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デキない上司の下で出世できますか 20代から考える出世戦略(1)

2017/2/14

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 今回から形式を少し変更して、人事の仕組みの観点から、どのように出世や働き方と向き合っていくのかを考えてみることにしました。特に20代から30代の若手の悩みに対して、重点的に答えていきたいと思います。

 初回はとあるSI企業に勤めている方からの相談です(内容は、個人が特定できないように多少アレンジしています)。

【出世と働き方の悩み】
 大手SI企業に入社4年目の26才です。大規模プロジェクトでプログラミングやシステムテストの経験を積んできたので、そろそろ上流工程に関わりなさい、と小さめの新しいプロジェクトに配属されました。配属されてまだ半年なんですが、どうもリーダーであるマネジャーがデキない人なんじゃないか、と思い始めました。クライアントとのミーティングではよく居眠りしているし、作業指示もふわっとした感じです。作業を進め出してから細かい修正指示をしてくるので、手戻りも多くてなかなか作業がはかどりません。他にも参加しているメンバーが何人かいるのですが、先輩にあたるそのうちの一人が実質的にプロジェクトを切り盛りしています。けれどもこの先輩はプロジェクトの別チームで、直接関わることがありません。
 先日、配属後半年目ということでリーダーとの面談をしたのですが、「全然パフォーマンスが出ていない」と注意されました。けれども、リーダーから指示された以上の事は十分にできているつもりです。
 僕としてはもっとガンガン仕事もしたいし、新しい経験もしたいのですが、このままだと評価も悪くなりそうです。ちょうど今年が、社内の昇格判断の年にあたるので、今年評価が悪いと、同期との差ができてしまうことが不安です。どうすればいいでしょう。

■昭和の回答と身近な先輩のアドバイス

 このような悩みに対して、昭和の価値観で働いてきた人は「上司は選べない。人事は天命だ。だから、今いる場所でまずはしっかり結果を出すことだ。そうすれば少しくらい遅れても見ている人は見ているだろう。あと、そもそも君の方にも問題があるんじゃないのか?」と答えるでしょう。それはそれでひとつの答えではありますが、言われた方に、もやもやした気持ちが強くなりそうです。

 「まずは転職エージェントに登録しておくといいよ。実際に転職するかどうかは別。いざとなれば今の会社にしがみつかなくてもいいと思えることが、メンタル的な助けにもなるからね。それに経験は1社だけて積む時代じゃないよ」ということは、転職を経験している30代~40代の先輩の助言に多いのではないでしょうか。

 転職エージェントへの登録は良い選択肢です。一つの会社の中だけで出世していく必要はありませんし、つながりが増えるほどチャンスは増えるからです。

 ただ、「それって逃げるってことになりませんか?」という疑問を持ってしまう人がいることも事実です。逃げることは恥ずかしくないし、逃げた方が良い場合は多いのですが、目の前の仕事に対して真面目な人ほどそういう割り切りが難しいかもしれません。

■悩みの本質を確認する

 この質問者の悩みは、上司がデキない人ということでしょうか。

 彼が一番悩んでいることは「同期に出世で後れをとるかもしれない」という点にあります。

 だから本質的には、「思うように結果を出せていない状態」が悩みの本質であり、「自分を導いてくれるはずの上司が自分の成長に役に立っていないことに対する苛立ち」が浮かび上がってきます。

 「だからガマンしろ」という回答も、「転職の準備をすればいいよ」という回答も、本人の悩みの解消には直結しづらいのです。となれば彼が選択できる行動は、デキない上司のもとでも評価を高めること、だけでしょうか。

 ここでぜひ確認してみていただきたいのは、会社の昇格判断の仕組みです。オープンな会社であれば、以下のような手順が公開されている場合もあります。。公開されていない会社であれば、ぜひ人事部門に確認してみましょう。

 年度初めが4月の会社であれば、たいてい1月から2月にかけて、上記のようなプロセスで昇格判断が行われます。まず最初に、過去の評価履歴から、昇格の候補者を選び出します。そしてそれらの候補者に対して、上司による推薦判断を求めます。

 ときには評価履歴としては昇格候補にはあがらないけれど、上司が強く推薦することで候補にあがる人もいます。

 それらの推薦結果をもとに、昇格審査が行われます。昇格審査では、ペーパーテストや論文評価、面接などさまざまな確認がされますが、その結果については、管理職以上の合議で判断されることが多いようです。そして最終的に役員や社長判断で昇格が決まります。

■上司を使いこなすことが基本

 このような人事の仕組みであれば、考えられる選択肢は二つあります。

 第一に評価履歴と上司推薦ですが、過去の評価が悪くないことを前提とするならば、今期の評価と上司からの信頼を取り戻す必要があります。これが課長への昇格判断であれば評価履歴や上司推薦はそれほど重視されませんが、20代であればおそらく大きな影響を持っています。昇格しても仕事の内容が大きく変わらないのであれば、卒業要件での審査が有効だからです(卒業基準については、「評価の低いあの人が、なぜ出世するのか?(上)」の記事を参照)。ですから、どうすれば今のデキない上司に評価されるかを考えなくてはいけません。面白みのない回答になってしまいますが、仕組みがそうなっている以上は、要はデキない上司であっても、どんどんくらいついていくことが求められます。案外、デキないと思っている上司も、距離を縮めてみればデキる人なのかもしれませんし。

 またこれは上司をマネジメントするスキルとして、企業組織にいる限り将来にわたって有効なスキルでもあります。

■斜め上戦略が有効になる場面

 しかしごくまれに、本当にダメな上司の下についてしまうことがあります。仕事がデキないだけならまだマシで、自分よりも出世しそうな部下をつぶしにかかる人もいます。そんな時のためにとるべき行動は、斜め上の上司や先輩との関係を構築していくことです。

 一番手っ取り早いのは、人事部門の係長や課長たち。彼らとの関係を作っておくことで、デキない上司の下で埋もれる可能性をなくしてゆけます。会社によっては、上司推薦がなくても、人事部門からの推薦で昇格候補となる場合もあるからです。

 人事部門に声をかけることに少し躊躇する場合もあるかもしれません。しかし銀行などのお堅い業種であったとしても、近年、彼らは常に現場での人事課題を収集しようとしてます。また最近では、ハラスメントの実態についても特に注目しています。

 ただ、自分の出世可能性に対する不満をストレートに相談しても、まともに相手にされない可能性もあります。ですからこの質問のような場合であれば、上司に対する不満、ではなく、仕事やキャリアへの不安、として相談してみましょう。「〇〇さんのもとで半年頑張っているんですが、面談でも具体的な指示をいただけていません。僕の改善すべき点について、人事部門の立場から助言いただけませんでしょうか」というように尋ねてみれば、比較的相談にのってくれやすくなります。

 人事以外の他部署の上司との斜め上戦略も有効です。もちろん、昇格推薦という意味では彼らは助けてはくれません。しかし、自分自身の成長という観点では非常に有効です。

 今回の事例では実は、質問者が「上司がデキないから自分の評価が低くなってしまうのだ」という他責的な気持ちになってしまっていることが最大の問題です。そしてそのことについて、同じプロジェクトの先輩から忠告されたとしてもなかなか受け入れづらいでしょう。しかし斜め上からの忠告や意見であれば、まだ素直に聞きやすいのです。

 そうして自分の行動を客観的に振り返ることができれば、おのずと上司からの見た目も変わっていくことでしょう。

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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