人気オーダーノートは受注制限も 個性派文房具店3選
カキモリ:受注制限するほど人気のオーダーノート
表紙60種類、中紙30種類のなかから、好きなもの選んでノートを作る―。東京・蔵前にある「カキモリ」を訪れる客の大半が利用するのが、オーダーノート作製サービスだ。選んだ用紙を専用のリング製本機でとじれば、世界に一つだけのノートが完成する。
カキモリは「『書く』ことに特化した店」と、同店を経営する広瀬琢磨氏は話す。祖父の代から続く文房具店を営む家庭で生まれ育ち、文房具関連の会社を経営するまでになったが、BtoB事業の厳しさを痛感。「文房具で価値のあることを行う」「専門性を生かす」ことを念頭に、カキモリを2010年にオープンした。
オリジナルノートのほかには万年筆のインクが使えるボールペン「カキモリのローラーボール」などが人気だ。「ネットではできないリアルな体験を提供したい」(広瀬氏)という考えから、商品のほとんどは手に取って試せる。
店内にはさまざまな種類の封筒や便箋を組み合わせて選べるコーナーや、壁一面に万年筆が展示されたコーナーなど、書くための道具が所狭しと並んでいる。週末にもなると多くの客が来店し、一時期はオーダーノートの受注制限を行うほどに。今後は都内の他の地域や海外での展開も考えている。
つくし文具店:店番は「日直制」、コミュニケーションの場に
東京のJR国立駅から徒歩20分ほどの住宅街にある「つくし文具店」も個性的な品ぞろえの文房具店だ。
つくし文具店が入る建物は、「もともとはノートや鉛筆を売っていた、中学校前にある『町の文房具店』」(店を運営する萩原修氏)で90年に一旦閉店。その後、文房具店の2代目である萩原氏が05年に店舗をリノベーションし、再オープンしたのが始まりだ。
店を運営する萩原氏が企画に関わった商品など、オリジナルのものが数多く並ぶ。一番人気のオリジナル商品は「つくしペンケース」。帆布を使ったペンケースで、品薄状態が続いている。「つくしえんぴつキャップ」も人気。
ユニークなのが、「日直制」の店番。「ブログで呼びかけたら想像以上に集まった」(萩原氏)というメンバーが、毎日交代で店に出勤する。日直同士の交流も盛んで、月1回集まり、デザインや文具のことなどを学んでいるという。この活動を始めてから5年で、「卒業生」は100人ほどに拡大。かつては中学生や近所の人が顔を出し、地域のコミュニケーションの場だった町の文房具店が、「アナログなSNS」のように人と人とを結ぶハブとして再び機能しているのは興味深い。
山田文具店:懐かしくて味のある文房具しか置かない
「懐かしい!」と感じる文房具を集めたセレクトショップもある。東京都三鷹市にある「山田文具店」には、店主の山田麻美氏が選んだ「懐かしくて味のある文房具」が並び、それらを目当てに遠方からやってくる客もいるようだ。
意外な人気が「外用薬」と書かれた薬袋や容器など、実際の現場でも使われている医療系グッズ。こうしたグッズや相撲キャラクターの文房具を集めて展示するなど、ディスプレーもユニーク。オリジナル商品はないが、棚に並ぶラインアップには、単なる懐かしさだけでない、独特のセンスや雰囲気があり、多くの客を引き付けている。
「自分が共感できる文房具しか使いたくない」。そうしたニーズに応えられる「個性派文房具店」は、今後も増えていきそうだ。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2017年3月号の記事を再構成]
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