公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司

藤田 具体的には、どんな消費でしょうか。

「死ぬ前にもう一度、五輪を見ておきたい」と話すシニアは少なくない(1964年東京五輪の閉会式)

堀内 「あと何回、元気に海外旅行ができるのだろう。もういい年だから体が動くうちに欧州などの遠くに行っておこう」とか、「年を取って運転ができなくなるまでに、あと何回車を買い替えられるのだろう。今のうちに乗りたかった車に乗っておこう」といった発想からの消費です。未来を考えて、そこから逆算して「今のうちに買いたいものを買っておこう」「やりたいことをやっておこう」という消費のパターンを「引き算消費」と呼んでいます。シニア消費には、こういったポジティブな消費も多いのです。

藤田 確かに、自分が高齢者になったら、そういった発想で今買うべきものを考えるでしょうね。

堀内 それから「あと○年はお友だちと山登りをしていたいから足腰が弱らないようにジムに通おう」とか、「孫の成長を少しでも長く見ていたいから健康食品やサプリメントをとっておこう」といったように「あと○年は元気でいたいから」ということを動機とした消費もあります。

藤田 そういった動機から買い物をするという感覚は若い世代の発想にはないでしょうね。

堀内 シニア向けの商品やサービスを開発しているのはシニア世代の消費者よりも若い人たちです。どんな動機からシニアが今何を買うべきかを考えているのかを若い世代にぜひ知ってもらいたいのです。もっとシニアの気持ちに寄り添って、シニアの本当のニーズを満たす商品やサービスを世に送り出してほしいですね。

シニア層のポジティブな消費行動について聞く藤田氏

藤田 未来から逆算して「あと何回」「あと○年は」といった気持ちを持っているシニアには、ここが消費喚起のツボになりそうです。

堀内 シニアの方からは「足腰が丈夫なうちに東京五輪を見に行きたい」とか、「死ぬ前にもう一度、オリンピックを見ておきたい」といった声を聞くこともあります。1964年の東京五輪が開催された時に思春期を迎えた高齢者にとって、3年後の東京五輪・パラリンピックは特別な思い入れのあるイベントです。1964年も2020年も同じ「東京オリンピック」であり、思春期の思い出とひも付いた特別なイベントです。そのため「東京オリンピックを見に行きたい」という動機はシニアにとって大切なものなのです。

藤田 「死ぬ前にもう一度」も未来から逆算する消費の動機になり得るフレーズですね。次回はシニア向け商品を売るための具体的なノウハウを聞きたいと思います。

ほりうち・ゆうこ 1967年生まれ。高齢者住環境研究所(東京・渋谷)で要介護者向け住宅改修の設計・施工・管理を手掛けた後、コンサルティング会社に転職。桜美林大学大学院老年学研究科修了、独立して老年学に基づくシニア市場の分析を専門領域とするシニアマーケットコンサルタントとして活躍する。桜美林大学老年学総合研究所連携研究員、東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員。
ふじた・こうじ 1978年生まれ。公認会計士、税理士、心理カウンセラー。早大商卒。監査法人トーマツを経て日本経営心理士協会、FSG税理士事務所、FSGマネジメントを設立。経営コンサルティングと心理学を融合した経営心理学を体系化し、企業の経営顧問、経営者のメンターを務める。主な著書に「リーダーのための経営心理学」(日本経済新聞出版社)がある。

前回掲載「シニア消費の鍵を握る「モラトリアムおじさん」とは?」では、生活に変化や刺激を求めているものの、具体的な行動に踏み出せないシニア層について聞きました。

「post2020~次世代の挑戦者たち」は原則水曜日に掲載します。