件を主に扱う。http://hibiki-law.or.jp/

(ライター 小泉恵里)

[日経DUAL 2017年1月30日付記事を再構成]

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