孫正義氏 「本音で話す」トランプ大統領に胸中複雑

ソフトバンクグループ社長の孫正義氏(8日の決算会見)
ソフトバンクグループ社長の孫正義氏(8日の決算会見)

昨年末、米国のトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領など世界のVIPと華麗なる交流関係を見せつけたソフトバンクグループ社長の孫正義氏。8日、東京都内で開いた決算発表会見では、報道各社からトランプ大統領に対するコメントを次々求められ、珍しく口ごもる場面があった。関係の深い米アップルなどシリコンバレー企業は「反トランプ」一色なだけに複雑な胸中のようだ。

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「政治まわりのコメントは差し控えたい」。孫氏はイスラム圏7カ国の市民らの入国を一時禁じる米国の大統領令について、報道各社からしつこくコメントを求められたが、終始慎重だった。2016年12月上旬、大統領就任前のトランプ氏に面会。500億ドル(約5兆6000億円)の対米投資と5万人の雇用創出を約束し、ニューヨーク市内にあるトランプ氏の「トランプタワー」で歓待された。

米国内で計8000人の雇用創出

トランプ氏から親しみを込めて「マサ」と呼ばれ、いきなり米大統領と最も親しい「日本人」となった孫氏。早速約束を実行し、マイアミにある3000人規模の企業を買収。8日の記者会見でも、ソフトバンクグループ傘下の米携帯電話大手スプリントについて「米国内のコールセンターで5000人の雇用を創出する」と強調した。しかもスプリントの海外のコールセンター要員2万人をデジタル化などにより合理化して、わざわざ米国で新規雇用をつくるという力のいれようだ。

孫氏はスプリントを核にした米携帯電話業界での再編をにらんでおり、通信当局のトップ人事を握るトランプ大統領とは距離感をつめたいところ。経済政策についても「規制緩和型」と評す。人柄についても「本音で話す、ざっくばらんなタイプ」と好意的だ。だが、孫氏が新たな拠点とするシリコンバレーのIT(情報技術)企業群はいずれも「反トランプ」。米国現地時間の6日には、トランプ大統領の移民規制に反対するとして、アップルやグーグル、マイクロソフト、フェイスブックなどIT企業約100社が連名で裁判所に法的意見書を提出した。

IT分野に積極投資している孫氏だが、あまりトランプ大統領に肩入れすると、肝心の米IT業界から嫌われかねない。

孫氏、日本の政治家とは微妙な距離

「人たらし」と呼ばれる孫氏。これはと思った実業家にはアッという間に食い込んできた。しかし、日本の政治家とは微妙な距離をとった。実は親しい政治家もいるが、派手な付き合いは控えた。

それが堰(せき)を切ったようにトランプ氏やプーチン大統領など世界トップクラスの政治家との交友をアピール。昨年12月中旬、プーチン大統領が来日した際も、抱き合うようなパフォーマンスを披露し、メディアの関心をひいた。8日の記者会見でも「ロシアにも有能な技術者や起業家は少なくない。友人もいる。投資先としても魅力的だ」と語った。

ソフトバンク関係者は「この半年で孫さんは世界のVIPとつきあえるトップステージに立った。英アームの買収に成功したり、サウジアラビアと10兆円ファンド創設を計画したりし、世界的なリッチマンとして認知された」と話す。常に沈着冷静な孫氏。世界のVIPとの付き合いで有頂天になっているとは思えないが、好事魔多しだ。グローバル社会で政治が激しくうねるなか、世界のIT業界のなかで孫氏はどのように自らを位置づけ、振る舞うのか。希代の起業家からますます目が離せなくなってきた。

(代慶達也)

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