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睡眠

頭も体も測定機だらけ 睡眠研究はココまでやるの?

2017/3/7

(イラスト:三島由美子)

 前回は人の睡眠や体内時計の特徴を正確に知るために必要な“異時間空間”とも言える隔離実験室の様子についてご紹介した。そこで今回は、実際に隔離実験室の中で行われている具体的な実験手法について触れてみよう。そこでは睡眠脳波、眠気、体温、ホルモン分泌などさまざまな生体機能を測定するために頭や顔や体がコードと接着テープ、バンドだらけになっている人々がいる。

これは光環境と生体リズムの関係を調べる実験での様子。(写真:三島和夫)

 まず睡眠の質や異常の有無を判定するために「睡眠ポリグラフ検査(Polysomnography; PSG)」が行われる。まさにこの原稿を書いている晩もある新しい睡眠研究用デバイスの性能を調べるためにPSGを行っている最中である。

 Poly(多チャンネル)-somno(睡眠)-graphy(記録法)の名前の通り、PSGでは睡眠中の脳波、眼球運動、顎や手足の筋活動、心電図、胸や腹の動き、鼻からの呼気流量など多くの生体機能を測定する。これらの記録はレム睡眠とノンレム睡眠の区別、睡眠の深さを調べるだけではなく、さまざまな睡眠障害の鑑別診断にとってどれ1つとして欠かすことができない。

(写真:三島和夫)

 睡眠状態は翌日の日中(覚醒時)の眠気や体調にダイレクトに影響する。例えば、睡眠障害では夜間睡眠そのものも大事だが、実生活では日中の眠気や脳機能が障害されることが最も問題になる。そのため、睡眠検査と日中検査はセットで調べることも多い。

 日中の眠気を調べる一番オーソドックスな方法は「反復入眠潜時検査」と呼ばれるもので、日中2時間おきに4回または5回にわたって、暗室で脳波、眼球運動、筋電図を測定し、入眠するまでの時間(入眠潜時)を計る。入眠潜時を繰り返し測定する理由は、眠気の日内変動を正確に捉えるためである。

■病的な眠気があると判断される基準は?

 1回の測定は入眠した段階で終了。入眠できなくても最長20分で終了する。年齢によっても異なるが、十分な睡眠をとって全く眠気がないときは4回(もしくは5回)の入眠潜時は平均して10分以上かかる。20分間入眠できない回もあるが、大なり小なり睡眠不足を抱えているためだろう、多くの人は途中で寝てしまう。健康な被験者の中ですら、平均入眠潜時が20分という強者にはこの数年間一度もお目にかからない。

 反復入眠潜時検査では実際に寝込むまでの時間を計るため、その結果は実生活で感じる眠気とよく合致する。そのため睡眠障害の診断基準にも採用されており、平均入眠潜時が8分未満であると病的な眠気があると診断される。

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