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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。年末に「長時間労働問題に揺れる 電通のお膝元で売れる本」として紹介した伊賀泰代著『生産性』(ダイヤモンド社)が1月初旬に続いてなおビジネス書のトップ。『LIFE SHIFT』も相変わらず好調で、働き方が関心の中心にある傾向は変わらない。そんな中、新しく上位に食い込んできたのは、コミュニケーションスキルを扱ったベストセラーのコミック版だ。

女性編集者が主人公のストーリー漫画

その本は佐々木圭一著『まんがでわかる 伝え方が9割』(シナリオ・星井博文、作画・大舞キリコ、ダイヤモンド社)。『伝え方が9割』は2013年に大ヒットし、その年のビジネス書ベストセラーのナンバーワンになった。記憶している方も多いだろう。これをコミック化したのが本書だ。伝え方に悩む女性ファッション誌編集者を主人公に、謎のオネエが伝え方を伝授していくストーリーが漫画で展開していく。プロローグと全4章で構成され、章末にスキルをまとめた短い文章が差し挟まる。

著者の佐々木氏は数々のヒットを飛ばしてきたコピーライター。新入社員時代は伝えるのが苦手で、書いても書いても没になる日々を過ごしていく中で伝え方には技術があることを発見、そこから人生が一変したという。その技術こそ本書が提示するコミュニケーションスキルで、その骨格は書籍版と変わりない。「ノーをイエスに変える技術」と「強いコトバを作る5つの技術」を2本の柱とし、具体的な技術として提示する。

ノーをイエスに変えるステップ示す

「ノーをイエスに変える技術」には3つのステップがあり、そのステップは「自分の頭の中をそのままコトバにしない」「相手の頭の中を想像する」「相手のメリットと一致するお願いをつくる」の3つだ。例えばデートがしたいと思ったら、まずそれを口にせず、新しいもの好きでラーメン好きという相手だったら、その相手の頭の中を想像して「驚くほどおいしいラーメンどう?」と誘ってみる。こんなスキルだ。「私が膨大な時間とトライ&エラーで導き出した方法論を整理しました」というだけあって、わかりやすいスキルのガイドになっている。

体裁や提示の仕方を変えることで、親本刊行時には気づかなかった人やその後社会人になった人など、新しい読者を呼び込んでいるようだ。「女性が主人公の漫画で親しみがわくのか、手にとっていく女性のお客様が多い」と店長の大城優樹さんは話す。単行本をしばらく後に文庫化して市場を活性化するのと類似したベストセラーの再活性化策ともいえる。2015年にも『伝え方が9割 2』という続編を出しており、この本のテーマだと2年サイクルで読者層が入れ替わるとの読みなのかもしれない。

領収書スキルのコミック版も上位に

それでは、先週のベスト5を見ていこう。

(1)生産性伊賀泰代著(ダイヤモンド社)
(2)まんがでわかる 伝え方が9割佐々木圭一著(ダイヤモンド社)
(3)マッキンゼーが予測する未来リチャード・ドッブスほか著(ダイヤモンド社)
(3)LIFE SHIFTリンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)
(5)コミック版 あらゆる領収書は経費で落とせる大村大次郎原作監修、円茂竹縄漫画(KADOKAWA)

(リブロ汐留シオサイト店、2017年1月29日~2月5日)

最初に書いたように1位は『生産性』。『まんがでわかる 伝え方が9割』が2位に食い込む。3位は有力コンサルティングファームによる近未来予測本。いまほとんど知られていないような場所で進む都市化や技術進化、高齢化、データ利用の高速化でこれまでの常識や直観が通用しなくなる世界を描き出す。同率で『LIFE SHIFT』。5位もベストセラーのコミック版。刊行から2年ほどたつが、「確定申告や決算を控えるこの時期になると、こうしたジャンルの本がよく売れる」(大城さん)とのことだ。こちらも一種のビジネススキル本で、スキル伝授と漫画の相性は意外にいいのかもしれない。

(水柿武志)

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