人気のMate 9 すごいカメラと高性能でコスパ抜群
佐野正弘のモバイル最前線
SIMフリースマートフォン(スマホ)市場で好調なファーウェイが、2016年末に発売したのが「HUAWEI Mate 9」。5.9インチの大画面ディスプレーを搭載した大型のスマホで、ヒットモデルの「HUAWEI P9」同様2つのカメラを備えたダブルレンズ機構を採用する。市場では人気機種になっている。
大画面モデルながら持ちやすさに配慮
16年、ヒットモデルを輩出したことで人気を高めているスマホメーカーのファーウェイ。家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」の16年1~11月で、アップル、ソニーモバイルコミュニケーションズ、シャープに続く国内4位のシェアを獲得したことからも、その勢いを見て取ることができる。なお、ファーウェイは世界市場でもサムスン電子、アップルに続くシェア3位になっている。
そのファーウェイの最新モデルが「HUAWEI Mate 9」。「Mate」シリーズはファーウェイのスマホの中でも特に性能を重視し、ビジネスパーソンをターゲットとしたフラッグシップモデルシリーズの一つである。非常に高い性能を誇っている。
最も特徴的なのが、5.9インチという非常に大きなディスプレーだ。最近ではディスプレーサイズが大きいスマホが増えてきているが、アップルの「iPhone 7 Plus」でも5.5インチだ。度重なる発火事故で日本では発売されなかったが、ディスプレーサイズの大きさが特徴の一つとなっていたサムスン電子の「Galaxy Note 7」でさえ、ディスプレーサイズは5.7インチ。Mate 9のディスプレーサイズはスマホとしては群を抜いている。
ディスプレーサイズが大きいため、動画やゲームをより快適に楽しめる。またMate 9に搭載しているAndroid 7.0では、画面を2つに分割し、2つのアプリを同時に利用できる。大画面は大いに利便性を高める。
一方で、ディスプレーが大きいとどうしても本体サイズが大きくなってしまう。中でも持ちやすさに影響してくるのは横幅なのだが、Mate 9の横幅は78.9mm。iPhone 7 Plusの横幅の77.9mmより1mm大きいだけだ。Mate 9は大画面ながらベゼル幅を可能な限り狭くすることにより、横幅を抑え5.5インチサイズのスマホと同等のホールド感を実現している。
ボディーデザインからも、持ちやすさを重視している様子を見て取ることができる。特に注目すべきは背面部分で、中心から側面にかけて丸みがかっていることから、手に持った時のフィット感が高められている。またボディー素材にはメタルを採用して高級感を打ち出しているが、ツヤのある加工が施されていることにより、メタル素材特有のサラサラとして滑りやすい触感ではなく、肌にフィットして滑りにくい触感となっているのもポイントといえるだろう。
4000mAhの大容量バッテリーを搭載、インターフェースにも工夫
ディスプレー以外の性能を確認すると、メモリは4GB、チップセットには最新のCPUコアを搭載した独自の「Kirin 960」を採用しており、他のハイエンドスマホに匹敵する性能を備えている。それゆえ5.9インチもの大画面を採用しながらも、操作にストレスを感じることはなく非常にスムーズだ。
ストレージは標準で64GB搭載しており、別途microSDを追加することで256GB分追加できる。2枚のSIMを挿入して同時に待ち受けができるデュアルSIM・デュアルスタンバイ(DSDS)に対応しているが、2つのSIMスロットのうち1つがmicroSDのスロットを兼ねている。したがって、2枚のSIMを挿入するとmicroSDが利用できなくなるのは残念だ。
そしてもう1つ、Mate 9の高い性能を示しているのがバッテリーだ。Mate 9は通常のスマホよりも大きい4000mAhのバッテリーを搭載している。筆者が日常的にスマホを利用するのと同じ感覚でMate 9を使ってみたところ、丸一日経過した後もバッテリーが50%以上残っている状況であった。バッテリーの持ちが心配な人も安心して利用できるのではないだろうか。
セキュリティー面に関しては、最近搭載機種が増えている指紋センサーを採用している。センサーは背面中央に用意されており、本体を手にもって人差し指で触れることで、丁度ロック解除しやすくなっている。驚かされるのは認証スピードの速さで、センサーに指が触れてすぐロック解除がなされることから、非常に快適だ。
ソフトウェアに関しても触れておくと、Mate 9はファーウェイ独自のインターフェース「Emotion UI」の最新版、「Emotion UI 5.0」を搭載している。中でも従来のEmotion UIと比べての大きな変化といえるのが、ホーム画面のスタイルを、全てのアプリアイコンがホーム画面上に並ぶ「標準」と、Android標準のインターフェースのように、中央下部のドロワーをタップしてアプリを呼び出す「ドロワー」の2つから選択できるようになったこと。Emotion UI標準のインターフェースは他メーカーのAndroidスマホになじんでいる人にとっては使いにくいことがあるので、この配慮はうれしい。
またMate 9はディスプレーサイズが大きいことから、片手で操作しやすくするための工夫もいくつかなされている。画面下部にあるナビゲーションバーを左右にスライドすると、スライドした方向に画面が小さく表示される「ミニ画面表示」が利用できるほか、キーボードも片手で操作しやすいよう小さくしたり、左右に寄せたりすることが可能だ。
カメラは「ダブルレンズ機構」をより進化
スマホの人気機能の一つであるカメラも充実している。Mate 9のカメラは、同じファーウェイのフラッグシップモデルの1つ「HUAWEI P9」と同様、カメラメーカーであるライカとの協業により開発された、2つのカメラを備えた「ダブルレンズ機構」を採用している。それだけでなく、P9より一層ダブルレンズ機構が強化されているのだ。
P9は1200万画素のカメラを2つ搭載しており、一方のカメラにはカラーのセンサー、もう一方のカメラにはより光を多く取り込めるモノクロのセンサーを採用。細部の表現に秀でたモノクロカメラの写真に、カラーカメラの色情報を合成することで、通常のカメラよりも繊細な表現ができる仕組みとなっていた。
だがMate 9の場合、カラーとモノクロのセンサーを用いるという基本的な仕組みは共通しているのだが、モノクロ側のカメラが2000万画素に向上したことで、より繊細な表現が可能になっただけでなく、新しい機能を提供できるようになったのだ。
それが「ハイブリッドズーム」である。Mate 9は最大6倍までのデジタルズームが可能だが、このうち2倍ズームまでは、モノクロ側とカラー側のカメラに画素数の差があることを生かし、モノクロ側の写真の一部を切り出して合成することにより、画像が劣化することなくズームを可能にしているのだ。
iPhone 7 Plusは、一方のカメラのレンズを2倍の望遠にすることで、ズーム機能を実現していた。ただし、1.2倍や1.5倍といった中間的なズームでは、標準レンズの画像のデジタルズームになってしまうため、画質が劣化する。
Mate 9の場合は、常にデジタルズームではあるが、もともと2倍の画素数の画像を利用するため、中間的なズームでも画質が劣化せずにすむ。P9とiPhone 7 Plusのいいとこ取りをしたようなカメラである。
Mate 9には、2つのカメラを用いて被写体からの距離を測ることで、一眼レフのようなボケ味のある写真を撮影できる「ワイドアパーチャ」機能も、P9に引き続き搭載されている。同様の仕組みでボケ味を再現するスマホは増えているが、ボケ味を撮影後に調整できるというのはファーウェイ製端末ならではのポイントであり、写真にこだわりたい人にとっては魅力的なスマホになっている。
大画面への慣れは必要
Mate 9はハイエンドモデルにふさわしい高い性能を備え、5.9インチの大画面と強化されたダブルレンズ機構を搭載するなど、非常に特徴のあるモデルに仕上がっている。それでいて市場想定価格は6万800円と、フラッグシップ機としてはかなり安い。
実際他メーカーのフラッグシップモデルを見ると、ASUSの「ZenFone3 Deluxe」(5.7インチモデル)は8万9800円、モトローラの「Moto Z」は8万5800円、そしてiPhone 7 Plusは8万5800円という値付けがなされている。無論、フラッグシップモデルは各社ともに独自の機能を搭載していることから一概に価格だけでの比較はできないが、Mate 9にはかなりのお得感がある。
性能と価格のバランスからしても、Mate 9はハイエンドな大画面モデルが欲しい人達には文句なくお勧めできるモデルだといえる。だが一方でMate 9が万人にお勧めできるかというと、そうではないというのが筆者の感想である。その理由はやはり、大画面モデルならではのサイズ感だ。
日本人のスマホユーザーの多くはiPhone、しかもiPhone 7 Plusのような大画面モデルではなく、5インチ未満のコンパクトなサイズのiPhoneを利用している。そうした人達が、性能が高いとはいえ5.9インチの横幅のスマホを片手で使うと、どうしてもホールドしているだけで手が疲れやすいと感じるし、電源キーに手をかけてしまったりするなど、誤操作も増えてしまう。
そのためMate 9に容易に移行できるのは、5.2インチ以上、特に5.5インチ以上のスマホにある程度慣れている人に限られてしまうというのが正直なところだ。
大画面が欲しいとき用の2台目で使う?
ただ、SIMフリースマホであることを生かせば、常用せずに、必要なときだけ使うといった方法も可能である。例えば、普段はコンパクトなスマホを用いつつ、出張の時にはMate 9にSIMを差し替えて利用するという使い方はあり得るだろう。新幹線や飛行機など長時間移動で、時間をつぶすときにはMate 9の大画面は魅力的だ。
筆者の場合は、大画面のスマホは手書き入力に使いたい。パソコンが使えない場所ではペンと「7notes with mazec」というアプリを用い、スマホで手書きのメモをとることが多いからだ。こういうときだけMate 9を使うといったことも可能だろう。
もちろん、Mate 9はSIMを挿入しない状態でも利用は可能だ。だが最近ではクラウドサービスと連携して利活用することが多いことを考えると、やはりSIMがあった方が何かと便利だ。SIMを差し替えて使うだけでなく、安価なMVNOのSIMを挿入して"2台持ち"するなど、さまざまな活用方法を考えてみるのも楽しいかもしれない。
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。