生きた菌を生食できるヨーグルトと納豆
発酵食品の健康効果といえば、整腸作用を思い浮かべる人が多いだろう。例えば、「ヨーグルトの乳酸菌は、生きて腸まで届き善玉菌として働く。だから、腸内環境が良くなる」ということはイメージしやすい。
しかし、生きた微生物(細菌、カビ、酵母など)が含まれている発酵食品は意外に少ないことをご存じだろうか。
「例えば、酢は酒に酢酸菌を加えて発酵させたものですが、最後に加熱処理を行うため、出来上がりには酢酸菌は含まれません。また、パンは酵母が発酵するときに排出する炭酸ガスを利用して生地を膨らませますが、焼くと酵母は死んでしまいます」(小泉さん)
つまり、製造工程では微生物が生きていても、製品となった段階では死んでいる場合が多いのだ。味噌のように製造工程で加熱処理をしないものもあるが、調理の段階で加熱すると麹菌や乳酸菌、酵母は死んでしまう。つまり、グツグツ煮た味噌汁には生きた微生物は含まれていない。

「生きた微生物を腸に入れる」という観点で整腸作用が期待できる発酵食品は限られる。それは、ヨーグルトと納豆だと小泉さん(ぬか漬けやキムチなどの漬物からも生きた微生物はとれるが、確実性が高く、効率よくとれるのはこの2つだという。漬物については第2回で解説する)。
ヨーグルトは牛乳に乳酸菌を、納豆は大豆に納豆菌を加えて発酵させたものだが、どちらも短時間で急激に菌数を増やし、長期間発酵、熟成させずに出荷する。そして、生で食べる。つまり、この2つの発酵食品は、生きた菌を菌数がピークの状態で口にすることができるレアケースなのだという。
もっとも、菌が死んでいるからといって、健康効果が期待できないわけではない。
「そもそも発酵とは、米が麹菌や酵母の働きで日本酒になるように、もとの食品が微生物(細菌、カビ、酵母など)の作用で別のものに変化することをいいます」(小泉さん)
つまり、発酵食品は本来、「微生物が生きているかどうか」というよりも、「微生物が何を作り出すか」という点に着目して作られたものだといえる。たとえ微生物が死んでいても、微生物が作り出したものに健康効果があるものも多い。それは、整腸作用に限らない。