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五輪プロ化の象徴 スーパースター、カール・ルイス

オリパラ学(10)

2017/2/9 日本経済新聞 朝刊

五輪史上最大のスターは? と聞かれたら、やはりカール・ルイス(米国)と答える。1984年ロサンゼルス大会から96年アトランタ大会まで陸上男子走り幅跳びを4連覇。100メートル、200メートル、400メートルリレーを含めた陸上4種目で合計9個の金メダルを獲得した。

金メダルの数では競泳で23個のマイケル・フェルプス(米国)に遠く及ばないし、速さや強さなら、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)がルイスをしのぐだろう。ルイスが特別なのは、圧倒的な知名度を誇り、それまでは考えられなかったCM出演などで多額の報酬を手にし、五輪がアマチュアからプロの大会へと変容していくのを象徴する存在だったからだ。五輪アスリートのあり方は、ルイスの登場以前と以後に分けられる。

商業主義にかじを切った地元米国のロサンゼルス大会で、36年ベルリン大会のジェシー・オーエンス(米国)以来となる陸上4冠を達成。88年ソウル大会の百メートルはベン・ジョンソン(カナダ)に先着されたが、ドーピング発覚で金メダルを手にした。35歳で迎えた最後の大会は再び母国のアトランタが舞台。力の衰えに直面しながら、走り幅跳びで4度目の頂点に立った。

アトランタではルイスが最後に400メートルリレーに出場して有終の美を飾るのかどうかも議論となった。結局は走らなかったのだが、米国はカナダに完敗。カナダのアンカーは100メートルを制したドノバン・べーリーで、ルイスがいても結果は変わらなかっただろう。

それでもファンの多くは思った。「ルイスが走っていたら……」。五輪の女神に最も愛されたアスリートといえるだろう。ルイスの競技引退から今年で20年になる。(編集委員 北川和徳)

[日本経済新聞2017年2月9日付]

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