スマホ価格は再度値上がりへ 休日「実質0円」もNG

日経トレンディネット

キャリアは若者向け施策を打ち出すが、端末の価格は上がりそうだ
キャリアは若者向け施策を打ち出すが、端末の価格は上がりそうだ
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2016年、総務省のガイドラインによってスマートフォン(スマホ)の「実質0円」販売が事実上禁止されたが、総務省はその後も会合を実施しており、今後、さらにスマホの価格が値上がりする可能性が高い。いつ、どの程度値上がりするのだろうか。

実質0円廃止で新規やMNPでも1万円以上に

2016年4月に適用された「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」によって、従来当たり前のようになされてきたスマホの実質0円販売が、事実上禁止となった。このためスマホの価格は、一部低価格のものを除き、新規やナンバーポータビリティー(MNP)による乗り換えの場合でも、実質負担金が1万円程度に値上がりした。このことが携帯電話業界だけでなく、消費者にも混乱をもたらしたことは記憶に新しい。

だが総務省は、高額なスマホを大幅に値引きし、値引き分の料金を毎月の携帯電話料金で回収するというキャリアのビジネスモデルを、その後も問題視している。その理由として総務省は、端末が大きく割引されることで通信料金が高止まりすること、過度な値引き販売がMVNOなど新規事業者の競争の阻害につながることなどを挙げている。

それゆえ総務省は、今後も引き続き端末購入補助の適正化、つまりキャリアが販売するスマホの割引額を減らすための施策を推し進めようとしている。実際、16年に総務省のICT安心・安全研究会が実施した「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」においても、「高価な端末が1万円程度で販売されていると、低価格端末との差がつかないのではないか」という指摘がなされ、一層割引額を抑制するための議論が進められてきた。

これを受けて総務省は17年1月10日、端末購入補助の一層の適正化などを盛り込んだ、「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」を策定。早ければ2月から適用開始となる。では2月以降、スマホの価格はどうなっていくのだろうか。

2016年10月から11月にかけて実施された「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」では、端末購入補助のさらなる適正化ついての議論がなされた

2年前のモデルの下取り価格を下限に価格を決定

「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」には、実質的に2つのガイドラインが盛り込まれている。1つは、2015年に義務化されたSIMロックの解除に関連した「SIMロック解除の円滑な実施に関するガイドライン」。そしてもう1つが、2016年4月に施行された「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を改訂したもので、端末価格に直接影響するのは後者となる。

後者の「スマホの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」には、今回の改定で大きく3つの変更がある。中でも多くの人の関心を集めるのは端末購入補助、つまりスマホの割引額に関してだろう。

実は従来のガイドラインには、適切な端末購入補助額の基準に関する明確な記述がなく、そのことが多くの消費者の混乱を招いた。そこで今回のガイドラインでは端末購入補助の基準が、明確に盛り込まれている。

その基準となるのが、中古端末の下取り価格だ。実際、改訂されたガイドラインを見ると、同じメーカー・同じシリーズで、なおかつ2年前のモデルの下取り額を最新モデルの販売額の下限とするよう記述されている。

iPhoneの最新モデル「iPhone 7」(2016年発売)を例に説明すると、iPhoneシリーズで2年前に発売されたのは「iPhone 6」だ。キャリアによってやや異なるが、1月20日時点のiPhone 6の下取り額は2万2000円~2万5000円。改訂ガイドラインに従うと、iPhone 7の販売価格は2万円台前半が下限となる。現在のiPhone 7の実質負担金は、NTTドコモの「ドコモオンラインショップ」の場合、新規またはMNPで1万5552円(税込み)であることを考えると、1万円前後の値上げとなる。

中古端末は人気が高く、元の価格が高いモデルほど、値崩れしにくく高額になりやすい。それゆえ「iPhone」「Xperia」といった人気の高い端末シリーズで、なおかつフラッグシップモデルであれば、従来の下限であった1万円よりも価格が高くなりやすいといえそうだ。

ただ1つ注意しておきたいのは、このガイドラインが適用されるのは、調達価格が3万円を超える比較的高額な端末に限られること。小売価格が3万円以下の比較的低価格なモデルに関しては、ガイドラインの適用外となり、NTTドコモの「MONO」のように安価に販売できることは覚えておきたい。

NTTドコモの「MONO MO-01J」は、小売り価格を3万円に抑えることにより、ガイドラインが適用されず一括648円という販売価格を実現している

土日限定の「実質0円」販売もアウト

もう1つ、端末販売に大きな影響を与えそうなのが、販売代理店に向けた対応である。現状、端末販売ではなく、MNPによる乗り換え獲得した通信契約に応じて、キャリアが代理店に奨励金を出すことは規制されていない。それが規制の“抜け穴”となり、「土日限定」など短期間限定で奨励金を増額し、それを実質0円販売につなげるケースが、現在もある。

そこで今回のガイドライン改訂では、短期間のうちに奨励金を増額することも端末購入補助とみなし、認めなくなった。それゆえ現在、休日などにショップ店頭でよく見かける「実質0円」販売も、ガイドライン適用後に姿を消す可能性が高い。

「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」(第1回)のNTTドコモ発表資料より。ガイドライン施行後も、休日など短期間のうちに通信契約に関わる奨励金を増額し、それを実質的な端末購入補助として実質0円販売を展開するケースがあった

一方で、3Gのフィーチャーフォン利用者が、MNPでキャリアを乗り換えてLTE対応のスマホに買い替える際の端末割引は改善されそうだ。3GからLTEへの移行はキャリアも総務省も積極的に進めているもので、同じキャリア内で機種変更する場合は値引き販売が可能となっている。だがこれまでは、MNPでフィーチャーフォンからスマホに乗り換える場合は、実質0円販売の抜け穴となる可能性が高いとして、通常のスマホへの乗り換えと同様、値引き販売が制限されていたのだ。それが今回、行き過ぎた額とならない範囲での値引き販売が認められたことから、フィーチャーフォンユーザーが他キャリアのスマホに乗り換える場合には優遇措置が受けやすくなったといえる。

早ければ2月から端末価格は高くなる?

では、これらガイドラインに記された内容の適用時期はいつからになるのだろうか。

下取り価格を基準とした端末購入補助の適正化は、2017年6月以降新たに発売される端末に適用されるという。現在販売されている端末の割引には影響しないものの、2017年の夏モデルの中には適用される機種が出てくるかもしれない。また、それ以外の施策は2月1日より適用されることから、土日限定の実質0円販売などは早々に姿を消すこととなり、春商戦にも影響してくるだろう。

一方で、今回のガイドライン改定を受けても、実質0円販売の穴はまだ埋められないようにも思える。最近では低価格サービスの競争が激しくなっていることから、一部の低価格ブランドがSIM、つまり通信の契約に対してキャッシュバックを提供するケースが出てきた。これは端末ではなく通信契約に対するキャッシュバックであるため、現状のガイドラインの適用範囲外なのだが、こうした動きが激しくなってくれば、力のあるMVNOが新興のMVNOの参入を阻害することにつながるため、何らかの対応が必要となるはずだ。

そもそも、総務省が進める端末購入補助の適正化が、本来の目的である通信料金の低廉化につながっているかというと、そうとも限らない。確かに2016年、一連の総務省の施策を受けて、キャリア側も低価格で利用できる料金プランを提供したり、長期利用者に向けたサービスの充実を図ったりするなどのサービスを打ち出した。だがこれらのサービスを見ても、低価格の料金プランは機種変更時の割引が不利で積極的には選びにくいし、長期利用者への対応も、料金値引きではなくポイントや商品による還元に力を入れているように見える。

それゆえ現在のところ、価格が下がったという実感を持てず、端末価格がかえって値上がりしたと不満を持つ消費者も少なくない。実際、今回の「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」の策定などにあたって、総務省は企業や消費者から意見を募集しているのだが、集まった中には、端末価格が高騰する一方、通信料金の値下がりにつながっていないという意見が多く見受けられた。

とはいえ、総務省はあくまでも端末の割引を抑えることがMVNOの競争力強化、ひいては競争の加速で通信料金引き下げにつながると考えているようだ。だがキャリアは、MVNOにユーザーが流出している分、1人当たりの売り上げを高めようと、通信料は下げずに付加サービスを増やすなど、総務省の狙いとは異なる方向に向かっているように感じる。童話ではないが、北風を吹かせ続ける政策が期待通りの結果を生むのかどうかという検証も、必要なのではないだろうか。

佐野正弘(さの・まさひろ)
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

[日経トレンディネット 2017年1月27日付の記事を再構成]

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