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post 2020~次世代の挑戦者たち

「元気な今のうちに」消費 「逆算」がシニアを動かす シニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏に聞く(4)

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司

2017/2/22

シニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏

2020年東京五輪・パラリンピック後の時代「post2020」に、日本経済を元気にする鍵を握るのはシニア世代の活発な消費行動だろう。では、どうすれば病気や介護などへの不安を抱えるシニアが動くのか。老年学の研究者でもあるシニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏に「元気な今のうちに」と考えるシニアの「未来から逆算する」消費行動について聞いた。(聞き手は公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司)

藤田 シニアの消費動向を考えるうえで、まずシニア層の家計の実態がどうなっているのかが気になります。

堀内 内閣府の16年版「高齢社会白書」から世帯主の年齢階級別に1世帯当たりの貯蓄と負債を見てみましょう。30~39歳は貯蓄が610万円、負債は995万円です。40~49歳を見ると、貯蓄は1030万円に増え、負債も1051万円に膨らみます。ところが、50~59歳では、貯蓄は1663万円になり、一方の負債は654万円に減ります。60~69歳は一段と貯蓄が増え、2484万円になります。負債は213万円と大幅に軽くなります。70歳以上の世帯ですと、貯蓄は2452万円、負債はわずか78万円です。60歳以上は住宅ローンが払い終わり、子供の学費支出もなくなっているので、貯蓄が多く、負債が少ないことが分かります。

藤田 60歳以上はそれよりも下の世代と比べ、ずいぶんと家計にゆとりがあるように見えますね。それなのに消費意欲が旺盛ではないのはなぜでしょうか。

堀内 内閣府が12年にまとめた「高齢者の経済生活に関する意識調査」によりますと、60歳以上の高齢者が貯蓄をする目的は「病気や介護が必要になったときの備えのため」との回答が62.3%を占めています。一方、「普段の生活を維持するため」は20.0%となっています。医療や介護の費用は予想できないため、それが不安材料となって消費が抑制されてしまっている現状がうかがえます。実際にシニアの方に話を聞いていても、医療や介護にかかる費用に対する不安の声を頻繁に耳にします。

藤田 シニアの消費促進には、そういった不安を解消することが求められますね。

堀内 シニアは元気であっても頭のどこかで将来に対していくつかの不安を抱えています。現在抱えている何らかの体の不具合に対する不安、今後の自分や家族の病気や介護に対する不安、年金や保険などの社会的不安などです。これらの不安に対処するためにどれくらいのお金がかかるか分からないから、なるべくお金を残しておこうと「タンス預金」が増えていきます。こうした不安を緩和してシニア市場を活性化させるためには、シニア層に病気や介護、年金、保険などについて理解を深めてもらい、将来への備えとして何が必要かについても理解してもらうことが不可欠です。

藤田 どんな備えが必要になるのかを理解するうえで、老年学は有効ですね。

ビデオリサーチのセミナーで、老年学の研究成果に基づくシニア市場の分析について語る堀内氏

堀内 老年学は医学、心理学、社会学、福祉学といった多面的な観点から「老化」について研究する学問です。将来、何にどれだけのお金が必要になるのかをシミュレーションするためには、老化による体の変化についての理解が必要になりますから、老年学はシニアの将来への不安を解消するための有効なツールになるでしょう。最近は老年学の研究成果を踏まえ、誰にでも訪れる「正常老化」などについてシニアの方に講演をする機会も増え、参加者も多くなっていますから、将来への不安を抱えたシニア層が増えていると感じています。

藤田 老年学のニーズは今後、一段と増えるでしょうね。ただ、将来への不安が緩和されるだけで十分でしょうか。他にシニア消費を活発にするヒントはありますか。

堀内 シニア消費を理解するには、高齢者の現在・過去・未来に鑑みて、その上で「シニアの今」を見なければならないと思います。確かに、未来を見据えたシニアの消費は介護や年金、病気への不安などネガティブな要素が多く、不安が消費を妨げるケースも多く存在します。しかし、実はシニアの未来を見据えた消費の中にもポジティブな消費は多く存在します。

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