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プログレ弦楽四重奏団モルゴーアが25周年

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キング・クリムゾンやピンク・フロイドのプログレッシブ・ロックを編曲して演奏する弦楽四重奏団「モルゴーア・クァルテット」が今年結成25周年を迎える。4人とも日本の主要オーケストラの中核を担う弦楽奏者たちで、もともとはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全15作品を弾くために集まった。3月にはプログレ作品の金字塔、エマーソン・レイク&パーマ-の「タルカス」を編曲したCDを出すなど、ロックとクラシックの両方を手掛ける活動について聞いた。

プログレッシブ・ロックを弦楽四重奏に編曲

「原子心母の危機」「21世紀の精神正常者たち」。見覚えのあるタイトルとジャケットデザインのモルゴーアのCD。プログレッシブ・ロックの名作に触発されたアルバムだ。もとのピンク・フロイドのアルバムは「原子心母」、イエスは「危機」。クリムゾンの原曲は「正常者たち」ではなく「異常者」。これらのバンドによるプログレッシブ・ロックは1960年代後半に英国で生まれ、70年代に世界を席巻した。クラシックの要素や先端の電子技術を取り入れた前衛・実験的な曲作り、難解で抽象的な詩によって、文学や美術、演劇の分野をも包摂する現代アート・ロックの世界を切り開いた。モルゴーアは「クリムゾン・キングの宮殿」やピンク・フロイドの「マネー」といったプログレの傑作を弦楽四重奏に編曲してCDに録音した。

そもそもモルゴーアは1992年秋の結成以来、ショスタコーヴィチやベートーベン、バルトークらの弦楽四重奏曲を主に演奏してきた。「結成の言い出しっぺは私」とビオラ担当でNHK交響楽団員でもある小野富士氏は語り始めた。「その頃の私はオペラにはまっていて、ショスタコーヴィチの歌劇『ムツェンスク郡のマクベス夫人』を見て、何とも言えない官能的な美しい音楽にみせられたのが、仲間に声をかけたきっかけ」と話す。

メンバーはビオラの小野氏のほか、第1バイオリンが日本センチュリー交響楽団首席客演コンサートマスター(元東京フィルハーモニー交響楽団ソロ・コンサートマスター)の荒井英治氏。第2バイオリンは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団コンサートマスターの戸澤哲夫氏。そしてチェロはNHK交響楽団首席チェロ奏者の藤森亮一氏だ。すでにショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全15作品を4回完奏した。バルトークの弦楽四重奏曲全6作品、ブラームスとシューマンの各全3作品も完奏し、ベートーベンについては全16作品のうちあと3曲を残すのみという。

定期演奏会は45回に達した。1月23日に東京文化会館小ホールで開かれた「第45回定期」では、ベートーベンの「弦楽四重奏曲第4番ハ短調作品18-4」のほか、フェリックス・ワインガルトナー(1883~1942年)とアレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー(1871~1942年)という共に世紀末ウィーン文化を担った2人のユダヤ系オーストリア人作曲家それぞれの「弦楽四重奏曲第3番」も演奏した。「変な曲ばかり演奏してすみませんね」と小野氏はリハーサルの際に筆者に冗談ぽく言ったが、「モルゴーアのファンはこういうめったに聴けない曲を期待する」と荒井氏は自信を示す。特にワインガルトナーの曲は、同時代のマーラーを嫌った作曲家といわれる割には、マーラーの「交響曲第3番」第1楽章のバイオリン独奏部に似た旋律が飛び出すなど、通好みの選曲ぶりがうかがわれた。映像はリハーサルでベートーベンの「弦楽四重奏曲第4番」を練習する彼らの様子を捉えている。

精緻な楽譜でロック独特のノリを再現

オーケストラ活動の合間を縫ってこれだけ様々な弦楽四重奏曲の演奏に心血を注いできた4人だが、2012年には突如、荒井氏がすべて編曲したプログレロックのCD「21世紀の精神正常者たち」をリリースし、ロックファンからも支持されて聴衆の層を広げた。14年にはやはり荒井氏の全曲アレンジでプログレ第2弾「原子心母の危機」を出した。そして今年3月には、エマーソン・レイク&パーマ-の「タルカス」を編曲したCDを出す。荒井氏は同バンドのキーボード奏者で16年3月に死去したキース・エマーソン氏と親交があった。「キース・エマーソンへの追悼の意も込めて、次のプログレCDはエマーソン・レイク&パーマ-の作品の編曲で勝負する」と荒井氏は話す。

「プログレをやる時はお客さんの反響が大きいので、1日2回公演している」と小野氏。6月28日の「結成25周年記念コンサート」(仮称)も、新作CDの中からエマーソン・レイク&パーマ-の「タルカス」「悪の経典」などを演奏するため、午後2時と7時の2公演を組む。「弦楽奏者たちがすごいロックをやると期待してロックファンが大勢来てくれる」と荒井氏は意気込む。

エマーソン・レイク&パーマ-の作品でも編曲は精緻を極める。「凝りすぎて、弾くのが難しい編曲になったから、メンバーに迷惑をかけている」と荒井氏は言う。ロックはコード(和音)進行を決めれば、詳細な楽譜を書かなくてもメンバーがアドリブで演奏を進められる場合が多い。ニール・ヤングやディープパープルなどのライブ盤には2、3のコードの繰り返しだけで延々と10分間ほども演奏を続けるような曲がある。「ロックが好きな人間だけで演奏するのなら簡単だけどつまらない。コードネームを伝えるだけで済むから。ロックを知らないメンバーにロックを弾かせるには、ちょっとした演奏の癖やズレ、独特のノリやリズム感まで音符にして書かなければならない。だから楽譜がすごく複雑になる」。荒井氏はここでルーマニアの作曲家ジョルジェ・エネスク(1881~1955年)の例を挙げる。「ルーマニアの民族音楽の素養がない人でも、楽譜通りに弾けば民族音楽になるように、エネスクはとても複雑な楽譜を書いた」。荒井氏はプログレの編曲にあたりエネスクの作曲姿勢を手本にしたようだ。

プログレとショスタコーヴィチをつなぐもの

それにしてもショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲にのめり込んでいた4人がなぜプログレロックとつながるのか。「ロックの基本は反体制」と荒井氏は言う。「でもその中でプログレはインテリ。ダイレクトな反体制ではない。ぶっ飛ばせ、ぶっつぶせ、というのとは少し距離を置いている。主張したい内容も抽象的な表現の詩に変えている。昨年ノーベル文学賞を取ったボブ・ディランや反戦フォークの人たちとは違う」

一方のショスタコーヴィチはどうか。やはり「表立って反戦、反体制という態度を見せない作曲家だった」と小野氏。面と向かって異議を唱えれば、スターリン独裁体制下の旧ソ連でとっくに粛清されていただろう。第2次世界大戦のレニングラード(現ロシアのサンクトペテルブルク)包囲戦のさなかにショスタコーヴィチは「交響曲第7番『レニングラード』」を作曲した。しかし「苦難のレニングラード市民のために書いた曲なのに、別の都市(臨時首都クイビシェフ、現ロシアのサマーラ)で初演されることになると、特に異議も唱えず認めてしまう。天才だけが持つそんなふわふわ感が彼を生き延びさせた」と小野氏は指摘する。権力に屈しない粘り強い知性としたたかな芸術の技の持ち主だったといえる。そしてプログレとショスタコーヴィチに共通する「ダイレクトではない表現」こそ荒井氏らが両者にひかれる理由のようだ。それだけ両者の音楽表現には一筋縄ではいかない深みと尽きない魅力があるということだ。

ショスタコーヴィチやベートーベンからプログレロックまで。客が入りそうもない珍しい曲も含め、やりたいことをやり続けて25年。「4人ともオーケストラの団員として生計を立ててきたからこそ、弦楽四重奏団の活動では思い切り自由にできた」(小野氏)。思い切りの良さがプログレで脚光を浴びることにつながった。オーケストラで培った高度な技巧とプログレ魂がクラシックとロックの壁を打ち破る。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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