笑いのツボが似ている彼 でも「遠距離」の壁は厚く
[中原聡子さん(仮名) 第3回]
こんにちは。ライターの大宮です。銀座にある和食店で、人材紹介会社の管理職である中原聡子さん(仮名、42歳)のお話を聞いています(前回記事:「実らなかった恋は、いつまでも美しい」)。39歳のときに初めて故郷の北海道を離れて上京した経歴を持つ聡子さん。上京する1年前に、仕事関係で知り合った3歳年上の会社員、大介さん(仮名)とお付き合いしていたそうです。
「穏やかな人でした。嫌いなタイプじゃないな、と思っていたら彼のほうからアプローチしてくれたんです。笑いのツボが私と似ていて、しょうもないことで笑い合えるところが好きでした」
さらりと話してくれる聡子さん。彼女の話には、自立して働く女性が理想とする男性像が詰め込まれていると僕は感じます。
「結婚できたらいいなとは思っていた」
まずは社会的立場。同じ業種である必要はないけれど、仕事に対する姿勢は共有できる相手がいいですよね。お互いに仕事の愚痴をこぼしたり励まし合ったりできたら最高です。仕事関係で知り合った会社員の男性であれば、聡子さんの立場や気持ちを理解しやすいでしょう。
次に性格。結婚まで視野に入れて付き合うのであれば、穏やかさは必須です。話はすごく面白いけれど情緒不安定だったりする人は要注意。DV傾向がある人からは全速力で逃げ出すべきです。
様々なストレスから我が身を適切に守り、できるだけ機嫌よく健康に過ごす――。現代社会人の必須スキルですね。大介さんはこのスキルを身につけていたのでしょう。
共働き夫婦の場合は、家事の分担などで思いやりをベースとした話し合いが必要となる局面が増えます。落ち着いてコミュニケーションができる相手であることは大切です。「笑いのツボ」まで似ているなんてバッチリですね。
当初、聡子さんは大介さんを「嫌いなタイプじゃない」と思っていた程度でした。言葉を変えれば、「生理的に無理じゃない」ですよね。この感覚は大事にしたほうがいいと思います。
30代半ばを過ぎると10代20代のようには大恋愛はしなくなりますよね。一方で、「いい人なんだけど親しく付き合うのは無理」な人は増えたりします。どんなに外見が好みでも、社会人としてのマナーに欠けていたりすると気持ちが冷めたりしますよね。だからこそ、「嫌いじゃない」人は貴重なのです。その人が積極的にアプローチしてくれたのだから幸運そのもの。がっちりつかむべきだと思います。
ただし、聡子さんと大介さんの間には課題がありました。大介さんは東京在住であり、出張で北海道に滞在しているときに聡子さんと出会って恋をしたのです。付き合いを始めてからは遠距離恋愛が続き、そのうちに大介さんは前の彼女の元に戻ってしまったのでした。
「結婚できたらいいなとは思っていました。でも、女の私からそんなことは言えません」
大介さんと別れてからわずか数カ月後、聡子さんは東京本社への異動を決めます。もっと早めに上京していたら大介さんと結ばれていたかもしれませんね。
婚活と仕事のジレンマに悩み…
なんだか淡々としている聡子さんに聞いてみたいことがあります。これから結婚するつもりはあるのでしょうか。
「周りからもいつも同じようなことを聞かれるんです。ちっとも焦っていないように見える、と。もちろん、焦っていますよ。結婚したいとも思っています。でも、どうしたらいいのかわからないんです。日々の仕事もあるし、おなかがすけば食事もしなければなりません。いつも結婚のことばかり考えているわけにはいきません」
少しお酒が進んだせいなのか、かすかに声を荒らげる聡子さん。僕は愚問を発してしまったことに気づきました。
結婚はすぐにでもしたいけれど、仕事もあるので婚活ばかりしているわけにもいかない。日々の生活もできれば楽しみたい。でも、婚活に力を入れなければ結婚できる可能性が低くなってしまう気がする――。このジレンマにひそかに苦しんでいる人は少なくないと思います。続きはまた来週。
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京もしくは愛知で毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/
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