ベイスターズ、クリエイティブとの融合で新産業創出へ横浜に染み出す「コミュニティボールパーク」(下)

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横浜DeNAベイスターズが催す夏の人気イベント「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」の様子。横浜DeNAベイスターズの選手たちも参加してプロデュースしている(写真:YDB)
横浜DeNAベイスターズが催す夏の人気イベント「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」の様子。横浜DeNAベイスターズの選手たちも参加してプロデュースしている(写真:YDB)
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2016年シーズンの年間観客動員は約194万人。2万9000席の収容人数に対して稼働率が9割を超える人気球団に生まれ変わった「横浜DeNAベイスターズ」。2017年シーズンには、当初より掲げていた地域密着の「コミュニティボールバーク」化構想をより加速させる。同社経営・IT戦略部部長の木村洋太氏と、同構想の実現のために参画しているオンデザインパートナーズ代表取締役の西田司氏に、2017年の具体的な取り組みについて聞いた。(聞き手=日経BP社デジタル編集部 内田泰)

――「コミュニティボールパーク」化構想について、2017年は具体的にどのような取り組みを進めるのか。

木村 今年は、「街づくり」の活動を強化したいと考えている。具体的には、街づくりの一歩として、横浜市中区日本大通にある重要文化財の「旧関東財務局」を活用するプロジェクトを始める。ここで「スポーツ×クリエイティブ」をテーマに、街全体で取り組む[注]

――「スポーツ×クリエイティブ」とは、どういうコンセプトなのか。

オンデザインパートナーズ代表取締役の西田司氏

西田 スポーツを生活の中に積極的に取り込むことで、都市生活をクリエイティブな感性を持ちながら過ごせるようにする。旧関東財務局は、そのための拠点施設にする。そこにラボを設けて、実証実験を通じたビジネスマッチングや参加型オープンイノベーションを展開する。

最終的に、そこで得た成果が街に出て横浜スタジアムや公園など街も良くなるようにする構想だ。横浜スタジアムは市の中心部に位置するので、スタジアムだけでなく街全体が良くなるようにしたい。

例えば「超人スポーツ」のような新しいスポーツを開発したり、スタジアムの周囲で運動する人にセンシングデバイスを付けてもらってケガをしにくい運動のやり方を開発したりする。こうした成果を、プロ野球選手向けのトレーニング方法に還元できればいい。

理想は、「スポーツ×クリエイティブ」の取り組みによって新たな産業が生まれることだ。実は2020年に横浜市庁舎が移転する。現在は横浜スタジアムに隣接する市庁舎本庁舎や周辺のビルに入居している市のスペースが空くことになる。そこに新たな企業が入居して、何らかのイノベーションが起きたら面白い。

米メジャーリーグ(MLB)ではロサンゼルス・ドジャースが「ドジャース・アクセラレーター」と呼ばれる取り組みを実践している。一例として、「ドジャースタジアム」をもっと面白くするためのアイデアを持つ企業を誘致し、ノウハウを提供してもらう一方で、ドジャースが保有する各種データを提供するような取り組みをしている。

主催試合に多くの人が集まる横浜スタジアムを、実証実験の場にできるのは大きな意味があると思う。

IT化で「3万人が本当に喜ぶのか?」

――昨今、米国を中心に高密度Wi-FiなどIT(情報技術)をふんだんに取り入れた「スマートスタジアム」が注目を集めている。プロリーグの球団などが、ビジネスの成長機会をスマートスタジアムに見いだそうとしている。横浜スタジアムのIT化の計画はどうか。

横浜DeNAベイスターズ 経営・IT戦略部部長の木村洋太氏

木村 もちろん、検討はしているが、具体的な計画はまだない。 重要なのは、IT化は「本当に(スタジアムを訪れる)3万人にとってうれしいか」だ。親会社がIT企業なので社内でもやりたいと思っている人が多いが、例えばスマートフォン(スマホ)のアプリによるIT化を考えるのであれば、スマホアプリ利用の普及度がもっと高まらないと現実的ではない。

現状、スタジアムに来てアプリをダウンロードするのは、チームに愛着を持っているコアファンだろう。それに対して、我々がこれまでやってきた取り組みは、どちらかというと“ライト層”向けの楽しみ方が多く、若干、相反する要素がある。

初めてスタジアムに来た人がいきなり、「ちょっと便利なアプリがある」と言われても、よほど心に刺さらないとダウンロードしないだろう。お客様にアプリを使ってもらうのが本当に便利なのか。むしろ、球場スタッフが扱う端末などのIT化推進の方が本質的なのではないか、などを検討する必要がある。

ただし、スマート化の一環として、2015年シーズンには照明をLED(発光ダイオード)化した。LEDだと瞬時に照明をオン・オフしたり、狭い範囲だけを照らすことができる。ヒーローインタビューの際に、スタジアムの照明を消して選手だけにLEDでスポットライトを当てる演出はすごく好評だ。

2020年の東京五輪では、野球とソフトボールで横浜スタジアムを競技場として使用することが決まった。その時までに「導入しておく方がいいIT機能はあるのか、あるとしたらどのような機能なのか」などを検討している。

――スポーツ庁と経済産業省は、スタジアム・アリーナの新たなビジネスモデルの開発、推進のために「スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会」を2016年7月に設立した。スタジアム・アリーナを核とした街づくりへの支援などもしていくというが、この協議会に対する期待感はどうか。

木村 同協議会には、横浜市長の林文子氏や横浜DeNAベイスターズ取締役オーナーの南場智子が委員として参加している。現時点では具体的にどうなるかは分からないが、横浜スタジアムが「スタジアム・アリーナビジネス」で日本のベンチマークになるように努力していきたい。

[注]横浜DeNAベイスターズは2017年2月16日、スポーツを通じた街づくりの拠点「THE BAYS(ザ・ベイス)」を3月18日に開業すると発表した。旧関東財務局のビルを改装し、シェアオフィス「クリエイティブ・スポーツ・ラボ」などを設置する。スポーツ新産業の創出に向け、「スノーピーク」関連企業や慶応義塾大学大学院など4社・機関の入居が決まったという。

[スポーツイノベイターズOnline 2017年2月13日付の記事を再構成]

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