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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。秋から年末にかけての強力本が売れ続けている状況は先月と変わりない。このことは年が明けてからは有力な新刊が出ていないことの裏返しでもある。そんな中、ランキング上位に食い込んできたのは有力コンサルティングファームの研究所が総力を挙げて執筆した世界的視野の長期予測の一冊だ。

マッキンゼーが総力を挙げて予測

その本はリチャード・ドッブス、ジェームズ・マニーカ、ジョナサン・ウーツェル『マッキンゼーが予測する未来』(吉良直人訳、ダイヤモンド社)。タイトルにある通り世界的な有力コンサルティングファーム、マッキンゼーによる長期未来予測だ。著者の3人はいずれも同社内の独立シンクタンク、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートに所属する。前回のリブロ汐留シオサイト店でも3位に入って簡単に紹介したが、今回は少し詳しく内容を追ってみよう。

イントロダクションで著者たちは言う。「世界は今、破壊的な力を持つ四つの根本的な力によりもたらされた、劇的な変化のほぼ中途にある」。第1の変化が経済の重心の移動。2010年から2025年の間の世界の国内総生産(GDP)成長のほぼ半分は発展途上国の440の都市から生み出されるという。そのほとんどの都市がスーラット(インド)、仏山(フォーシャン、中国)、ポルトアレグレ(ブラジル)といった多くの人があまり耳にしたことのない都市だ。第2の変化はテクノロジー・インパクト。ゲノム、自動運転車、エネルギー貯蔵技術、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」など12の技術を挙げ、その変化のスピードの速さ、普及の爆発的な速さに注目する。

加速度増す変化の量と質

第3の変化は地球規模の老化。先進諸国だけでなく中国、インド、ブラジルなどの新興国も巻き込み、アフリカ以外のすべての国が高齢社会になる未来を描き出し、年を重ねる意味が労働、消費すべての局面で変わると指摘する。第4の変化は「流れ(フロー)」。著者たちの独自の概念だが、貿易のみならずヒト、モノ、カネ、さらには情報の世界中をめぐる移動がどんどん高まり、相互の結びつきがより複雑かつ強固になるという変化だ。前半でこれら4つの変化の胎動と先行きを詳述した後、後半ではこうした挑戦的な課題にどう立ち向かうことが可能か、どう立ち向かうべきかを論じていく。

著者たちがしきりに言うのは、これまでと同じ発想をしていてはダメで直観力と自身のナビゲーションシステムをリセットしようということだ。目の前の巨大市場だけに対応するのではなく、世界は今までの常識とは違うように動いていると認識し、世界を動かしている破壊的な力の扱い方を知ろうということだ。過去25年間の調査分析やコンサルティング業務を通じた地に足の着いた仮説や洞察をもとにしているだけに予測の説得力は十分だ。「今年はどうなるといった予測本とは違って、長期の趨勢を描いているのが特徴。40~50歳代のビジネスパーソンというウチの中心的なお客様の関心が高い」と副店長の木内恒人さんは言う。

独自の賞効果で『「言葉にできる」は武器になる』伸ばす

それでは、先週のベスト5を見ていこう。

(1)株3年生の教科書西村剛、中原良太著(総合科学出版)
(2)修羅場の説明力小野展克、池田聡著(PHP研究所)
(3)「言葉にできる」は武器になる梅田悟司著(日本経済新聞出版社)
(4)おもしろい伝え方の公式石田章洋著(日本能率協会マネジメントセンター)
(5)マッキンゼーが予測する未来リチャード・ドッブスほか著(ダイヤモンド社)

(八重洲ブックセンター本店、2017年2月5日~2月11日)

1、2位は著者関連のまとめ買いが入ってランクインした。3位は刊行直後の9月から売れ続けるロングセラーだが、同書店が創設した独自の賞「yaesu book choice」の第1回受賞作になったため重点的な販促が展開されて、ふたたび勢いが増している。4位は同書店の売れ筋としては珍しいスキル系の本だが、書店イベントとして著者のトークショーが開かれたため売り上げが伸びた。冒頭の本は5位。これだけは特別な事情がないため、事実上の1位といっていい。

(水柿武志)

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