検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

フィンランドにもいた! 真夏のサンタクロース

東京大学准教授 五十嵐 圭日子

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

「夏のサンタクロース」とえいば南半球のクリスマスを想像するのが一般的だろう。オーストラリアやニュージーランドで、サンタクロースがビーチで昼寝をしていたり、サーフィンに乗ってやってきたりする映像はおなじみだ。しかし、今回は北半球、しかもサンタクロースのふるさとであるフィンランドで私たち家族が出会った「夏のサンタさん」のお話である。

家族でヘルシンキに一時移住

前回「フィンランドでくつろぐ 『森の民』の休日」の原稿で書かせていただいたように、仕事の関係で年に数カ月フィンランドで暮らすようになったのだが、夏休みの間はさすがに1人では間が持たないし、せっかくの機会なので家族全員をフィンランドに呼び寄せることにした。私が仕事をしている間にも家族が観光できるようにと、ヘルシンキ市内でアパートを借りることにした。

私たちが選んだのは長期(月単位)で借りることができるアパート。場所はヘルシンキの中心から南西の方向に進んだ「プナブオリ地区」というところで、表通りにはフィンランドの小さなデザインショップがちょこちょことあるような場所である。アパートの裏にはシネブリュコフ公園(シネブリュコフ美術館のお庭)があって、朝そこを散歩すると、北欧独特のすがすがしさが本当に心地よい。さらに、その美術館の前にあるヒエタラハティでは、夏の間は毎日「ノミの市」が開催されるということもあって、朝早くから出店準備をしている人々を見ることができる。私はアパートから公園を抜けて、ノミの市を横目に見ながらバス停まで5分ほど歩き、15分ほどバスで揺られるという生活を1カ月半ほどした。

不思議なオフィス

こんなご機嫌な通勤をし始めてから1週間ほどたったある日、バス停まで歩く途中でショーウインドーにデジタルの数字が書かれたカウンターや招き猫、スノードームが置かれた不思議なオフィスに目がとまった。フィンランドの人は、夏場は朝が早いのに、そこは午前8時でも人のいる気配は無く、そうかといって帰り(午後4時ごろ)に前を通っても扉が開いているのを見たことがなかった。扉一面にサンタクロースの写真が貼ってあるのも変だなぁと思っていたのだが、フィンランドだしサンタクロース自体が珍しいことでもないので、見るともなく毎日通勤していた。

ある日、そこのオフィスが開いていて、扉は裏になっているのにやっぱりサンタさんの全身像の写真が貼られていて、しかも入り口の横にはサンタさんの衣装が掛けられている。奥の方をちらっと見ると、オフィスの机に向かってかなり体格の良いおじさんが座っている。私はいったん通り過ぎたものの、すぐにとって返し、開いた扉をノックした。

中から出てきたのは、ジーンズこそはいているものの、赤いシャツに隠れたかっぷくのよいおなかも、胸の辺りまで伸びた白い(グレー?)ひげも、感じの良い笑顔も間違いなく「サンタさん」なのである。いきなりオフィスを訪れたことをわびながら、今年からフィンランドで働き始めた日本人であることを自己紹介し、もしかしてサンタクロースと関係があるのではないかと思ってつい入ってしまったことを話すと、彼はニコっと笑って言った。「当たり前じゃないか、ここはサンタクロースのオフィスで、私はサンタクロースなんだから」

私は通勤途中であることも忘れてサンタさんと話を始めてしまった。彼は日本が大好きで何度も訪れていること、だからショーウインドーに招き猫が置いてあることなどを話してくれた。「すいません、実は今、家族もこっちへ来ているので、話の続きを子供たちにしていただけないでしょうか?」と頼むと、今日はこれから忙しいけれど、あすの朝オフィスに来てくれたら色々話せるよと言ってくれた。「その時はあれを着た方がよいか?」と入り口にかけられたサンタさんの衣装を指さしながら聞かれた。「さすがにフル装備は暑いでしょうから、気にしないでください」と言い残し、私はバス停へ急ぎながら家族に「あすの朝サンタさんに会うから、今から準備しておくように」とのメッセージを送ったのだった。

Are you Santa Claus?

翌日、約束通りにオフィスを訪れると、きのうと同じ赤いシャツにジーンズといういでたちで、「よく来たね!」と出迎えてくれた。

小学生の娘2人は彼の姿を見るなり舞い上がってしまい、前日に一生懸命練習した自己紹介もままならない状態。中学生の長男はというと、学校ではすでに「サンタなんかいねーよ」という環境から、まさかの本物との遭遇。前日に「サンタさんへの質問をちゃんと英語で考えておくように」という私からの注文に、「Are you Santa Claus?(あなたはサンタクロースですか?)」という(おばかな)質問をして「Of course(もちろんそうさ)」と言われ、さらに「Santa Claus」と書かれた名刺までもらい、完全にパニック状態であった。

色々と話を聞くと、彼はすでに50年以上サンタクロースであること、東日本大震災の直後に被災者を励ますため、一番に日本を訪れてくれたサンタさんだったこと、さらに人間としての誕生日は私の家族が帰国する前日であることなどまで小一時間話してくれて、別れるときに日本を訪れた時のことが書かれた本をプレゼントにくれた。帰り際に「そう言えば私の愛車は日本車なんだよ」と言って紹介してくれたのは、「Santa Claus」と書かれたホンダのフィットで、もちろん赤色である。やっぱり街中を走るのには小回りもきくし、これがいいんだと言っていた。

サンタさんへのプレゼント

夏の終わりも近づいたころ、「サンタさんからプレゼントをもらう子は多いけど、サンタさんにプレゼントをするのはめったにない機会だぞ」と言って、誕生日プレゼントを渡しに再びサンタさんのオフィスへ行った。日本のものをあげたかったのだが、さすがに帰国直前ではお土産もほとんど尽きていたので、大学のマグカップを渡したところ本当に喜んでくれて、家族も満足して帰国した。

私自身は夏の滞在を終えて帰国し、その後日本で数カ月仕事をしてから、11月に1年の仕事の締めくくりをしにもう一度フィンランドに戻った。日本からの渡航直前に「今回もサンタさんに会うかも」と末娘に言うと、いそいそと紙に何かを書いている。さすがに11月ともなるとクリスマスが気になり始める時期で、もちろんリクエストの手紙である。ただし、ビジネスメールのように「夏休みはおせわになりました」という書き出しで、思いのほか、翻訳には苦労した。

その手紙をサンタさんのオフィスに届けると、翌日には私宛てに電子メールで「まかせてくれ!」との返信。12月になると自宅に娘宛ての手紙が届き、夏に来てくれたことへのお礼と、オーロラがどうやってつくられているか(科学的ではなく、すごく神秘的な話)が書かれていて、娘は本当に喜び、良い子でクリスマスを迎えることを約束したのだった。

サンタクロースは実在する? しない?

一緒に写真を撮ってもらうときに、道行く人に彼がスマートフォンを渡しながら「私はサンタだけどシャッターを押してくれないか?」と頼んでいる様子を見て、フィンランドはサンタクロースが生まれただけでなく、今でも生きている国なんだということを強く感じたのだった。

帰国してから「本物のサンタ」に会った息子がどう思い、周りの友達がどう受け止めているのかは不明であるが、私たち家族が「夏のサンタさん」に会ったのは事実であるし、フィンランドではサンタクロースが何も気取らずに現代の都市で生活していることも紛れもない事実である。もし私が近所の子供から「サンタクロースって本当にいるの?」と聞かれたら「もちろん、フィンランドにいるんだよ」と胸を張って答えられる。

五十嵐圭日子(いがらし・きよひこ)
東京大学准教授、フィンランド技術研究センター(VTT)客員教授
東京大学農学部林産学科卒、同大大学院農学生命学研究科生物材料科学専攻博士課程修了。2009年から同大学院農学生命学研究科の准教授。バイオマスを分解する酵素の研究で、米科学誌「サイエンス」を含む100を超える論文の著者であるとともに、ギネス世界記録も保持する。2016年からVTTで客員教授も務める。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_