『ウォーキング・デッド』原作者 新作は悪霊との戦い
2017年1月 海外ドラマ月間レンタルランキング
海外ドラマで近年最大のヒットとなっている『ウォーキング・デッド』。そこから派生したゾンビブームに続き、米国で起こっているのがホラーブーム。その先駆けともいえるのが、悪霊との戦いをテーマとした『アウトキャスト』だ。『ウォーキング・デッド』の原作者が製作総指揮、脚本を手がけた新作とあって、日本でも注目を集め、TSUTAYA海外ドラマ月間レンタルランキングで5位に初登場するヒット作となっている。
『アウトキャスト』の主人公カイルは、子ども時代に母から虐待を受けたトラウマを抱え、大人になってからは結婚生活が破綻、元妻と娘と離れて暮らしている。牧師と共に少年に取り付いた「悪魔ばらい」に乗り出すうちに、自身が悪霊を追い払う特殊な能力を持っていることに気づき、悪霊との戦いに身を投じるというストーリー。
悪魔ばらいといえば映画『エクソシスト』が有名。本作でも少年が体を宙に浮かせたり、腕をあらぬ方向に曲げるといった『エクソシスト』のオマージュとみられるショッキングな描写がある。だが、ドラマ全体としては、カイルをはじめ登場人物がそれぞれ過去の傷を抱えており、各人の内面を深く掘り下げていく繊細なストーリーが見どころとなっている。「アウトキャスト」とは、悪霊にとりつかれた少年がカイルに向かって口にする言葉で、追放された者や放浪者を指す。その意味するものを探るのも、物語全体のテーマだ。
主人公のカイルを演じるのは、映画『ゴーン・ガール』や『あの頃ペニー・レインと』で好演を見せた若手の実力派パトリック・フューギット。本作でも、繊細な感情を表現する演技を見せている。全米では2016年6月からシネマックスで放送がスタート。シーズン2の制作も決まっている。
原作者ロバート・カークマンが製作総指揮
原作はロバート・カークマンが描いたコミック。カークマンは『ウォーキング・デッド』の原作者として知られ、ドラマ版の製作者にも名を連ねる。彼が2年の構想期間を経て発表したのが『アウトキャスト』で、「これまでのテレビドラマでなし得なかった『真のホラー』を届けたい」と、自ら製作総指揮、脚本を手がけてドラマ化に乗り出した。
『ウォーキング・デッド』では、ゾンビに支配された世界という設定をうまく生かして極限状況を作り、生き残りをかけた人間同士の過酷な争いをリアルに描くことに成功。ゾンビよりも人間のほうが怖い、という斬新な視点が多くのファンを生んだ。ホラーに挑んだ本作でも、悪霊との戦いという設定によって極限状況を作り、そこでむき出しになっていく人間の本質を描こうとしているようだ。そういう意味では、『ウォーキング・デッド』から派生したドラマといえるだろう。
TSUTAYA MD販促部映像ユニット レンタルチーム 海外ドラマ担当の中山知美氏は、「『アウトキャスト』は、同じ原作者ということで、『ウォーキング・デッド』のファンがまず飛びついたようです。本作に限らず、『ウォーキング・デッド』から派生したホラーブームが米国で起こっており、『死霊のはらわた リターンズ』『オーメン』『エクソシスト』など名作ホラー映画が次々とテレビドラマ化されて、人気となっています」と言う。
日本でも『死霊のはらわた リターンズ』『オーメン』は昨年12月にDVDがリリースされ、『オーメン』は1月のレンタルランキングで25位に入っている。『エクソシスト』は1月から日本初放送が始まり、その後DVDリリースも予定されている。映画のドラマ化ではないが、やはりホラーの『アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル』が1月、『スクリーム・クイーンズ』が3月にDVDリリースとなる。
ゾンビ、アメコミが海外ドラマの2大人気ジャンルだが、今年はそこにホラーが加わり、新たな話題を呼びそうだ。
(日経エンタテインメント!小川仁志)
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