無難に選ぶなら洋菓子? 「チョコ返し」も人気
では、実際にはどのようなお返しが選ばれているのだろうか。これまでに紹介したお菓子だけでなく、下着や花を贈ろうとキャンペーンを展開する企業もある。下着に関しては、ホワイトデー黎明期の80年代頃からワコールが「ショーツを贈ろう」というギフトキャンペーンを展開している。
「ショーツは実用性があり、サイズ選びも容易。しかし下着を贈ることに抵抗を感じる人もいるため、過去にはパッケージを薬のカプセル風や恋愛映画のビデオケース風にするなどして、一定の成果をあげています」(ワコール 石川桃子さん)
一方、阪神梅田本店の担当者は「近年は下着やアクセサリーなどの好みが分かれるものより、無難な洋菓子が人気」と語る。同社が今年行ったアンケートでは、「ホワイトデーのお返しにほしいもの」に78.7パーセントの女性がスイーツを挙げた。さらに、うち4割がほしいスイーツの種類に「チーズケーキ」を挙げており、「男性の3人に1人がチーズケーキを贈ったことがあり、うち9割が喜ばれた」という結果もあったことから、今年はチーズケーキを大々的に打ち出す。
阪急うめだ本店も無難なのは洋菓子とした上で、お菓子以外なら「ハンドクリームやバスグッズなど消耗品が手軽で人気」(阪急うめだ本店 林秀之さん)。さらに、チョコにチョコをお返しする動きが目立っていることから、ホワイトデーでもチョコレートの特設ショップを充実させる予定だ。
「チョコ返し」に限らず、林さんによると「バレンタインデーで買い逃した海外ブランドのチョコを、ホワイトデーで購入する女性も増えている」。お返しを待つのではなく、バレンタインデーの変化に伴い、女性が自ら楽しむイベントとしての側面も生まれつつある。
一方、高島屋新宿店婦人洋品ストアバイヤーの江崎由美子さんは「男性から女性へ贈るという構図は基本的に変わらない」とし、「男性のセンスが問われる日」と話す。同店では、今年のホワイトデーはハンカチーフを大きく打ち出す。特設会場とハンカチーフ売場では、15点以上購入した人向けに配送先1カ所に限り配送料を無料とし、男性客が気軽に買い物できるサービスも行う。
「20~40代の女性の中で、手首やハンドバッグの持ち手などにスカーフを巻くのがトレンドになっています。スカーフは少し高額ですが、同じように使える大判ハンカチーフなら2000円程度です。もともとハンカチーフはギフトの定番。ここ数年のお返しはスイーツの人気が高かったので、あえてハンカチーフを贈ることで差がつくと思います」(江崎さん)
無難に選ぶか、あえて外すか。ちなみに阪急阪神百貨店が2016年に行った意識調査によると、「お返しにメッセージカードが添えられているとうれしい」と答えた女性が64パーセントだったのに対し、実際にカードを添えた男性はわずか1割程度だった。センスも大事だが、気持ちを伝えることが肝心といえそうだ。
(ライター 小沼理=かみゆ)