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百年洋食を味わい、時間旅行に浸る 日光金谷ホテル

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NIKKEI STYLE

栃木県日光市で140年以上前から営業を続ける日本最古のリゾートホテルが「日光金谷ホテル」だ。「日光虹鱒(ニジマス)のソテー金谷風」や「百年ライスカレー」といった、100年以上受け継がれてきた、ここでしか食べられない洋食がある。歴史を感じさせる素晴らしい建物も風格たっぷり。宿泊した著名な外国人や文化人にまつわるエピソードも交えて、このホテルの魅力を紹介する。

明治から受け継がれるソテー

明治時代から外国人の避暑地として発展してきた日光。肉や乳製品の入手が今より難しかった当時から、彼らの舌と胃袋を満足させ、洋食文化を連綿と紡いできたのが日光金谷ホテルだ。同ホテルの前身である「金谷カッテージ・イン」が開業したのは、1873(明治6)年のこと。1893年に2階建て30室、純洋式建築の「金谷ホテル」(当時の名称)を開業すると、外国人宿泊客に向けてステーキやカスタードプディングなど、本格的な西洋料理を提供するようになった。

明治時代に初代料理長・渡部朝太郎が考案し、歴代の料理長が現代まで受け継いできた伝統のメニューが、「日光虹鱒のソテー金谷風」だ。日本酒でフランベ(加熱調理中に酒を振りかける技法)して川魚特有のにおいを消し、外国人の舌にも合うようにバターとしょうゆ、砂糖で味つけしたソースで仕上げたもので、このホテルの看板料理である。大ぶりなニジマスはナイフがすっと入るほど身がやわらかく、濃いめのソースはしょうゆと砂糖の懐かしい風味が舌に心地よい。食通で知られる小説家の池波正太郎も、この味を気に入っていたという。

幻のカレーを復刻

蔵から見つかった大正時代のレシピ集をもとに再現し、創業130年の節目となる2003年から提供を始めたのが、「百年ライスカレー」だ。舌で覚えた「金谷の味」を守り続ける料理長が試行錯誤。ホテル創業者のひ孫で現会長の井上槙子さんは、「幼い頃の記憶と照らし合わせながら何度も試食して、復刻することができたんです」と語る。隠し味にココナツミルクやピクルスの漬け汁を使ったルーは辛さ控えめで、深いコクがあるやさしい味わい。ルーに合わせる具は、ビーフ、チキン、カモ、ニジマスのフライの4種類から選べる。

保管されている古いメニューにカレーが登場するのは、1904年のこと。20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライトは翌05年に宿泊しているので、もしかすると「百年ライスカレー」の原型を食べていたかもしれない……と想像すると、建築愛好家には興趣が尽きないことだろう。

古き良き時代の洋食をコースで満喫できる

日光金谷ホテルでは、100年以上受け継がれてきた伝統の味をコース料理として楽しめる「クラシックディナー」を提供している。これは、明治から昭和にかけて提供していた数多い料理の中から、特に選んだ逸品を再現したもの。くだんの「日光虹鱒のソテー金谷風」をはじめ、カニが入ったクリーミーな「大正コロッケット」やぜいたくにキャビアを使ったオードブルの「湖の黒ダイヤ レモン添え」など、全9品が楽しめる。

まだ日本で肉食が盛んでなかった時代、食材の入手には苦労したようだ。1926(大正15)年に自社で畜産部を設置し、牛乳やバター、野菜などの自給をスタートしていることからも、それは明らかだ。数々の料理には、限られた材料を使い、知恵を絞って外国人客をもてなそうという思いがこもっている。当時の最先端だった料理をいただき、歴史に思いをはせるのも一興だろう。

宣教師を助けたのが創業のきっかけ

日光金谷ホテルの前身、「金谷カッテージ・イン」は、もともと外国人専用の民宿として誕生した。創業のきっかけは、1871(明治4)年ごろ、宿泊場所に困っていた米国人宣教師を、創業者の金谷善一郎が厚意で自宅に招いて泊まらせたことだった。この宣教師は、ヘボン式ローマ字の発案者として知られる、ジェームス・カーティス・ヘボン博士。善一郎は博士のすすめをいれ、紹介状を持った外国人に向けて、自宅の空き室を開放することにしたのだ。

この宿が外国人客に知られる契機をつくったのは、英国の旅行家、イザベラ・バードである。彼女はヘボン博士の紹介で1878(明治11)年に2週間ほど宿泊し、日光東照宮など周辺の景勝地を訪ね歩いた。彼女は著書の中で「家の内にあるもの、外にあるもののすべてが目を楽しませてくれる」(「新訳 日本奥地紀行」平凡社)と、この宿を称賛。在日英字新聞などでも発表したことで、日本のリゾート避暑地・日光の宿泊施設として、「金谷カッテージ・イン」が日本在住の外国人に認知されるようになったのだ。

アインシュタインやヘレン・ケラーも宿泊

評判となった「金谷カッテージ・イン」は、増改築して宿泊客に対応していたが、それでも賄いきれなくなり、1893(明治26)年、現在の地に「金谷ホテル」を開業。栃木県で初めて電話に加入し(そのため電話番号の下4ケタは0001だ)、自家用水力発電所やボイラーによる給湯・暖房設備を設置するなど、近代的な設備を積極的に取り入れてサービス向上に努めた。日光御用邸ができると、日光は国内外の要人の社交の場としてさらに発展。金谷ホテルも外国王室や国内の宮家の宿泊という栄を受けた。

古い宿帳には、理論物理学者のアルベルト・アインシュタインや飛行家のチャールズ・リンドバーグ、"奇跡の人"ヘレン・ケラー、新渡戸稲造、夏目漱石といった、誰もが知る有名人の名が数多く記されており、感慨深い。1891年から残る宿帳の一部は、パネル化して本館ロビーに隣接した展示コーナーで公開しているので、来館の折に確かめてみてはいかがだろう。ちなみに夏目漱石は、本名である夏目金之助のイニシャルで「K Natume」と宿帳にサインしている。

<マメ知識>"夏場の外務省"と呼ばれた中禅寺湖畔
 幕末以降、日本の蒸し暑い夏に閉口した外国人が避暑地として注目したのが日光だった。中禅寺湖畔には、諸外国の大使館などの別荘が立ち並んだ。日本の上流階級も次々に訪れたことから大いににぎわい、"夏場の外務省"と呼ばれるほどだったという。スポーツフィッシングも、日光が人気を呼んだ理由の一つだ。1925(大正14)年、実業家のハンス・ハンターは、中禅寺湖西岸に「東京アングリング・エンド・カンツリー倶楽部」を設立。これは在日外交官と日本の上流階級を対象にした、マス釣りが主目的のリゾートクラブだ。各国の大使や日本の政財界の大物などが会員に名を連ねていたという。
 1929(昭和4)年に英国の第3王子グロスター公が日光を訪れた際、ハンターは自身の別荘であり、クラブハウスでもある「西六番別荘」に招いてもてなしたというから、その隆盛ぶりがうかがえる。ちなみにこのとき、別荘の食卓と厨房で活躍したのが、日光金谷ホテルから派遣された料理人とウエートレスである。

時間旅行ができる不思議な空間

日光金谷ホテルの本館は、3階建て。しかし、1893(明治26)年に建てられた当初は2階建てだった。実は現在の1階部分は、1936(昭和11)年に地面を掘り下げて増築したものなのだ。1~3階とも、基本構造はほとんど建てられた当時のまま維持されている。

館内でユニークなのが、「眠り猫」やデフォルメが効いた「想像の象」など、日光東照宮をイメージさせる彫刻が点在していること。創業者の金谷善一郎がもともと日光東照宮に楽師として勤めていた縁で、館内にこれらの彫刻を配置したのだ。ほかにも花鳥風月を描いた格天井(ごうてんじょう)や迦陵頻伽(かりょうびんが)の彫刻など、工芸的装飾があちこちにあり、目を楽しませてくれる。登録有形文化財に登録された空間に宿泊し、各所を見て回れるのは、価値がわかる人にとってはたまらない魅力だろう。

館内に配された調度品の数々は、長い時代を超えて宿泊客をもてなし続けてきたものだ。設備機器も、単なる実用品というより、趣あるアンティークといいたくなる風情が漂っている。電話やボイラー、スチーム暖房など、当時の日光としては画期的な新設備を次々と導入したのは、宿泊客に快適な滞在を提供するためだ。その時その時の最新施設が、長い時を経て見どころとなっている。建物全体が、タイムマシンがなくても時間旅行ができる不思議な空間といってもいいだろう。

名刺の裏に物語がある

スタッフの名刺を集めるのも楽しい。名刺の裏には、写真家のハービー・山口さんが館内の見どころを撮りおろした写真から、各スタッフが好きなものを選んで印刷してあるのだ。集めるとホテルの小さな写真集になるという寸法である。ホテルで広報を担当するある女性スタッフの名刺裏は、通称「竜宮」と呼ばれるコーナーの写真になっている。彼女はこの絵柄を選んだ理由を、「日帰りのお客さまはまず行かないような、奥まった場所を紹介したかったんです。夏の夕方に行くととても気持ちいい場所なんですよ」と語る。スタッフに館内や周辺の観光スポットの情報をたずねる際は、気軽に名刺をもらってみるといいだろう。

モダンなスイートルームも誕生

放送作家で、ゆるキャラ「くまモン」の生みの親として知られる小山薫堂さんは、このホテルの活性化にひと肌脱いでいる。ここに宿泊した際、感想や改善案を井上社長(当時)に伝えたことが縁で、2003年からアドバイザーを務めているのだ。名刺の裏に写真を入れるアイデアも、同氏が考えたもの。宿泊客とスタッフのコミュニケーションをより活性化しようという思いから生まれたものだ。

小山さんが「ホテルinホテル」と銘打ってプロデュースした2つの客室もユニークだ。モダンな空間に自身でセレクトした備品や設備を配し、オリジナル夜食や送迎などの特別サービスを展開。重厚な歴史を感じさせる日光金谷ホテルのたたずまいとはひと味違った宿泊が楽しめる。

また、施設改装のために取り壊した、アインシュタインも泊まった部屋を復活させるなど、歴史を生かした試みを展開しているのも興味深い。訪れてみれば、140年以上前から第一線で進化を続けてきたすごみがわかるはずだ。

(エフジー武蔵)

日光金谷ホテル
アクセス:東武鉄道日光線「東武日光駅」から金谷ホテルシャトルバスにて約10分
料金:1泊朝食付き(2人1室利用時) 1人1万7388円~
客室数:71室

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