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就職に悩む学生たちへ 必読「シューカツ小説」

2017/2/6

2018年春入社予定の新卒採用活動が解禁となる3月1日まであと1カ月を切った。多くの学生が準備に向けてまっしぐらかと思えば、適性検査「SPI」や面接の準備などの試験対策以上に「社会人」という新たな一歩に不安を隠さない学生も多い。彼らのなかには、就職活動を舞台にした小説の登場人物に自分の姿を重ね合わせて、一喜一憂する人もいる。難波功士氏の「『就活』の社会史」(祥伝社、2014年)によると、新卒一括採用が始まったのは大正初期のこと。それから100年あまりを経ても、古今東西、将来への不安は変わらない。彼らが思わず手に取ってしまった「シューカツ小説」や、「業界本」ではわからない、入社後のリアルな実態をえぐる作品を紹介する。

■悩める学生の支持を得る『何者』

「私たちはもう、たったひとり、自分だけで、自分の人生を見つめなきゃいけない。一緒に線路の先を見てくれる人はもう、いなくなったんだよ。」――。

朝井リョウ氏の『何者』は就活生に現実を突きつける

記者はこの3年ほど、就活中の学生を取材してきたが、彼ら・彼女らと話していると必ず話題にのぼるのが、1989年生まれの若手作家、朝井リョウ氏の『何者』(新潮社、2012年)だ。2013年、本作で作者は直木賞を受賞。16年には佐藤健さん、有村架純さんの主演で映画にもなった。就活対策のために集まるようになった5人の関係が、選考が進むなかで少しずつ変わっていく様子が生々しく描かれる。

冒頭の文章は、人材大手に内定した青山学院大学の4年生が「特に胸に突き刺さり、今でも思い出す」と教えてくれた部分だ。「もう先生も親も守ってくれないのだな」と、将来への不安を感じたという。「ページをめくることが怖かった」(出版社勤務・1年目)と当時を振り返る人もいた。

『何者』と同じく、学生たちに現実を突きつける小説として名前があがったのが、直木賞作家、三浦しをん氏のデビュー作『格闘する者に〇』(草思社、2000年)だ。

漫画が好きで、漫画喫茶に入り浸る女子大生可南子の「そろそろここを出ねばならぬ」という一文から物語は始まる。可南子は「好きな漫画雑誌の編集者になら」と就職活動を始めたものの、世間の荒波が思った以上に厳しく、連戦連敗を繰り返す。

「好きなことを仕事にしたい」(日本大3年)という就活生は多い。しかし、すぐに「現実は甘くないのだろうな」という言葉が続く。

■元人事担当者が描くシューカツ

人事担当者が書いた小説がある。『就活の神さま』(WAVE出版、2011年)は、リクルート(現リクルートホールディングス)を経て、バンダイ(現バンダイナムコホールディングス)の採用担当者だった千葉商科大専任講師の常見陽平氏による異色の1冊だ。「何の取りえもない三流大生・晃彦」が元カリスマ採用担当でバイト先のカフェのオーナーに相談しながら就活を乗り切っていく、という物語だ。就職氷河期のなか、常見氏は、東日本大震災が起きたその年に「自分の道を強く進みたい。それでも就活をなんとかしたいと願うフツーの学生をとことん応援したい」という強い思いから本著を執筆したという(「はじめに」より)。人材サービス業界きっての論客でもある常見氏ならではの「自己分析」「合説(合同説明会の略称)」など、「シューカツ」特有の用語説明などもまとまっている。

就活を舞台にした青春小説、といえば、石田衣良氏による『シューカツ!』(文芸春秋 、2008年)だ。マスコミ就職をめざす学生たちが、「シューカツプロジェクトチーム」というサークルを結成し、インターンシップや筆記試験に面接、と次々やってくるイベントに立ち向かっていく物語だ。

「先輩にすすめられた」というマスコミ志望の早稲田大3年の男子学生は、「中途半端な業界研究などより、できるだけリアルに近いイメージトレーニングをすべきだ」と教えられたという。「その意味でぴったりの本」と評価する。『シューカツ!』『就活の神さま』では、面接のフローやエントリーシートの書き方などがふんだんに描かれている。笑いあり、涙あり、まるで「エア就活」のような実践的な内容だ。

■「ガイギン」希望者はみんな読む!? 

就職に悩む学生たちは、小説の登場人物に自分の姿を重ね合わせることも

外資系の投資銀行やコンサルティング会社をめざす、「ハイスペックな」層がいる。学生団体「シェアプロジェクト」は、金融を学ぶという目的のもと、東京大学や早大、慶応義塾大学など高偏差値な学生たちが集まる団体だ。このメンバーたちから「みんな読んでいる」と紹介されたのが、『ウォールストリート投資銀行残酷日記 サルになれなかった僕たち』(主婦の友社、2001年)だ。

英高級紙フィナンシャル・タイムズが毎年発表する「グローバルMBAランキング」でもベスト5に入る米ハーバード・ビジネススクール、米ペンシルベニア大ウォートン校という有名ビジネススクールを卒業したエリート2人が、入社した投資銀行で体験した厳しさが生々しく描かれる。

ほかにも、国家公務員をめざす東大法学部4年の男子学生からは、「城山三郎の『官僚たちの夏』は読みました」という声をもらった。1975年に発売されたベストセラー小説だが、2009年にドラマになったこともあり、いまなお読み継がれているようだ。

■夢に向かう学生、心の支えになる1冊

就活のリアルを知ることや、業界研究だけが目的ではない。「将来の夢を描く時期だったからかな、とても響きました」(出版社勤務)と紹介してくれたのが、ブラジル人作家、パウロ・コエーリョ氏の『アルケミスト 夢を旅した少年』(角川書店、1997年)だ。羊飼いの少年が夢で見た宝物を探すため旅に出る、という童話風の物語で、日産自動車のカルロス・ゴーン社長が、社内外の若き幹部候補生に向けた講演会で紹介したこともある1冊だ。就活は学生に不安を与える一方、将来の自分の生き方を真剣に見つめる機会にもなる。ページをめくって「働き方」のヒントにしてはどうだろうか。

(松本千恵)

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