超薄・発色で本命 有機ELテレビ発売ラッシュの正体西田宗千佳のデジタル未来図

「薄さ」を生かしてデザインでも差別化、ハイエンドの幅を広げる

有機ELのもうひとつの大きな特徴は「薄さ」だ。バックライトやフィルターの一部が不要になるため、液晶に比べ構造が非常にシンプルになる。スマホに有機ELが使われるのは、画質のメリット以上に薄型化できるメリットのためだ。ディスプレーが薄くできる分が、バッテリー搭載スペースの確保やデザイン自由度の向上に使われている。

テレビにおいては、デザインの自由度確保と「壁掛け」に有効だ。日本ではまだ少ないものの、テレビメーカー関係者のコメントによれば「米国市場では大型製品購入者の半数以上が壁掛けを望む」という。壁掛けにするには、パネル部を軽くする必要があり、構造がシンプルで薄い有機ELテレビは有望だ。

実際、東芝の「REGZA X910」は最薄部が6.5mmしかない。LGエレクトロニクスの2017年モデル「LG OLED TV W」は、ディスプレーの最薄部がなんと2.57mmしかない。壁にはマグネットで留めることができる。

壁にマグネットで留められる「LG OLED TV W」

ソニーは薄さよりもシンプルさを打ち出す。「BRAVIA A1E」は、画面のガラスそのものをスピーカーとして鳴らす構造をとり、テレビからスピーカーの姿を消してしまった。卓上カレンダーのように支えて(ここがサブウーファーになっている)立つデザインはかなり独自性が高い。

ソニーの「BRAVIA A1E」。卓上カレンダーのような形
「BRAVIA A1E」

現状の有機ELテレビは高い。東芝の製品は70万円から、LGエレクトロニクスの製品も、2017年モデルは同様の価格帯と思われるし、他社も追随するだろう。現状では「もっとも高価な製品群」であり、競合するのはハイエンドの液晶テレビで、これもやはり高い。

逆に、液晶テレビの場合は安いものはぐっと安く、50型でも実売20万円を切るものもある。要は「手ごろな価格の液晶」「ハイエンドの液晶」「ハイエンドの有機EL」という3つの製品群がある、というのが今のテレビ市場であり、有機ELは「ハイエンドの選択肢を広げた」状態である。そういう意味では、「薄い」「軽い」という有機ELテレビの特徴は、前述のようにデザイン面に生かされることになる。これ以上の大画面化を進めるには、設置の面から壁掛けが望ましい、という事情もあり、有機ELテレビは「55型以上の大型」を主戦場として広がるだろう。

有機ELテレビの価格が下がるには、テレビ向け有機ELパネルの供給企業が増えることが必須である。スマホ向けの有機ELが増える、と予想されているのは、スマホ向けパネルの供給元が増え、生産量とコストが安定するからでもある。テレビにおける有機ELはまだまだその前の段階だ。

逆にいえば、画質・デザインの両面で「しばらく大きなアドバンテージが続く」のが有機ELテレビの特徴であり、そこに価値を求める人向けの市場……と理解するのがよさそうだ。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)
フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。
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