シニア消費の鍵を握る「モラトリアムおじさん」とは?シニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏に聞く(3)

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司
シニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏
シニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏

東京五輪・パラリンピック後の「post2020」に、日本は少子高齢化と人口減少が続き、消費市場の縮小が避けられないが、市場の中でシニアの存在感は着実に大きくなる。シニアマーケットコンサルタントの堀内裕子氏は、生活に変化や刺激を求めているものの、具体的な行動に踏み出せない「セカンドライフモラトリアム」と呼ぶシニア層の存在に着目。この層の消費意欲を呼び覚ませば、日本は経済活性化の糸口が見えてくるという。(聞き手は公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司)

藤田 ビデオリサーチの「ひと研究所」と共同でシニア市場について調査研究した成果を「新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ!」(ダイヤモンド社)としてまとめていますね。企業がシニア市場でビジネスを展開するうえで、何が鍵になるのですか。

堀内 シニアについて深く研究した結果、やはりシニアは多様性に富んでいると実感しました。長年の経験で培ったものも多く、複雑な属性を持っています。その複雑なシニアを理解するために、人が行動を選択する背景には、その人の価値観が大きく影響していると考えました。各種の定量調査や定性調査を実施し、この価値観を踏まえてシニアを分析した結果、シニア市場を考えるうえで重要な「新型シニア」の存在が明らかになりました。

藤田 具体的には、どのような分析によって、どんな高齢者たちの姿が見えてきたのでしょうか。

堀内 縦横2軸の図を使い、シニアを分類しました。縦軸の「行動軸」は行動が「積極的」か、「慎重・控えめ」か。横軸の「志向軸」では「変化・刺激」を求めるのか、「伝統・保守」を重視するのかといった価値観によって違いを見ます。その結果、6つのグループをプロットすることができました。まず(1)の「社会派インディペンデント」は人とのつながりを大事にして、新しい人脈を築くことや世代を超えた交流にも意欲的です。(2)の「ラブ・マイライフ」は若さ・美への追求心やアンチエイジング(抗加齢)意識が強く、新しい物好きで情報通。流行にも敏感です。

(1)社会派インディペンデント=新しい人脈の構築や世代を超えた交流に意欲的なタイプ イラストはいずれもビデオリサーチ提供
(2)ラブ・マイライフ=新しい物好きで情報通。流行にも敏感なタイプ

藤田 (3)の「セカンドライフモラトリアム」は多数派を形成している印象です。どんな特徴があるのですか。

堀内 セカンドライフモラトリアムは現役時代には「企業人」「会社人間」ともいわれた人たちで、組織人として働いてきた人が多い層になります。社会に取り残される不安が強く、これからの人生をどう過ごしたらよいのかを模索しています。変化・刺激を求めるものの、何をやってよいかが分からず、仮に興味や関心があることを見つけても誰かが背中を押してくれないと、一歩が踏み出せません。あるいは、その一歩を踏み出すためには「大義名分」が必要になります。お金も体力も時間もあるのにやることが見つからない今の状況に不満を覚え、「会社にいた方が楽だった」と悶々(もんもん)としています。

藤田 これが「新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ!」という本の題名に出てくるシニア男性のイメージですね。

(3)セカンドライフモラトリアム=変化・刺激を求めるものの、興味があることに踏み出せないタイプ
(4)身の丈リアリスト=「お金がない」と口にすることが多く、消費意欲が低いタイプ

堀内 (4)の「身の丈リアリスト」は何かと「お金がない」「お金がかかるからできない」という諦め感を口にすることが多くみられるタイプです。特に資産が少ないわけではありませんが、使う意欲が低いのが特徴です。(5)の「アクティブトラッド」はリタイアして悠々自適に暮らしている人が多く、お金も時間もあり、消費も行動も積極的ですが、保守的な考え方が強い傾向にあります。変化や刺激を望まず、伝統的、保守的な価値観の持ち主です。(6)の「淡々コンサバ」は現在の生活に不満はなく、これ以上に多くを望まない人たちです。強い主張も持たず、淡々と平穏な暮らしを送っています。孫の話題にとても敏感なグループです。