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初心者の投信選び テーマ型、長期運用に不向き

2017/2/11

「初心者の投信選び」の5回目は「テーマ型投信」を取り上げます。特定の話題や材料に関する銘柄に投資するため投資家の関心を集めやすい一方、必ずしも長期運用に向かない面があるようです。屋久仁達夫さんが発表します。

筧花子(かけい・はなこ、50=上)経済大学院教授。家計の経済行動や資産形成、金融リテラシーが専門。 岡根知恵(おかね・ちえ、38=中)パート主婦。将来の家計に不安を覚え、金融知識を身に付けようと大学院に。 屋久仁達夫(やくに・たつお、54)大手製造業の技術職。定年を控え年金・介護など老後資金に関心。

岡根 テーマ型投信と言われても、中身がイメージしにくいです。

屋久仁 株式市場ではすべての銘柄が満遍なく売買されているのではなく、特定の話題や材料のある関連銘柄に売買が集まる傾向があります。こうした銘柄をテーマ株と呼び、テーマ型投信はテーマ株に重点的に投資するファンドと考えるといいでしょう。

 例を挙げて説明してください。

屋久仁 昨年ごろから注目を集めるテーマにロボティクスと人工知能(AI)があります。工場の生産工程の自動化、自動車の自動運転技術、難病患者の生活支援といった様々な分野でロボットやAIの活用が期待され、関連銘柄で運用する投信が売れています。例えば三井住友アセットマネジメントが昨年9月に設定した「グローバルAIファンド」は年末時点で純資産総額が2280億円に達しました。世界のAI関連企業に投資し、組み入れ上位はテスラやフェイスブックなど米企業が目立ちます。

 これまでも様々なテーマ型がありましたね。

屋久仁 過去に人気を集めた主なテーマ型を表にまとめました。IT(情報技術)、バイオ、資源、女性活用などと幅広く、当時の景気動向や産業構造、経済政策、社会情勢を反映しているのが特徴です。例えばITなら1990年代後半のITバブルが、2006年ごろの資源は中国など新興国での需要拡大が背景にあります。女性活用は安倍政権が14年にまとめた「新成長戦略」で女性の活躍促進を掲げたことが追い風になりました。

岡根 テーマ型はなぜ個人投資家の関心を集めやすいのでしょうか。

屋久仁 株式を購入する際は将来の値上がりが期待できる銘柄を選ぶのが前提ですよね。でも今後の業績拡大が見込める企業を見抜くのは簡単ではありません。テーマ型は身近な話題の関連銘柄に投資するので、事業内容を理解しやすく将来の利益成長をイメージしやすいのです。証券会社や銀行などの営業担当者にとって投資家に説明しやすいことも見逃せません。

岡根 なるほど。さっそく有望なテーマ型を買いに行ってきます。

 発表は最後まで聞いた方がいいですよ。屋久仁さん、テーマ型の注意点をお願いします。

屋久仁 まず知っておきたいのは、人気が盛り上がっているときに資金が短期間に集まり、一巡すると流出しやすいことです。「SRI・ジャパン・オープン」と「日興エコファンド」の純資産総額の推移をグラフにしてみました。いずれもピークに達したあと大きく減っています。

岡根 確かにその通りですね。

屋久仁 例えばSRI・ジャパン・オープンは企業の社会的責任(CSR)への取り組みを重視し、純資産総額は06年に600億円近くまで増えました。ライブドアの粉飾決算など企業の不祥事が続き、法令順守や社会貢献に関心が高まった時期です。その後はリーマン・ショックの影響で相場全体が冷え込んだこともあって、16年12月末で100億円あまりに減少しました。足元で日本株全体は持ち直していますが、CSRが旬のテーマから外れているため、純資産総額の低迷が続いているとの見方が出ています。

 もう一つ、大切な点がありますね。

屋久仁 テーマ型は特定の話題や材料が株式市場で注目されてから設定するのが一般的です。つまり関連銘柄の株価はすでに高値圏にあったり、ある程度上昇したりしているので上値余地が限られる可能性があります。投資家は場合によっては高値づかみになりかねません。値上がりが期待できないと人気がなくなり、売却で資金が流出するケースもあり得ます。

岡根 なるほど。

屋久仁 組み入れ銘柄の顔ぶれにも注意が必要です。特定の株価指数との連動を目指すインデックス型と銘柄が似ていたり、テーマとの関連性が薄い銘柄が組み入れ上位だったりすることがあるからです。環境やCSR、女性活用など企業の取り組みをテーマにする場合、積極的に進めているのは財務基盤が強く、余力のある大企業に限られがちです。もちろん運用会社独自の選別基準もあるところが大半ですが、急な換金に備えたり、リスク分散をしたりするため結果的に大型株を組み入れるケースがあります。テーマ型は指数を上回ることを求められるので、運用成績がインデックス型とあまり変わらないようだと投資する意味が薄れかねません。

岡根 テーマ型への投資は慎重に考えたほうがいい気がしてきました。

屋久仁 将来の成長性に強く期待できたり、テーマに共感できたりする投信がある場合は選択肢になるかもしれませんが、長期運用の中心にするのは避けるのが無難です。ファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦さんは「短期的な余裕資金があるなら、全体の成績の底上げ手段として割り切って投資するのが一案」と助言しています。

■純資産総額50億円以上を
ファイナンシャルプランナー 深野康彦さん
テーマ型や毎月分配型は長期運用に向きませんが、それ以外ならどのタイプでも構わないわけではありません。長期の資産形成に利用するなら、新規設定の投信は避けた方がいいでしょう。運用の実績がなく、運用担当者の腕がいいかどうか分からないからです。最低でも5年の実績がほしいところです。さらにリーマン・ショックなどの危機を経ていれば相場暴落の際にどの程度値下がりしたかも確認でき、自分のリスク許容度にあわせて選べる利点もあります。
運用期間が長くても純資産総額が少ない投信はお勧めしません。一般的に50億円程度を下回ると、投信によっては採算性の低さから繰り上げ償還される可能性が高くなります。国内外の株式や債券などに分散投資するバランス型なら100億円程度はないと分散の効果を得るのが難しいとみられます。(聞き手は藤井良憲)

[日本経済新聞朝刊2017年2月4日付]

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