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イタリア鉄道旅 新しい顔と昔ながらの風景を楽しむ 日伊協会常務理事 二村高史

2017/2/23

■さすが音楽の国イタリア 音楽用語が車両の愛称に

 新車が積極的に導入されたのは幹線の特急だけではない。ローカル線や幹線のローカル列車にも、乗り心地がよく、見栄えもする新しい電車やディーゼルカーが次々に登場している。

 その先駆けとなったのが、2003年に登場した「ミヌエット」(Minuetto)という車両だ。ミヌエットとは、学校の音楽の授業で習った舞曲メヌエットのイタリア語読み。

 フランスのアルストム社製で、電車とディーゼルカーが同じデザインであるのが面白い。車両の密閉性がいいのか、走行中も車内は静かで、エアコンが均一に利いているのがこれまでのイタリアの車両にはなかった特徴である。

 特に従来のディーゼルカーというと、坂道ではすさまじい騒音をあげ、排ガスの臭いが車内にも漂うフィアット社製の車両ばかりだったのだが、それを駆逐しつつある。そうそう、車内のデザインもしゃれているし、ドアの部分が低床になって段差が小さいために、重い荷物を持っていても乗り降りが楽なのがいい。

「ミヌエット」の連結部分の座席はとってもおしゃれ。バックに見える電光掲示板に、停車駅や時刻が表示される
古城をバックに快走。ローカル線に新風を吹き込んだ「ミヌエット」

 その後、2014年には後継の車両が登場した。やはりフランスのアルストム社製で、愛称は「ジャズ」(Jazz)。今のところ、電車だけのようである。「うーん、ミヌエットの次はジャズときたか。音楽シリーズで統一するのなら、その次はボサノバか、はたまたエンカか」などと勝手な予想をしていたら、2016年のイタリア訪問時に新車を目にすることができた。今度の愛称は、なんと「スイング」(Swing)。ポーランドのペサ社製のディーゼルカーで、同型の車両は以前からイタリア各地の私鉄に導入されていた。

 さて、次世代の車両の愛称は何になるか、今から楽しみである。

「スイング」は、ローカル度の高い路線で使われている
「ジャズ」は、色使いが「ミヌエット」よりも派手。ローマ空港からローマ・テルミニ駅へ直通する列車にも、別の車体色で使われている

■メッシーナ海峡では客車ごと連絡船に積み込む

 日本では、青函トンネルの開通によって鉄道連絡船はすべて廃止になってしまった。私が学生のころは、北海道に行くというと、上野から夜行列車に乗り、終点の青森駅で青函連絡船に乗り換えて、函館港に上陸するのがお決まりのコースだった。

 その鉄道連絡船がイタリアではまだ残っている。イタリア本土の爪先にあたるカラブリア州ビッラ・サン・ジョバンニとシチリア島北東岸にあるメッシーナを結ぶ航路だ。しかも、乗客が客車に乗ったまま船に積み込まれるという、なかなか得がたい体験ができるのだ。青函連絡船でも、かつては客車(寝台車)を積み込んでいたが、1954年に洞爺丸が台風で沈没した大惨事をきっかけに廃止になっている。

船倉の入り口は、まるでサメが大きな口を開けたよう。すぐ目の前には、3方向に分かれる分岐器が見える

 現在、ミラノやローマとシチリアを結ぶ長距離列車数本が、この連絡船に積み込まれて直通している。2014年10月、私がシラクーザ(シラクサ)駅でとった指定席は、幸運にも先頭客車の一番前のコンパートメント(6人部屋の個室)。おかげで、メッシーナ駅での入れ替え作業や船への積み込み作業を、かぶりつきで見ることができた!

 列車がメッシーナ駅に到着すると、先頭の機関車が切り離されて作業員が乗り込んでくる。まもなく、最後尾に別の機関車が連結されたのだろう、駅構内を何度か行ったり来たりしたのち、いよいよ船内へ。ゆっくりとしたスピードで進む先には、巨大なサメが口を開けたような格好の船が待ち受けていた。

 船倉には外からの光が入って明るい。気がつくと、同室の若い女性が財布を手にして車両の出口の前に立っていた。そう、船の甲板に出れば海峡の眺めを楽しめるし、売店でコーヒーや軽食もとれるのだ。

客車が甲板から眺められるのがおもしろい。バックはメッシーナ市内。昼間にここを通過する列車は2往復と、貴重な存在になってしまった

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