不動産・住宅ローン

転ばぬ先の不動産学

中古住宅取引、「設備保証サービス」を過信すべからず 不動産コンサルタント 田中歩

2017/2/22

PIXTA

 最近の中古住宅売買では、仲介業者が提供する設備保証サービスが付帯しているケースが多く見られます。こうしたサービスは、何があるかわからない中古住宅の取引において、一定の安心感を与えるサービスだと思います。しかし、先日、とある買い主さんからこんな相談が寄せられたのです。

■保証サービスの対象外

 この買い主さんは某大手仲介会社を通じて中古マンションを購入しました。その際、その大手仲介会社が提供する設備保証サービスが付いていたので、特に何も疑うことなく契約をし、残代金支払いを済ませ、引き渡しを受けました。

 引き渡し後、虫の知らせがあったのか、とある会社にホームインスペクション(住宅診断)を依頼したのですが、調査の結果、ユニットバスの下に水がたまっていることが判明したのです。明らかに、どこからか水が漏れた状態です。

 早速、仲介会社に連絡し、状態をチェックしてもらったところ、水漏れの原因はユニットバスの床に生じていた亀裂でした。

 買い主さんからすれば、当然、保証サービスで補修してもらえると思っていたそうですが、仲介会社の答えは「ノー」だったそうです。

 これは、この仲介会社が提供する設備保証サービスの条件が、給排水管の故障に限定されていたからです。ユニットバスの床に生じた亀裂は保証範囲から外れるそうなのです。

■売り主と論争になる可能性も

 通常、不動産売買契約書では引き渡しから3カ月の間に買い主が瑕疵(かし)を発見した場合、売り主が責任を負うことが規定されています。しかし、瑕疵の範囲は限定されているのが一般的で、中古マンションの場合、専有部分における雨漏り、シロアリの害、給排水管の故障以外、売り主は責任を持たない規定になっていることが多いのです。

 また、付属設備の不具合についても「引き渡しの日から7日間は売り主が定められた修復範囲について修繕義務を負う」という規定がされているケースが多いのですが、修復方法が「調整と補修」に限定されており、これ以外の修復については、売り主に修繕義務が生じないことになっています。

 実は、仲介会社が提供した今回の設備保証サービスは、上記のような契約上、売り主が責任を持たなければならない範囲のみをカバーしているに過ぎなかったのです。

 今回のケースは、設備保証サービスは使えないものの、付帯設備の不具合には該当すると思われますので、売り主に対してなにがしかの請求は可能だと思います。しかし、契約上、修復方法が「調整と補修」までとされているため、交換しないと使えないような事態の場合、売り主と論争になる可能性が高いということになります。

■契約前の診断が重要

 もし、ホームインスペクションを契約前に実施していれば、原因はともかく、ユニットバスの床下に水がしたたり落ちていた事実は確認できたでしょうし、契約する前に修繕について売り主と交渉することも可能だったはずです。

 欧米では売買契約締結前にインスペクションを実施するのが当たり前になっています。仮に問題があった場合は、その修繕や費用をめぐって交渉し、契約するかしないかを決めるということが多いようです。

 日本では契約前にインスペクションを実施するケースも徐々に増えているとはいえ、まだまだ少ないと思います。また、仮にインスペクションを行ったとしても、瑕疵保険や設備保証に必要な最低限の部分しか調査しないものも多いようですから、いくらインスペクションを実施したからといって、今回のようなトラブルが回避できるとは限らないということなのです。

 こうした事態にならないためにも、中古住宅の売買契約をする前には、できればインスペクションを行うこと、調査範囲は保険などに必要な最低限の範囲ではなく、買い主が安心して暮らすために必要な範囲についてきちんと調査をすることが、安心できる取引のスタンダードになるべきではないかと考えています。

田中歩(たなか・あゆみ) 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。

不動産・住宅ローン

ALL CHANNEL