空気清浄機トレンド 完全メンテフリー、大風量に注目
空気清浄機には大別すると、加湿器需要を含めた冬用の「加湿空気清浄機」と、2月上旬以降のスギ花粉症シーズンにピークを迎える一般的な「空気清浄機全体」の2つがある。加湿器需要はシーズンオフになるが、加湿機能も加えつつ、2017年の予測も含めた空気清浄機市場の動向を紹介していこう。
2016年はスマホ対応による「見える化」が拡大
まずは2016年に発売された空気清浄機のトレンドをおさらいしていこう。
大きなトピックは、ダイソンが4月に発売した「Pure Cool Link」(直販価格4万5800円~)と9月に発売した「Pure Hot+Cool Link」(直販価格7万2800円)、スウェーデンのブルーエアが9月に発売した「Blueair Classic」(写真は「Blueair Classic680i」、直販価格13万円)のスマホ対応だろう。
それぞれWi-Fi機能を内蔵し、スマホやタブレットから遠隔操作ができるだけでなく、内蔵センサーで検知した空気の汚れ具合、例えばPM2.5濃度やVOC(揮発性有機化合物)濃度などを時系列で確認できるというのがこれまでになかった大きな特徴だ。
以前は、空気清浄機の効果がセンサーのインジケーター(ニオイセンサーやPM2.5センサーなどの表示)程度でしか確認できなかった。これは、センサーが検知しているかどうかを確認できるに過ぎない。
しかしスマホ連携によって、部屋の空気がどれだけきれいなのか、反対にどれだけ汚れているのかがつぶさに観察できるようになった。「空気清浄機は本当に稼働しているのか、効果はあるのか」と懐疑的に感じていた人にとって、その効果がしっかりと確認できるのは大きな進化だろう。
2017年1月現在では、ダイソンとブルーエアの2社しかスマホ連携による"見える化"には対応していない[注]。空気清浄機は毎年9月から11月くらいにかけて新モデルが出てくるので、今秋にはスマホ対応による見える化機能を搭載した空気清浄機が複数のメーカーから出てくる可能性は大いにある。
[注]パナソニックは天井埋め込み型の空気清浄機とHEMS(ホームエネルギー管理システム)との連携によって空気の見える化を実現しているが、一般消費者向けの製品としてはまだ実現していない。
国内メーカーは「+加湿」、海外&ベンチャーは「空清特化」
さらに、最近の空気清浄機市場では2つの大きな流れがある。1つは国内メーカーを中心とした「加湿空気清浄機トレンド」と、もう1つは海外メーカーや国内ベンチャー企業を中心とした「空気清浄機能特化型大風量トレンド」だ。
国内メーカーはここしばらく、加湿機能を搭載した加湿空気清浄機を最上位モデルとして位置付けている。ファンで周囲の空気を吸い込んでフィルターでホコリや花粉などをこし取るだけでなく、シャープの「プラズマクラスター」やパナソニックの「ナノイー」、ダイキン工業の「アクティブプラズマイオン」などのイオン機能で除菌・脱臭などを実現。さらに加湿器を内蔵することで、冬場の乾燥を防ぐというものだ。
一方で、2010年にスウェーデンのブルーエアが国内市場に参入したときに強くアピールしたのが「大風量」だ。空気清浄機はファンで室内の空気を吸い込んでフィルターでこし取るのがメイン機能であり、大風量ファンで一気に吸引することに特化したことで人気となった。
2012年に参入したバルミューダや2013年に参入したカドーなどの国内ベンチャーも同様のコンセプトとなっている。2015年に参入したダイソンは風速を上げすぎないことでPM0.1(粒径0.1μmの微小粒子状物質)をもキャッチできるとアピールしているが、加湿機能付きではなく空気清浄機能特化型という点では共通している。
維持コストやメンテナンスの手間の違いもポイントだ。国内大手メーカーは「10年間フィルター交換不要」をうたっているが、その代わりプレフィルターの掃除などのメンテナンスが必要になる。そんななか、日立アプライアンスの「自動おそうじ クリエアシリーズ」のように、プレフィルターを自動的に掃除する機能を搭載する空気清浄機も登場した。すでにエアコンでは多くの機種に搭載されている機能なので、他社も追随する可能性は高い。
一方、ブルーエアなどは半年に1回フィルター交換が必要で、維持コストが高くなる反面、メンテナンスの手間が不要だ。
デザインの進化にも注目
ここ1~2年の間にデザインも進化し始めている。ブルーエアやダイソン、バルミューダ、カドーといったメーカーの空気清浄機はシンプルながらスタイリッシュなフォルムを採用し、性能だけでなくデザイン面もアピールしている。一方で従来の国内大手メーカー製空気清浄機は、デザイン面において洗練されていない製品が大半を占めていた。しかしスタイリッシュな製品の人気が上がるにつれ、高性能・多機能だけでなくデザイン面でもアピールする製品が増え始めている。
例えばダイキン工業の「MCK55T」などがそうだ。タワー型のスリムなフォルムだけでなく、カラーバリエーションもラインアップして人気となっている。パナソニックはプロダクトデザイナーの深澤直人氏がデザインを監修したモデルを発売。先ほど紹介した日立アプライアンスの「クリエアシリーズ」なども、これまでに比べて洗練されたデザインを採用している。そのほかに、シャープはコンパクトさとデザイン性を追求した「S-Styleシリーズ」をラインアップするなど、立ち遅れていたデザイン面でのてこ入れも進めている状況だ。2017年もその流れは加速していくことだろう。
(IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志)
[日経トレンディネット 2017年1月23日付の記事を再構成]
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